第36回 美、ミスコン、MtF~続・ニューハーフ世界大会の舞台裏

まきむらよ。

毎週月曜、こちらの連載、世界のニュースから性を考える「ethica)。

★ 好きだからする努力、評価されたくてする努力

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まきむぅ:ちょっと、デリケートな質問になるんだけど……。ご自分のセクシュアリティを、あえて一言で言うならなんだと思っていらっしゃいますか?

さつきぽん:トランスジェンダー、かな。

まきむぅ:MtFね。けれどミスコンに出ると、「ニューハーフの大会」とか、もっと言えば「女装」「オカマ」とか、いろんな違う言葉で言われちゃうわけじゃない、そういう「違う言葉」で自分を説明されることへの違和感ってなかった?

さつきぽん:それはあまり気にしないようにしてるかな。私は私で、自分の好きな服を着て、好きなメイクをしてるだけだから

まきむぅ:なるほどね。言葉の上では確かに、自分の考え方一つよね。けれど、自分の考え方だけではままならないことっていうのも、どうしてもあるじゃない?

例えば……、自分が「MtF」じゃなくって、いわゆる「女」だったら必要なかっただろうなあ、って思うことはありますか?

さつきぽん:あー……。(少し間を置いて)一番は、やっぱり、性転換手術。

まきむぅ:うん、うん。まあ、自分が手術をしたいという意思はもちろん大事だけど、ただ単に「女性の外見で生きる」だけだったら、手術するような――たとえば性器や胸って、日常生活の上では第三者から見えないわけじゃない? 手術したことで、第三者から見え方って変わっただろうと思う?

さつきぽん:変わらない。

まきむぅ:変わらないんだ。

さつきぽん:それで悩んで自殺しちゃう友達、いっぱい見てきた。「手術までやったのに、周りが女として見てくれない!」って。

まきむぅ:まあ……。

さつきぽん:ホルモンは、(日常生活上の外見)変わるかもしれないね。

まきむぅ:お胸が出てきたりとか、お肌きれいになったりとかね。

さつきぽん:うん、でも、オペ(※性別適合手術の通称)はね、何も変わらないよ、見た目は。それでも、私はこの手術を受けて良かったと思えるし、それだけの価値があることだと思うけど。

そう、努力って言えば、声もやったかな。私の声、ちょっとハスキーかなって感じだけど、全然女性の声に聞こえるみたいなのね。

まきむぅ:そうねえ。それも、なんて言うんだっけ、“両声類って言うんだっけ?

(※両声類 [りょうせいるい]……動画共有サイト「ニコニコ動画」において、男性の声も女性の声も出せる人を指す用語。または、そのためのテクニックや、それを用いた歌唱をおさめた動画につけられるタグ)

さつきぽん:そうそう、そういう動画観たりとか。あとは、メラニー法っていう発声方法があるんだけど、それを学んだりとか。

なんていうんだろう……口で説明すると難しいね。無理して裏声出して、カン高い声でしゃべるとかじゃなくって、地声のベースを上げる、みたいなイメージのしゃべり方なんだけどね。

まきむぅ:独学で勉強なさったの?

さつきぽん:独学です。

★ いったい「美人」ってなんだろう

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まきむぅ:最後に、インタビューを読んでくださっている方へ、ミスインターナショナルクィーンへの出場経験を通して伝えたいことをお伺いできればと思います。

さつきぽん:まずね、整形手術にハマりすぎないようにねって。

まきむぅ:アンタ、自分が美人だから言うんじゃないの!?

さつきぽん:あのねえ、美人っていうのは、人に判断されるような次元とは別のとこにあるから

まきむぅ:はー。そういえば、ミス日本の時、「こころ美人」ってことを繰り返し言われたなあ。

他のミス日本候補生たちに対して、「みんなお金持ちで、家族に愛されて、地元にも応援されて、いいよねーうらやましいよねー。わたしなんか……」って思ってたのね。それに加えて特に当時は、「まわりはみんな普通の女の子、自分だけが人知れず悩む同性愛者……」みたいな想いでいたし。

そしたらミス日本事務局の先生がね、「『なんで自分だけこんな想いしなくちゃいけないの』という気持ちは顔に出る」とおっしゃったの。すごく、グサっと来た。美人とは何かって、改めて考えさせられた。

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……ということで、西原さつきさんへのインタビューをお送りしました。
☆ブログ「さつきの性別適合手術(SRS)体験談」

現代のミスコンは、外見だけで審査されるものではない。それは、見た目で人をランキングすること自体への批判はもとより、「美人は外見だけでは決まらない」ことに気づいた人が増えたからということもあるのではないでしょうか。

美についても、性についても、似たものがあります。生まれつきを嘆き、他人からの評価だけを気にして「○○すべき」に追われるより、もっと「○○したい」に目を向けてもいいんじゃないかしら? 「したい」と「すべき」の間、「外見」と「内面」の間で、バランス感覚を保てることこそ広い意味の“美”だと、さつきぽんとお話して感じました。

それでは、読んでくださってありがとうございました! また来週月曜日にね。まきむぅでした◎

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