第18回 ホモ幽霊にヤラれるよりも、怖い話。 朝倉三心『恐怖体験 私は性霊に犯された!!

いやぁ、まったく。テレビってやつは度し難い。テレビに関わる人間には碌な奴がいない。馬鹿ばっかである。アタシは、テレビが大嫌いなのである。←偏見に充ち満ちている。昨今のオネエブームで友人知人達がタレント化してテレビを賑わせているが、よくもまぁ、頭が悪くて品のないテレビの連中とうまく渡り合っているものだと感心する。←偏見以外、なにものでもない(笑)。

先頃も、こんなことがあった。某T◎Sという局の、某番組から出演依頼が来た。某女芸人の番組らしいのだが、怖い話の出来るオネェやゲイを探しているという。僕が「オカマルト」という屋号でオカマとオカルト関連の古本屋をやっているのを聞きかじり、たどり着いたようだ。メールで送られてきた企画趣旨を読めば、「オネェの方は霊感が強いのではといったイメージから企画に至りました」とある。そこで霊感のある(と言われている)オネェを、わざわざリサーチ会社を使って探しているのだという。ご苦労なこった。僕のところにまで来るようだから出演者探しに苦戦しているらしく、「霊的な”怖い”話でも現実のリアルな”怖い話”(隣人が殺人犯だったなど)」でもどちらでもかまわない……って、それじゃ、企画が変わっちゃうじゃん(笑)。

この段階で、僕のアラームが鳴りっぱなし。こりゃ、怖いな。そもそも番組の作り方が「?」なのである。企画を立てるときに、思いつきは大切だ。「オネェの方は霊感が強い」でもなんでも、発想は広い方が良い。オネェが集まって怖い話で盛り上がってキャ〜キャ〜騒ぐのは、そりゃ、テレビ的に面白いだろうし。ここまでは、いい。なんの問題もない。

だからといって、いきなりリサーチ会社を使って自分たちの「思いつき」に当てはまる人材を探すというのは、いかがなものか。それじゃ、結論ありき、じゃないか。そりゃ、オネェも沢山いるわけだから、その中には霊感の強い人もいるだろう。優秀なリサーチ会社がそれを探し出し、トントン拍子に番組が出来上がってしまったらどうなるか? オネェの方は霊感が強いのでは → 霊感オネェ登場 → ホラ、やっぱりオネェは霊感が強い!的な流れになるんだろうなぁ。でも、それって、偏見を生み出してないか?

ま、たかだか深夜枠のバラエティ番組だし、霊感があったって困りはしない。そんなに目くじら立てることもあるまい……とも思うのだが。しかし、部分をとらまえて、それが全体であるかのように見せてしまう。そこがメディアの怖いところだ。たとえば、なにかゲイ絡みの事件が起こったとする。とある番組が、ゲイって犯罪者が多いのでは →(リサーチ会社を使って犯罪歴のあるゲイを探し出す)犯罪者ゲイ登場 → やっぱり、ゲイは犯罪者が多い!って結論に結びつけることだって可能なのだ。これは、まさしく偏見を生み出していることになる。

だとしたら「思いつき」の次にするべきことは、検証である。それをしない製作者は信じられない。「オネェの方は霊感が強い」かどうかなんて、製作者のまわりにオネェ当事者がいればすぐに分かることだろう。答えは(ノンケと同じように)霊感のある人もない人もいる、だ。それじゃあ企画が成り立たなくなるだろ、って、そんなのは僕には関係がない。それが事実だからだ。そもそもこの製作者たちは、視聴者の中にオネェが存在しているということにも気がまわっていないようだ。彼らにとってオネェとは、怖い話に出てくるような非日常存在で、怪談話で語られるような対象物でしかない。僕ぐらいの古狸になると、企画書の文面からそうした臭いを嗅ぎ取れてしまうものなのだ。上記のような内容をやんわりと婉曲表現で伝えて、慎んでご辞退申し上げた。結局、いちばん怖い話は、こうして偏見が作りだされるという事だったわけだ(笑)。

