第64回 自称“声優のアイコ”神いっき被告初公判、各社報道読み比べ

 

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まきむらよ。

毎週月曜、こちらの連載「まきむぅの虹色ニュースサテライト」をお送りしております。

前回記事「『レズビアン いじめ』10ヶ国語の検索結果が日本だけ浮いてる」ですが、1500を超えるツイートと270を超えるfacebookいいね!を頂きました。ありがとうございます。

おかげさまで前回記事公開後、「レズビアン いじめ」での検索結果が、以下のように改善された模様です。

・アダルト以外の検索結果が、トップ10件中1件 → 4件に改善
・検索ワード「レズビアン」がGoogle日本でのセーフサーチにひっかからなくなった

ほんとにおかげさまのことよ。いつもありがとうございます!

さて、今週のテーマは自称“声優のアイコ”神いっき被告初公判、各社報道読み比べです。

連続昏睡強盗の罪に問われている、自称“声優のアイコ”こと神いっき被告。
本件のように、性のあり方が社会通念上「普通」でないということにされている人、いわゆるセクシュアルマイノリティが被告として裁判にかけられた場合、現代日本ではどういう報じ方をされるのでしょうか。

★ 神いっき被告初公判、各社報道読み比べ
★ だいぶマシ、すこしゲス―理解あるメディアは増えている
★ 傷つけられた時に、怒れなくてもいい―ゲスい記事を目にしてしまった時の心のケア

以上の流れで見ていきましょう。

★ 神いっき被告初公判、各社報道読み比べ
まず、神いっき被告の初公判を報じるニュースについて、各メディアが被告のことをどう表現しているか10社ぶん読み比べてみましょう。

※以下、媒体名をクリックすると引用元の記事に飛びます。アンダーライン強調は全て筆者によるもの、引用は全て2014年9月18日閲覧の記事からです。掲載元の都合により掲載終了する場合もあります。

【被告の性別について特に触れず、性中立的に書かれた記事―2社】
デイリースポーツ
「声優のアイコ」などと名乗る人物による連続強盗事件に絡み、昏睡(こんすい)強盗罪に問われた無職神いっき被告(30)は10日、東京地裁の初公判で「身に覚えはない」と起訴内容を否認、無罪を主張した。

※上記2社は検察側が「被告は戸籍上女性」とした冒頭陳述を紹介していますが、あくまで陳述の引用であり、引用以外の部分ではあえて被告の性別について触れていないと判断しました

【犯行時の“声優のアイコ”を名乗る人物が女性であった、としている記事―5社】
朝日新聞デジタル
東京都内で相次いだ「声優のアイコ」を名乗る女による昏睡(こんすい)強盗事件で、男性を睡眠薬で眠らせて現金などを奪ったとして、昏睡(こんすい)強盗の罪に問われた住所不定の無職、神いっき被告(30)の初公判が10日、東京地裁であった。

読売新聞(YOMIURI ONLINE)
「声優のアイコ」を名乗る女が男性に睡眠薬入りの酒を飲ませて金品を奪った事件で、昏睡こんすい強盗罪に問われた無職神じんいっき被告(30)の初公判が10日、東京地裁(石川貴司裁判官)であり、神被告は「身に覚えはありません」と無罪を主張した。

テレビ朝日
「声優のアイコ」を名乗ったとされる女は「僕には身に覚えがありません」と起訴内容を否認しました。

スポニチAnnex
「声優のアイコ」などと名乗る人物による連続強盗事件に絡み、男性に睡眠薬を飲ませて金品を盗んだとして昏睡(こんすい)強盗罪に問われた無職神(じん)いっき被告(30)の初公判が10日、東京地裁であり、神被告は「僕には身に覚えはありません」と起訴内容を否認し、無罪を主張した。戸籍上は女性にもかかわらず普段は表向き、男性として生活していたが、法廷にはチャラい“ちょんまげ”姿で現れた。

……ということで、10社ぶん読み比べてみました。まとめるとこういう感じです。

1.被告の性別についてどう表現しているか
被告・神いっき氏が女性だと書いている…………3社
犯行時の人物・声優のアイコが女性だと書いている…………5社
特に本人の性別に触れず、性中立的に書いている…………2社

2.トランスジェンダーと書いているか、性同一性障害と書いているか
トランスジェンダー…………1社
性同一性障害…………0社
どちらとも書いていない…………9社

3.公判中の被告の一人称が「僕」であったことを報じているか
報じている…………5社
報じていない…………5社

4.公判中の被告のふるまいについて、男らしさ/女らしさを強調するような描写はあるか
ある…………2社
ない…………8社

なんていうかこう、「だいぶマシ、すこしゲス」って印象よね。

★ だいぶマシ、すこしゲス――理解あるメディアは増えている

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メディアは大衆を映す鏡。人はみんなピュアピュアキラキラしながら生きてるわけじゃありませんから、「妊娠!? 相手の男性は誰なの!? 本人の体はどうなってるの!? っていうかこの人男なの、女なの!?」みたいな興味を持つ人もいるわけよね。それが本来、裁判という場で問われるべきものとは全く関係ないことだったとしたって。

そしてそういう興味に答えるものとして、いわゆる“ゲスい”記事や番組が出てくるわけです。

以下、神いっき被告の性のあり方について“ゲスい”表現をしている例を列挙していきます。これらは単にFtMについてよく知らない人がふわっと言っちゃった例であって「あーあ、わかってないのね(笑)」ってだけの話なんですが、読みたくない人は紫色の字の部分を読み飛ばしてね。

“この事件のことをお伝えするたびに、あれ、この人男だったっけ、女だったっけでごっちゃになっちゃうんですが。妊娠してたってことになると、女なんだってよくわかりますよね”

報道に限らず、本件については色々ムチャクチャなことが言われてますよね。「性同一性障害は単なるワガママ」「妊娠するなんてホンモノのFtMじゃない」「男か女かはっきりしてよ」とか。

こういう表現に傷つけられる人も、きっといることと思います。それはFtM当事者に限らず、FtMの友人や家族、また同じように自分のあり方を外から決めつけられ否定された経験を持つ人だってそうよね。

だけどそういう時に、どうか「メディアは全部ダメだ」「世間はみんな偏見まみれだ」なんて思わないでほしい。「当事者が連帯して戦おう!」みたいな声が響く中、戦いたければ戦ったっていいんだけど、戦わなくちゃいけないとは思いこまないでほしい。ただ、自分は独りじゃないってことを忘れないように、ゆっくり一人で休んでほしいとわたしは思うのです。

日本社会でのセクシュアルマイノリティにまつわる報道は、まだまだなところも多いとは言え、「だいぶマシ、すこしゲス」な状況まで来ています。これは、性のあり方にまつわるゲスい勘繰りで傷つけられる人が、たった一人だけではない、まして“当事者”だけでもないからこそ変わってきたことです。

だから、傷つけられた時に、怒ることができなくてもいい。
怒る気力がわかない自分をどうか責めないでください。
平気なふりをして笑わなくちゃいけないなんてどうか思いこまないでください。
休んでください。ゆっくり休んでください。

テレビを消し、スマホを消し、パソコンを消して、ごろーんと横になって、うーんと伸びのひとつでもしてみてください。そうしたら、あなたはちゃんとそこにいるはずです。誰がなんと言おうが、あなたはちゃんとそこにいるはずです。

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てことで、今回も読んでくださってありがとうございました! また来週月曜日にね。まきむぅでした◎

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