第2回 『わたしはロランス』

映画ライターとしてはGWのようなときこそ映画館に行ってほしい(じゃないと、あたしらの食い扶持なくなる!)もんだけど、みんながお休みのときに働かないといけない人、やむをえず出かけられない人もいるわよね。そんな人は家でDVDを観てちょーだいな。

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そこでオススメしたいのは、ちょうどGW直前リリースが決定した昨年公開のフランス語映画『わたしはロランス』。今回のテーマはトランスセクシュアルでございます。まずはちょいとあらすじを。

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モントリオールに暮らす国語教師のロランスは、彼の30歳の誕生日に「僕は女になりたい。これまでの僕は偽りだった」と彼女のフレッドに告白。当然のことながら戸惑いを隠せないフレッドは、ロランスと言い争うものの、彼の最大の支持者でいよう一緒に生きる決意をする。

トランスセクシュアルがテーマとなる傑作では『トランスアメリカ』などありますが、これもまごうことなき大傑作として虹色映画のライブラリに入るでしょう。なぜなら、セクシュアルマイノリティのことだけを描いているわけではないから。

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この作品は、従来の「ゲイ映画」と違って、当事者の苦悩やトラウマを描いたものではないんです。トランスセクシュアル当事者であるロランスの視点だけでなく、ストレートである彼女のフレッドの視点も描かれていることで、いわゆる「ゲイ映画」と呼ばれるジャンルを一つステップアップさせているんですね。彼女がロランスからの告白を受けてもなお、彼の理解者でいようと決意したのは、彼を信じてきた大事な日々、彼と築いてきたものがこれで終わってしまうことを恐れたから。これこそザ・人間愛。無償の愛の入口じゃーありませんか。

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この映画の監督は、公開時なんと弱冠24歳のカナダ人(しかもイケメンさん。写真を参照)。はて、北米大陸カナダでフランス語?という人もいるかもしれません。カナダは劇中舞台になっているモントリオールのあるケベック州はフランス語が共用語になっていて、たいがいカナダ東部の人は英仏バイリンガル(有名どころではセリーヌ・ディオンもそうですね)。モントリオールは北米的な脳天気さとフランス的な優美さを兼ね備えておりまして(全員じゃないけど)、あたしの目からするとアメリカにもフランスにも偏らない、非常にバランスいい素敵な町でした。当然ゲイコミュニティもあり、周囲からそれほど強烈な偏見はないように見えたんですが……いや、あるんでしょうな。じゃなかったら、この映画で壮絶な差別偏見は描かれなかったはず。マジ根深い。

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フランス語ついでにもう一つ小ネタ。この作品はカンヌ国際映画祭の「ある視点部門」に出品されて多大な評価を得ましたが、フランス語映画だったことも評価された大きい理由の一つ。カンヌは英語よりも欧州語やアジア語で、アートなものが好まれる傾向にあるんですね。その点、フランス語でマイノリティの10年愛を描いたドラマで、なおかつ映像のセンスも抜群、とあれば、カンヌのうるさ方も「新鋭、久々にキタ!」となるのもムリはナシ。同じくカンヌから愛されるゲイ監督の先輩ガス・ヴァン・サントが彼に惚れこみ、本作のアメリカ公開のプロデュースを買って出た、ってのもいい話でしょ?

※4/17に発表された今年のカンヌ国際映画祭(5/14から開催)のコンペティション部門に、ドラン監督の最新作で、ある少年と彼の親権にまつわる人間ドラマ『MOMMY』が選出されました! これまでは「ある視点部門」での参加だったので、本丸への招待がついにされたということ。おめでたい!

<作品情報>
わたしはロランス
監督:グザヴィエ・ドラン
出演:メルヴィル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイ ほか
販売:角川書店 発売:アップリンク
4月25日発売 5,400円(特典ディスク同梱)

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