とはいえ、ホモ界隈にも霊的な怖い話も現実のリアルな怖い話も、たくさんある。たとえば、二丁目の真ん中にある「中岡俊哉の『世界の怪奇スリラー全集(5)世界の怪奇スリラー』には、この寺に奉ってある投げ込み寺”の「成覚寺」もある。そのせいか、二丁目には幽霊話や心霊話がゴロゴロしているのである。今はもう無くなったが、男同士が利用できたラブホテルの部屋に飾られた鎧兜がひとりでに動くという話も聞いたことがある。残念なことに、ラブホテルに行くような経験が無かったので、見たことはないのだが(笑)。

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中岡俊哉『世界の怪奇スリラー全集(5)世界の怪奇スリラー』(秋田書店/1968年 発行)

現実のリアルな怖い話も、ゴロゴロ転がっているのが二丁目だ。今よりも規制がゆるやかだった時代。合ドラもゴロゴロ転がっていた。ハッテンバで寝ていたら、気がつかないうちに肛門からGHBやら強力なドラッグを入れられて、意識不明の内にバコバコにやられた挙げ句、HIVに感染したという話もある。ドラッグ絡みでいえば、友人の一人に、ヤ◎ザ系の人に拉致られ監禁されそうになった人物がいる。彼が連れてこられた部屋には、先客である少年がシャブ漬けにされて全裸で転がされていたという。ちょっとしたエロ小説のようだが、 事実は小説より奇なり、である。また、ロリショタの生写真(もちろん、全裸)を二丁目に売りに来ていた人が、なんと知的障害児養護施設の職員だったという話。どうりで写真の少年モデルには事欠かないはずである。長く生きているといろんな見聞をするものだ。これすべて事実である。どうだ! こんな怖い話、テレビじゃ、絶体に出来ないだろう!!

 

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さて、またまた前置きが長くなったが、今週のホモ本は、朝倉三心著『恐怖体験 私は性霊に犯された!!』。タイトルそのままの心霊体験を集めた本である。この中に、珍しく、男の性霊に犯されたという男性の話が紹介されている。

自動車修理工から身を立て、中古車販売会社の社長となった茂野行雄は、業者から敬遠される事故車を安く買い入れ、修理して販売することに目をつける。利潤も大きく、売り上げも上々であった。会社の業績は伸び、彼は事業家として成功したかに思われたのだが……。それから二年。その頃から、彼を不幸が見舞った。妻がノイローゼになり、中学生の娘は謎の発熱に苦しめられるようになったのである。病状がますます悪化していく中、祈祷師から事故車に取り憑いた死者の怨念が原因だと諭され、供養のために霊場めぐりをすることを勧められる。彼は、四国遍路の旅に出た。その旅中の宿の出来事である。

 山間の秋の夜は底冷えがした。四、五時間眠っただろうか。茂野はトイレに行きたくなって目を覚ました。(略)部屋に戻ると、身体が冷えたせいか、今度はなかなか眠れなかった。目を覚ましたまま、一時間ほど布団にくるまっていると、廊下のほうから足音が聞こえてきた。

(略)

侵入者は、仰向けに寝ている茂野の足元にまわっていた。
突然、かけ布団の上に軽い重さが感じられた。
「猫じゃあるまいし、何やってんだ」

(略)

と、そのとき、足元の布団がいっきに持ち上げられ、そこから侵入者が素早く入ってきた。

(略)

やがて、手が胸から下へ下へと下りてくる。そうして股間をとらえた手は、恐怖で縮み上がっている茂野のいちもつをまさぐり始めた。
肉づきがよく軟らかいが、なぜか冷たいてのひらが袋を揉み、竿をしごいた。手は男のものに違いなかった。まだ小さいままの茂野の先端を二本の指で摘むと、微妙な力で刺激を加えてきた。しだいに茂野のものは充血し始めた。手は器用に動き続け、茂野は股間をパンパンにふくれ上がらせていた。
不覚にも茂野は発射しそうになった。
すると手の動きは止まり、今度はパンツを脱がしにかかった。すぐに尻はまる出しの状態になり、そこに硬いものが当たる。

