第9回 アナ◎と雪の女王と、激動するロシアのゲイ事情。『スカートのしがらみの下で』

ディズニー映画『M性感とは「男性が受け身となり、女性にいやらしく責められるスタイルの業種」とのこと。男は寝てるだけで、や~らしいお姉さんがエッチなことをしてくれるわけだ。しかも、アナル責めも人気。アナル好きノンケ人口急増なのである。たしかに最近のノンケAVでは、男がアナルを責められるシーンが頻繁に登場するようになってきている。男優によっては、自分から「乳首を舐めろ」だの「アナルを舐めろ」だの注文をつけていたりする。攻める性から受ける性へ、ノンケ男のセックスの変化は確実に起きているのだね。これで、少なくともアナル絡みでホモが馬鹿にされることはなくなる(笑)。ふむ。良い傾向、良い傾向。

(以下、ネタバレあり)

 

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『アナと雪の女王』
ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ/ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオズ 制作、2013年、アメリカ映画
監督:クリス・バック、ジェニファー・リー、脚本:ジェニファー・リー、製作:ピーター・デル・ヴェッチョ、製作総指揮:ジョン・ラセター、歌曲:ロバート・ロペス、クリステン・アンダーソン=ロペス、音楽:クリストフ・ベック

遅ればせながら『アナと雪の女王』を観てきた。巷ではレズビアン映画だとか同性愛プロパガンダ映画だとさんざん騒がれていたので、「さぞかし!」と期待して出かけた……のだが、「あれ、この程度?」というのが正直な印象。たしかに、主題歌の『イルミナティ」「雪の女王』を下敷きに作られている。アンデルセンの原作に近い形でアニメ化された作品でもっとも有名なのは、1957年にソ連(現ロシア)で制作された『宮崎駿らに多大な影響を与えたとされ、主人公の少女ゲルダは、後の宮崎アニメの主人公ゴッホ今泉と話をしていて、こちらの方が『アナ雪』よりよほどレズビアン映画っぽいと意見が一致。女同士の助け合いによりストーリーが展開していく点、ゲルダと盗賊の娘とのエピソードなどは官能的な印象を受けさえする。オタク男に絶大な人気を誇る『雪の女王』だが、はたしてビアンの人はこの作品をどう観たのだろうか。不勉強のせいか、レズビアンの視点から評論したものを目にしたことがない。ご教示いただければ幸いである。

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『雪の女王(Снежная королева)』
ソユーズムリトフィルム 制作、1957年、ソ連映画
監督:レフ・アタマーノフ、脚本:L. アタマーノフ/G. グレーブネル/N. エールドマン、美術:A. ヴィノクーロフ/L. シュワルツマン、音楽:A. アイヴァジャン
(株式会社アイ・ヴィー・シー 発売、2800円)

というわけで、長~い長~い前置きはここまで(笑)。今週のホモ本は、アニメ『雪の女王』が作られた国、ソ連(現ロシア)の同性愛事情についての一冊。アドリアン・ガイゲス/タチヤーナ・スーヴォロワ共著『スカートのしがらみの下で』。

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これは、ソ連がロシア連邦へと劇的に変化する、その前夜、1989年に西ドイツで出版されたものの抄訳だ。日本での初版は1992年。帯文には「国家体制が崩壊しても、社会変革が進んでも、男女の性は変わらない! 民族が、宗教が、スターリニズム時代という歴史が、女たちを縛る! いま、語ることを許されたソ連人が、自分たちの性を語った! モスクワっ子によるロシア人の性レポート」とある。ランダムに選ばれた女性54人、男性58人、計112人に対して行ったアンケートと対談により、当時のソ連~ロシアにおける性意識がうかがえる。その中に「レズビアンとホモセクシャリスト(注/原文ママ)」の項がある。ホモセクシャリストって何だよ!?というツッコミはさておき、この本には、変化する政治状況の下、同性愛(者)がどのように扱われてきたかが簡潔に、そして生々しく紹介されている。そのアンケート回答の一部を紹介しよう。

●研究室助手(女・21歳)「同性愛者は銃殺されるべきです。だって、彼らは欠陥を持った人間なのですから」
●織工(女・26歳)「同性愛者は、気持ち悪い現象です。彼らを監禁するべきです」
●ジャーナリズム学部学生(男・27歳)「社会によって、同性愛者は撲滅されるべきです」
●運転手(男・22歳)「拷問にかけるべきです」

このアンケートに答えた人達は、現在、40代~50代。社会の、政治の中心となる層だ。「同性愛宣伝禁止法」を推進しようとしたと考える向きもある。ともあれ、時代は変わり、変化は確実に起こっている。そして、確かなのは、同性愛はいまや病気(医学)の問題でも、倫理の問題でもなく、政治の問題となったということだ。

著者はアンケート全体の回答から、こう続ける。

アンケート回答者の三分の一が同性愛を承認している。また、三分の一以上(学生では半数)が、社会的に同性愛を受け入れるべきだと答えている。もちろん、同性愛の問題に関してヒューマニズム的立場をとる人は多くない。しかし、そういう人たちが存在するということだけでも、私たちは希望をもつことができる。というのは、事実上、同性愛に関する情報を得ることのできないこの国でも、その考え方に到達できる人がいるということだからだ。

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アドリアン・ガイゲス/タチヤーナ・スーヴォロワ共著『スカートのしがらみの下で』(JICC出版局/1992年 発行/1800円)

人の心を改宗させるのは難しい。「銃殺すべき」と平然と答える人間が、法律が変わったからといってすぐに考え方まで変わるとは思えない。せめても、人前で「殺せ」と言わなくなるぐらいだ(だが、これが重要!)。しかし、より若い世代の学生の方がより肯定的であるというアンケート結果に着目すれば、世の中変えるにゃ、とっとと世代交代するのが一番だ。回答者の子供たちがそろそろ成人し、次世代の政治を担っていく頃になっている。彼らに期待したいと思う。そして、さらに彼らの子供たちが『アナ雪』を観て育っていってくれたら、そりゃ、夢が託せるでしょ!

……ってことで、年寄りの戯言はこれまで。アタシは、ディズニーがいつか、アナル好きの王子様がひたすら女王様を寝て待っているって映画を作らないか夢想して余生を過ごすことにするわ。主演は、アンジェリーナ・ジョリーで……って、こりゃ、ポルノだわな(笑)。まさか!? でも、歴史は変わる。どんな変化が起こるのかは、それこそ神のみぞ知る。だから、夢という名の、希望という名の“信仰”だけは決して捨てちゃいけないね。

 

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写真左/「the RING」 詳細は、http://www.angelshanghai.com/jp/で。

さて、今週末、5/31(土)は、お待ちかねの「the RING」! イケメンイカホモ大集合のイベントなんで、アタシ目当ての客なんていないだろうけど……(ひがみ)。アタシ、この日、上海のゲイ・パーティ「HEAVEN CIRCUIT」出演のためお休みです。ごめんなさい! アタシの代わりに、とびっきりのパフォーマーをキャスティングしておいたので、お楽しみに。んでは、行ってきまぁ~す!

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