第21回 僕のドラァグクイーンとしてのルーツ。平幹二郎/辻村ジュサブロー/高橋睦郎『王女メディア』

この歳になると、なんでまたこんなことになっちまったのだろう?と、自分の人生を振り返ることがある。生まれてからの半分以上の人生を、蜷川幸雄がギリシア悲劇平幹二郎花園神社の境内にしつらえた野外劇場での再演の様子がYouTubeにアップされていた。


夫の裏切りを知り、苦しむメディア。


殺した我が子の首を抱え、メディアが竜車に乗って飛び去っていく。

遙か悠久の古典劇を現代人にも通じる情念の物語としてよみがえらせるために、蜷川は、毒をもって毒を制した。人間の心の不条理を描き出すために、不条理な演出をてんこ盛りにしてみせたのだ。まずは、女を男が演じるという不条理である。平幹二郎の見事な女形ぶりである。そして、その平の衣裳を手がけたのが、『新八犬伝』で、彼の人形をきっと見たことがあるはずだ。この作品で一躍有名となり、以後、創作人形のみならず舞台や映画の衣裳、アートディレクションなど多方面で活躍することになる。人形作品をまとめた作品集は数多く出版されているが、今回紹介するのは、彼が手がけた舞台や映画の衣裳にフォーカスした写真集『ジュサブロー』である。

これがまた素晴らしい! 彼が衣裳を手がけた舞台写真と、平幹二郎はじめ、蜷川幸雄、高橋睦郎である。彼の手による修辞は、人名、地名など固有名詞を普通名詞に置き換えたことで、「神話時代のギリシャという特定時代・特定地域の神話が、時代を超え地域を越えたいつでもどこでも起こりうるドラマに変身」(『王女メディア』公演パンフレットより)したのである。平幹二郎が男の声そのままで呪詛にも似た女の嘆きを語るとき、時空を超えた情念の世界が立ち現れてくるのであった。

僕はのちに、高橋睦郎が同性愛を主題とした詩で有名となった詩人であることを知る。おお! やはり、僕の嗅覚は正しかった。ホモの糸車にたぐり寄せられるように、僕はこの作品と出会うべくして出会ったのであった!! 平、辻村、高橋。なんという配役の妙だろう。プロデューサーは天才か、はたまた大ホモにちがいない(笑)。

この作品に出会ってからというもの、僕の人生はホモまっしぐらだった。二丁目デビューもし、初体験も済ませた。そして、二十歳で初女装! あれから幾年月。いまや最古参のドラァグクイーンという不名誉な称号もいただいている。そんな僕だが、因果は巡る糸車、か。蜷川幸雄の娘であり、写真家のホモ雑誌を作ったり、ホモ本を集めたりしながら生きてきた。いまになって思う。なんでまたこんなことになっちまったのだろう?と。せめても僕の魂のほとばしりが、次の世代の同性愛者に何かを手渡す役目をはたせるなら、偉大な先人たちにはおよばないまでも、生きてきたかいもあったというものだ。

 

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蜷川実花写真展「TOKYO INNOCENCE」
トーキョーの今を、数年にわたり撮りためてきた、蜷川実花の作品をお楽しみいただける3週間。従来アンダーグラウンドであったサブカルチャーが、アートやファッション、アイドルシーンと結びつき、新たな輝きとパワーを放ちます。
日程/8月20日(水)~9月9日(火) ※催し最終日は午後6時終了、会場/大阪・阪急うめだ本店9階の祝祭広場、観覧無料。
詳細は、https://twitter.com/doopuglyで。

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