(略)

「うぐっ」
硬いものはさらに深く肛門に突き刺さった。
必死で痛みに耐えていると、ふたたび手が彼のペニスをつかんできた。心地よい刺激に彼はかんたんに果ててしまった。しかも、いつもならタラリと流れ出るだけの精液が、まるで二十代のときのように、ピュッと勢いよく飛び出したのである。
発射したあとも、茂野のペニスは萎えなかった。てのひらに包まれたまま、ピクンピクンと脈打っていた。
ところが、ペニスから手が離れたとたん、茂野の背後にいた相手は、彼の身体をするりと乗り越えていた。相手の身体は茂野の目前で背を向けていた。
「それは、かんべんしてくれ!」
茂野は思わず叫んでいた。ふたたびペニスにからみついた手は、それを自分の尻にあてがい、無理矢理押し込もうとしている。
「いやだ、いやだ、死んでもいやだ」
茂野はまるで幼児のように首を振って抵抗した。しかし、しだいに身体は密着度を増し、茂野のペニスは相手の尻の穴のなかにスッポリ埋まってしまった。
(『第1章 亡霊の甘い誘惑 FILE No.4 僧の霊が宿る宿泊所』より)

翌日、次にお参りした寺の住職に、茂野は昨夜の出来事を話した。その住職いわく、「男色の業を取り払おうとして仏門に入り、霊場をめぐったものの、あまりに因縁深く、結局業を取り払うことができず、この地で命を絶った僧の霊」であると。う〜む。男色の業を取り払おうとして仏門に入ったのは、逆効果じゃないか。しかも、日本の男色の始祖と謂われる雨月物語』にも登場する。全9編の怪異譚が収められている内の、2編がホモ絡みである。ひとつは、『巻之五 青頭巾』。寵愛した寺童が死んで、悲しみのためその子の屍体をむさぼり喰い、鬼となった僧侶の話だ。そして、もうひとつが『巻之一 菊花の約』である。

義兄弟の契りを結んだ念者の宗右衛門が青木正次氏によれば、学問しかしてこなかった左門が、念者への信義という理念だけを拠り所に仇討ちという行動に出ることの危うさや、イデオロギーに殉ずる愚かしさを指摘している。そこが面白い。

僕も、せっかくの出演依頼に、やれ偏見を助長するだの、オネェ差別に繋がるだの難癖をつけ糾弾してしまったのも、イデオロギーゆえだ。挙げ句に、テレビに関わる人間は碌でもないとか、頭悪いとか、品がないとか、言いたい放題(笑)。理念が過ぎれば、それがたやすく相手への偏見となってしまうのだ。本当に怖いのは、このことではなかろうか。もっと寛容にならねばいけないな。いい歳なんだから……そのことを身をもって思い知ったのであった。

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写真左/青木正次 全訳注『雨月物語(上)』(講談社学芸文庫/1981年 発行/ISBN 4-06-158487-1)
写真右/青木正次 全訳注『雨月物語(下)』(講談社学芸文庫/1981年 発行/ISBN 4-06-158488-X)

 

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「第1回 全日本アナル選手権」2014年9月7日(日)14時〜、新宿・シアターPOOにて開催。詳細は、松沢呉一氏をして「アナルマニアは負けず嫌い」という名言を言わしめた伝説のイベントである。僕は、1997年の第2回より審査委員を務めてきたが、主催の『三代目葵マリー氏の尽力により、名称もあらたに「第1回 全日本アナル選手権(第1回となっているが、実質的には第4回目となる)」として甦ったのだ! 日本中から集まったアナル自慢の猛者達が、規定競技と自由競技とで競い合う。今回から女子部門や女王様部門も併設されたという。ますます過激さを増す「アナル選手権」だが、今回も審査委員の大役を仰せつかった。今から楽しみである。参加者も観覧者も募集中とのこと。来たれ!アナラー!!

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