第46回 「ヒゲの美女」がヨーロッパで一番の歌姫になるまで

 

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「劣化コピーでいるよりも、最高バージョンのあなたでいてね」
“Be the best version of yourself rather than a bad copy of someone else!”

なんかもう、美人だし、歌うまいし、やりたいことやってるし、いわゆる「勝ち組」でしょ? って思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

だけれど、見た目がどうこうとか勝ち負けがどうこうとかそういう人と人を比べてものをいうような話はおいといて、彼女には彼女が選んだ道なりの苦悩があり、物語がありました。

今日は、コンチータちゃんが今回の栄光をつかみ取るまでを、

★ 「トム・ノイビルト」の誕生
★ 「コンチータ・ヴルスト」への攻撃
★ フェニックスのように飛び立つ日

以上の流れでお届けします!

★ 「トム・ノイビルト」の誕生

こんな言い方をしたくはないけれど「やっぱり」、彼女は10代の時からいじめ被害を受けていました。

2013年末に、日本の民間団体「ホワイトリボン・キャンペーン」によって行われた「引用元PDFはこちらから

1988年、オーストラリアで「トム・ノイビルト」という男の子として生を受けた彼女。

自分自身のいじめ被害経験についてはあまり多くを語りませんが、彼女はWIWIBLOGGS.COM

そうして、「トム・ノイビルト」として生まれた少年は戦うために「コンチータ・ヴルスト」というヒゲの生えた女性を創り出したのだといいます。誰かを倒すためではなくて、なにか輝かしいもののための戦いを始めたのだ、と。

「ヴルスト」は彼女の母国語で「ソーセージ」を指します。

なんかソーセージ(性的な意味で)って思っちゃうけど、これ、実は彼女の母国語で「そんなの全部ソーセージだよ(=みんな同じことでしょ)」っていう言い回しがあることに由来するんですって。

どんな在り方だろうと、「そんなの全部ソーセージ!」。トムは2007年にオーストリアのオーディション番組へ出演。続いて2011年にコンチータ名義でテレビ初出演を果たし、以降着々と歌手としてのキャリアを重ねていきました。

努力を重ね、ついに2014年、ヨーロッパ全体が注目する「ユーロヴィジョン」へオーストリア代表として出場することが決まります。しかしそれを機に、華やかな舞台だからこその激しい攻撃が、彼女へと容赦なく浴びせられることになるのでした。

★ 「コンチータ・ヴルスト」への攻撃

「自然に反する」

「同性愛と精神の堕落のあけすけなプロパガンダ」

「男か女か分からないやつは、歌のコンテストではなく精神病院に行くべきだ」

引用元:PinkNews
※こちらのコメントはそれぞれ別の人物による発言がPinkNewsに紹介されたもので、PinkNewsの見解を示すものではありません

「正常じゃない」「子どもを守れ」などといった価値観を盾に、コンチータはまるで西ヨーロッパから東ヨーロッパへの価値観の押しつけの象徴であるかのように言われました。

いや、押しつけも何も、まさに東ヨーロッパにだって性のことでいじめを受けたり暴力をふるわれたりしている人々がいるんだから、よそのことみたいに言わないでくださいって感じなんですけどね(関連記事:「『おそロシア』じゃ済まない、ロシアの性的少数者たちの状況」

彼女を攻撃したのは、ロシアをはじめとした東ヨーロッパの国々だけではありません。

故郷オーストリアでも「こんなやつをうちの国の代表にするなんて」との批判が噴出、アンチのfacebookページは約40,000の「いいね!」を集める事態に。

また同性愛者コミュニティの間でも、「毛深い女装が公の場に出るなんて、隠れて悩んでいる当事者をおびえさせるじゃないか」「すべてのゲイがあんな恰好をするわけではない。またゲイに変なイメージがつく」などという批判がなされたといいます。

ユーロヴィジョンの司会者のひとりも、レインボーの衣装を着て出演しようとしたところ「政治的である」として止められたことを告白(Franz Gstättner / Wikimedia Commons

その姿は、「トム」として歌っていたころから、まさに一度燃え上って生まれ変わったかのように見えます。

そしてコンチータは、堂々と優勝。2位のオランダに52ポイントの差をつけてのことでした。

この夜を、平和で自由な未来を信じる、すべての人々に捧げます。This night is dedicated to everyone who believes in a future of peace and freedom.

ふつうじゃないとか、自然に反するとか、うちの国の伝統じゃないとか、きっとこれからもコンチータは言われ続けるのでしょう。

ゲイのステレオタイプを増長するとか、本当の弱者じゃないだとか、美人はいいよねとか、ちょっと変わったヒゲ女装だから売れたんでしょとか、きっとこれからもコンチータは言われ続けるのでしょう。

だけれど、「そんなの全部ソーセージ!」。結局みんな、ほかならぬ自分自身を生きている。ネガティブなことを言うのも自由なら、ポジティブなものをつかみ取るために戦い続けることもまた自由です。彼女は歌い続けます。さらなる輝きのために。

ということで、読んでくださってありがとうございました! また来週月曜日にね。まきむぅでした◎

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【東京】5/21 毎日新聞社「毎日メディアカフェ」
【福岡】5/31 西南学院大学にて映画「Call me Kuchu」上映会&トークイベント

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