第5回 『チョコレートドーナツ』ヒットの鍵は『キッズ・オールライト』

 

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映画興行界は今『アナと雪の女王』の一人勝ち……と思いきや、このコーナーの初回でも紹介した『チョコレートドーナツ』が地味にヒットを続けておりまして。シネスイッチ銀座1館でスタートしたものの、人が人を呼び、今や全国70館にまで広がったとか。

これについて某局番組でヒット分析をしてほしいといわれて答えたんですが、おそらくオンエアでは一言しか使わなかっただろう(観ていない。笑。)と思い、ちょい補足ね。

話はだいぶさかのぼります。『キッズ・オールライト』という映画はご存じかしら?

THE KIDS ARE ALL RIGHT

子供2人と共に幸せに暮らしていたレズビアンカップルの一家。家族四人仲むつまじく、見事なまでにいい家庭を築いていたんだけど、子供が遺伝子上の父親を知りたがるところから家庭には不穏な空気が……。というもの。

THE KIDS ARE ALL RIGHT

この映画が素晴らしかったのは、レズビアン&ゲイ・ペアレンツという概念が、特別なこととしてではなく、ごくごく一般的なこととして描かれたことね。この作品のおかげで、同性婚やドメスティック・パートナーシップのカップルが、子供を育てて幸せな家庭を築くことが、ストレートの家庭となんら変わりがないということを示すことができたんだと思うのね。(読者の皆さんは「そんなこと敢えて言われなくてもわかるっつの!」っていう人もいるかもしれないけど、ストレートの人はまだ理解不能っていう人が多い事実も忘れずに)

以前だったら、このテーマの作品を作るとなると、同性カップルは狂言回しとして登場するとか、子供がいじめられたりとか。そういったことをフォーカスしていたはず。ところが、これはその一歩先。たしかにまだまだこの映画ほど理解あるところばかりではないと思うけど、少なくとも多くの人が共感を抱くことができる映画になっただけでも進歩だと思ったもんよ。LGBTを描く映画の、次なるステップよ。(同様にエポックメイクだったのは英国男子映画の『Weekend』ね。そのさらに進歩形がアメリカHBOで放映されてるカストロ通りドラマ『LOOKING』)

長くなりましたが、『チョコレートドーナツ』のヒットの話に戻ります。じつにいいタイミングで日本公開になったからだと思うんですね。『キッズ〜』で描かれたことが普通のこととして受け止められるようになった2010年代に製作、公開されたこと。そして、昨年のアメリカやフランスであった同性婚認可の動きによって、じわじわと「同性カップルが普通の幸せを求めてなにが悪い?」という意識がアジアにも流れ始めた今年、『チョコレートドーナツ』が公開されたこと。そして、なによりこれらが家族映画というのも話題になった大きい理由の一つだと思うの。

じつはここ2〜3年、恋愛とかアクションとかよりも、「心の絆」を描く人間ドラマがヒットのカギを握ってるのね。おそらくは震災後の社会的な影響がからんでいるとは思うのだけど、家族であったり、親であったり兄弟だったり。切っても切れない絆を描く映画は、軒並み人が口コミで広げる傾向にあるの。『アナ〜』もそうだし、『チョコ〜』もそうなんだけど、全部が「絆の最小単位」である『家族』に寄り添った映画。『キッズ〜』ももちろんそういう映画。だからこそ、今、再度見直してみると、全然見え方が変わるような気がするわ。

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ちなみに『チョコレートドーナツ』は、ヒットを記念して、監督とマルコ役のアイザック・レイヴァくんがご挨拶のために来日。海外でのヒットを聞いた監督、キャストがお礼に来るなんて、これまた異例だわ〜。

kids_sell

<作品情報>
キッズ・オールライト
監督:リサ・チョロデンコ
出演:アネット・ベニング、ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、ミア・ワシコウスカ、ジョシュ・ハッチャーソン ほか
販売・発売:アミューズソフト DVD 3,800円
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POSTER-B Ver.6W

<作品情報>
チョコレート・ドーナツ
監督:トラビス・ファイン
出演:アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイバ、フランシス・フィッシャー、グレッグ・ヘンリー ほか
配給:ビターズ・エンド
公開:現在、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー中
(C)2012 FAMLEEFILM, LLC

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