第63回 『なかったことにしたくない』制作秘話

 

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ひろこ:小雪ちゃん、この写真なつかしくない?

こゆき:わぁ、ほんとだ。これ、去年の夏に軽井沢で本の構成や章立てを考えていたときのだね。

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ひろこ:先月発売になった小雪ちゃんの新刊『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』(講談社)の制作初期の一枚。おかげさまでテレビや雑誌にも大きく取り上げられていますね。今回は小雪ちゃんに、新刊の反響や現在の心境などを聞いてみたいと思います。まずは、読書の方からの反響は?

こゆき:メールやTwitterなどで毎日たくさんの感想をいただいています。その中には「私も小雪さんと似たような経験がある」という方からのメッセージも多いです。

ひろこ実父からの性虐待の被害を、実名で顔を出して公表するのは日本では初めてのこと。小雪ちゃんが出版を決心してから私もずっとそばで見てきたけれど、実際にやってみて今、どうですか?

こゆき:正直、誹謗中傷を目にすることも増えました。これはテレビに出演したこととも関係があるとは思うのだけど。サバイバーの人が被害を語り始めたときに、更なる社会的/心理的ダメージを受けることを「セカンドレイプ」って言うのね。謂れのない誹謗中傷ももちろんなんだけど、性暴力被害に遭った人を傷つけるセカンドレイプは許されないことです。ただ、私が「セカンドレイプは許されない」と言っても、「殺してはいけない」と言うのと同じことで、どうすることもできない。無力感に苛まれることもあります。それでも、そういった現状があることを知ってもらって、被害当事者だけでなく、まわりの人たちに「許さない!」という空気を作ってもらうことはできるのかなと思っています。まずはここから、一緒に考えてほしい。

あ、でも私は一緒に会社をやっているひろこさんと岩本さんにしっかりと支えていただいているので、大丈夫です。私はとても元気にしています!

ひろこ:宝塚についても、これまで世の中に出ていたものとは違った視点で書いたよね?

こゆき『刑事司法とジェンダー』という本の著者の牧野雅子さんに、「彼女自身がタカラヅカ時代の「指導」を「暴力」と読み直し、自分の加害行為として引き受けるところ」に引き込まれたと、宝塚での被害と加害をしっかり見つめたことを評価していただいて、とても嬉しく思っています。それは本当に私がやりたかったことだから。ただ「暴露」するというようなことではなく、自分の体験を通して、人間誰もが持つ暴力性について考え、伝えたかった。

ひろこ:うまく名前が付けられない体験は、これは暴力である、被害であると、被害者が自分で定義できないというところが、こういった精神的暴力の難しさでもあるよね。

こゆき:そうなんです。以前、バレーボールの元プロ選手の方から、「宝塚の寮で起こっていることと、バレーボールの寮で似た体験をしたけれど、今その寮はなくなり、後輩たちはのびのびと実力を伸ばしている」と伺いました。このお話に私、とっても驚いたの。伝統あるスポーツの世界でも変化が起こっているんだって! 舞台が素晴らしいことと、暴力を容認し続けることは全く別のことだから、ぜひ宝塚にも変わって欲しいと願います。

ひろこ:小雪ちゃんの本がそのきっかけになったらいいね。

こゆき:いやいやいやいや。メディアの方から「スポンサーの関係で宝塚の部分についてはインタビューできません」とはっきり言われることもあって、私自身メディアとの関わり方を見直さなければならないと思っているの。発信する側としても、情報の受け手としてもね。このあたりは本当に難しいですね…。

ひろこ:お母さんについては、今どんなことを思ってる?

こゆき:完成した本を送りましたが、何の連絡もありません。読んでくれたのかな…?『なかったことにしたくない』というタイトルにしたのも、「否認」がこの本の重要なテーマだから。すさまじい暴力の前で人は「否認」してしまう…。だから私はまだ「許す」ことに向き合い続けています。「共生することとは、共に許すこと」。これは私にとって一番大切な言葉です。でも、実践できているとはまだまだ到底思えない。時間がかかることかなと思っています。

ひろこ:そうだね。時間が解決の助けになってくれることも、もしかしたらあるかもしれない。今は一歩ずつ、前に進んでいくことが大切なんじゃないかなぁと思うよ。

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★おまけ★
先月はテレビ出演が続きました。さて、このゆるキャラはどこの局のでしょう?(答えは、、ぐぐってください笑)

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