第12回 エイズとの戦い×意識改革がテーマ『ダラス・バイヤーズクラブ』

今年のアカデミー賞で主演男優賞と助演男優賞をゲットした『ダラス・バイヤーズクラブ』がはやくもソフト化されましたよ〜。これねー、日本では公開規模がビミョーに小さかったので、見逃した方も多いのではなかろうかと。アクションとか視覚効果的なものはほとんどないので、テレビサイズでもぜひご覧いただきたいの〜。

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視覚効果がない、といいましたが、それは主人公を演じたマシュー・マコノヒーの容姿もそう。役作りのために21キロも減量したというのは有名な話。そしてそれがオスカーを獲得した決めてにもなったとも(アカデミー賞の俳優賞で有力視されるのは、役作りで身体的に無茶した&実在の人物)。役作りとはいえ、21キロは……やせたい願望の方々〜、見習いましょう(21キロはやりすぎですのでご注意)。

もうこの作品ご存じの方も多いと思うので、ストーリーは割愛しますが、公開時によく話題にされていたのは「エイズとの戦い」というテーマ。ん〜、たしかにそれはごもっとも。だけど、この作品をそれだけのテーマで切ってしまってはもったいないと思ったのが、あたくしでございます。

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なぜなら、この作品でもっとも感動的なのは、西部生まれ育ちの超保守的&脳までマッチョな男が、HIVとの戦いで得たものがどれほど大きかったか、ということだと思うんですよ。

だってね。HIV/エイズとの戦いの映画ってのは、これまでもさんざんあったんで。HIVとゲイに対する偏見に立ち向かった『フィラデルフィア』とか、エイズ・パニックそのもののノンフィクションを映画化した『運命の瞬間(とき)/そしてエイズは蔓延した』とか、そのパニック時を生きるゲイの姿を描いた『ロングタイム・コンパニオン』とか、実際にHIVキャリアとなった経験を自作自演した『野生の夜に』とか。エイズパニックが起きた80年代を経て90年代からは定期的にHIV/エイズに向き合った作品は作られてきてるんですね。ぶっちゃけそこにだけ焦点を当てるってのは、もう古いし前時代的。だから、『ダラス〜』をこのテーマだけできってしまったら、むしろ恥ずかしいことと思った方がよろしい。だけど、残念ながら日本公開時にはそのような紹介が目立ったのは事実で、日本のメディアの理解の薄さが露呈したといってもいいでしょう。

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では何が素晴らしいか、というと、差別意識丸出し男が、理由はどうあれ自分の価値観を変えていったことにあると思うのよ。自分の命をのばすために、わらをもすがる気持ちで未認可薬に手を出し、それが効果を出したことで、彼はまず大手製薬会社へ疑問を持つんですね。それだけでもけっこうな意識改革。そして、「いいもんだったら売れるかも」と思って、薬品を仕入れてシンジケート化したことをきっかけに、彼はそれまで忌み嫌っていたゲイの人たちといやがおうにもつきあわないといけなくなることが、彼の価値観を根本から変えていくの。もちろん最初は猛反発。だけど、彼のサポートをしながら、自らも闘病していたレイヨンとの出会いと交流のおかげで、まるで別人になるかのごとき変化が。

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この変化は実在の彼よりも劇的に描かれています(映画ですものね)。が、それはとりもなおさず、ここ近年明らかに激変しつつあるストレート社会からみたLGBTQへの対応にかぶっているよう。HIV/エイズとの戦いを描く映画の目的意識は、この映画のようにもっと複合的な意味合いを持つようになったと言えるんじゃないかしら。そうやってこの作品を観てもらえると、HIVやセクシュアリティに対して偏見を持つ方々の意識も、ちょっと変わってくると思うんだけどな〜〜……(まだまだ日本は足りてない!)。

 

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<作品情報>
ダラス・バイヤーズクラブ
監督:ジャン=マルク・バレ
出演:マシュー・マコノヒー、ジャレッド・レト、ジェニファー・ガーナー ほか
販売:ハピネット 発売:ファントム・フィルム
Blu-ray 4800円 DVD 3800円 発売中
(C) 2013 Dallas Buyers Club, LLC.

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