第19回 右手をつないで 優しくつないでまっすぐ前を見て

先日、おミセ出勤に向かう途中の新宿地下道で、
クマ系白人とリーマン系日本人のゲイカップルががっちり手をつないで歩いてるのをお見かけしました。

内心「あらステキ!」と思いつつ、ミセのオープン時刻をすでに過ぎていたので(日本国内でタイ時間を貫く)、
キャリアウーマンばりにカツカツ早足で追い越したアタシ。
一瞬、振り返ってエド・はるみさんばりに「グゥ~!」と
エールを送りそうになったのですが、おせっかいな上に、今そのネタはないわ、と思い直しました。やらなくて良かった‥。

それにしても、あの新宿駅と2丁目BYGSビルを結ぶ地下道。
昼夜問わず分かりやすいゲイの皆さんが往来しているのに、
割と長いオカマ人生の中でも、手をつないだゲイカップルというのはほとんど見かけた記憶がありません。

サッカーの本田くんが上半身裸になってる広告(GaGa Milano)を、
見過ぎてるオカマはウヨウヨいるのに!

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口開けて見ない! そういうダダ漏れは平気なご様子。

街を歩く男女カップルって、けっこうな確率で手をつないでますよね。

さすがに抱きしめ合うとか、チュウになってくると、
日本ではそれが視界に入るのはちょっと不快という方も多そうだし、
アタシのように不快には思わないけれど、
街中でおっぱじめちゃうカップル特有の陶酔度の高いドラマティック・フェイスをじっくり観察するという
意地悪行為の対象になったりもします。(やめい)

でも、カップルが手をつなぐというのは、
誰も咎めないどころか、周囲の人もつられてほっこりするもの。
昔からチャーミーグリーンさんも太鼓判を押してたじゃないですか。

なのに、
日本のほとんどのゲイカップルは手をつながない。

心底、もしもストレートカップルでも手はつながない性格だった、
という場合を除いては、手つなぎ行為にブレーキがかかっているのは確実です。
ゲイの脳内には「STOP!手つなぎ行為」と書かれた警視庁ポスターが貼ってあるのでしょうか。

これって、カミングアウトの対象の一つ、

「赤の他人へのカミングアウト」

をできる人が少ないってことですよね。

親や同僚ならともかく、赤の他人にバレて何が困るのか。
クソどうでもいい街の大衆に知られて何が困るのかー!(一体、赤の他人さんに何の恨みが‥)

まず一つの心配は
「もしかしたら知り合いが見てるかも」
って点でしょうか。

そして、もう一つは
「男女カップルと違って、必要以上の注目を浴びるから」
ってとこ?

どちらも分からなくもない理由。

てゆーか、アタシ自身が猛烈に「恥ずかしくて手なんかつなげない人」だったし。

前回書いた通り、アタシのスタート地点は、
「男同士でお茶してるだけでも、周囲が気になる」
という負の自意識過剰な状態でしたから、

15年くらい前に付き合いかけた人が、当たり前のように
デート中に手をつないでこようとした時は本当に驚きました。

彼は、出会って3回目くらいで、
手書きレター封入の、お気に入りのシングルCD(縦長ジャケ時代)をプレゼントしてくれるようなロマンティストさんでしたし、
全般的に、前述の「陶酔度の高いドラマティック行為」ができる方だったんですね。

当時のアタシは手をつなごうとされるたびに
「ギャーッ!」とギャグっぽく笑って逃げたものです。

その時からずっと、その事実が頭の片隅に残ってました。

彼がくれたシングルCDがなんだったのか、あまつさえ、彼の名前がなんだったのかまで、キレイさっぱり忘れてしまったアタシですが、
「街なかで何度も手をつなごうとした人」
ということは鮮烈に刻まれているのです(そ、それだけ‥)。

そして、2年半前に知り合ったネンゴロ兄貴が、
二度目の手つなぎ平気野郎でした。

15年前からたいして変化していなかったアタシは
新宿でも旅先でも、ガンガン手をつないでくる兄貴に、
毎度のように「イヤーッ!」と手を振り払ってました。

それでもあまりに繰り返してくれるので、そんな自分が冷たい気がして、
たまに、短時間だけ受け入れるようになりました。

で、ある日、その瞬間を見たおばちゃん同士がボソッと「なんでつないでるの?」と話しているのが聞こえたんです。

なんでつないでるの?

そうか、日本のおばちゃんにはまだ分からないのよね。

その時、すかさず笑顔で「デキてるからだよ~!」って言えれば良かった。

以後、時々アタシから手をつなぐようになり、兄貴から
「おっ。自分からつないじゃってどうしたの!」
なんて言われたりしてます。

ゲイカップルが自然に手をつなぐことを止めてるもの。

一つ目の、
「もしかしたら知り合いが見てるかも」
って心配に関しては、
大衆の中でそんな一瞬を目撃され(なおかつその人が嫌悪感を持つ)可能性より、
Twitterやmixiのゲイプロフ写真をネットでうっかり見られる可能性のほうがはるかに高い気がしますし、

二つ目の
「男女カップルと違って、必要以上の注目を浴びるから」
って心配は、
確かにそれっぽい反応をアタシ自身も受けましたが、
受けてみたらむしろファイティングスピリットが沸くような結果になりました。
意地悪観察、来るなら来いやゴラ~!

あ、そうそう。

ほぼノンケな女装好き彼氏とデキたサセコさんも、
彼氏が手をつないでこようとするので、恥ずかしくて拒否してるそうです。

一回り年下のほぼノンケくんが、メイクしてない四十オヤジ時のサセコさんと
街なかで当たり前のように手をつなごうとしてくれることに、
本来なら喜んでもいいと思うんですけどね。
いやホント、あの彼氏は素晴らしい変態よ。

きっと、サセコさんも、アタシも頭では分かっていたの。

周りの見知らぬ人の目なんかより、
好きな人が差し出してくれた手のほうが、
大事に決まってるのよ。

右手をつないで
優しくつないでまっすぐ前を見たら
どんな困難だってたいした事ナイって言える、かもよ?

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