第3号 中野区社会福祉協議会と語ってみた 〜「ボクの老後はどこにある?」①

「老後の新聞」、第3週は「ボクの老後はどこにある?」と題して、生き惑う中年ゲイ(ワタシ。笑)の見聞録をお送りします(タイトルにどっか見覚えがあっても、それはきっと錯覚です)。

きょうはセクマイのための「ライフプランニング研究会(通称LP研)」のお話。これは友人たちと運営しているNコミュニティセンターaktaで開催しています。

●保険、不動産、介護、老後……を考えたLP研

ライフプランニング研究会(通称LP研)はパープル・ハンズの前身ともなった集まりで、2010年から開始、今年で5年目を迎えています。最初はゲイと保険、ゲイと不動産、ゲイと老親の介護、ゲイと老後、養子縁組や同性パートナーの保障……などなど、加齢とともに現われ、深刻化する諸問題をゲイバージョンで検討し、みんなの経験談や今できる対策などを具体的に考えてきました。

2年にわたる内容は、中野区社会福祉協議会(社協)の相談員のかたをお招きし、トークをしました。社協のかたもセクマイイベントへの参加は初めてで、ちょっとビビってましたが(笑。実際、社協がセクマイになにができるのか見当つかなかったので、と)、どんなことにも「はじめの一歩」が必要です。終わってみるとセクマイ側にも社協さん側にも、「へーー」という出会いがいろいろあった、有意義なひとときになりました。

社会福祉協議会は民間団体(社会福祉法人)ですが、いまのようにNPOなどがたくさんできる以前から地域での福祉活動(コミュニティワーク)を担い、行政からの委託事業や助成も多い組織です。いわば行政の方針と連携した地域福祉の実働部門、とイメージしたらいいでしょうか。多少、準公的組織といえるかもしれません。

現在、高齢者福祉や高齢者サービスに取り組む機関や企業、NPOは多いでしょうが、社協はたしかに富裕層向けというよりは、低所得・困難層や、身寄りがない一人暮らし、障害や認知症などハンディを負っている人とかかわることが多い組織でしょう。

今回来ていただいた中野社協がある中野区は、高齢にかぎらず一人暮らしが6割を占め(30万人口の18万人。私もその一人)、5、60代男性の一人暮らしも多い地域です。「5年後、10年後、地域の人が誰も知らないまま、ひっそり暮らし、ひっそり亡くなっているかもしれない人とのつながりを、今から創っていきたい」と社協の人は語っていました。そ、それ、明日の私のことかも……汗。

●高齢・一人暮らしの見守りとは

社協がかかわった高齢者の姿を、エピソード形式で紹介してもらいました。

Aさん、80代(一人暮らし)。生活保護受給ながら、すっごく節約して暮らしておられます。電気つけるともったいないって、家庭訪問をしても真っ暗だそう。クーラーもつけない(熱中症が危険!)。介護訪問ヘルパーが来るとつけるが、帰ると消す。そして、回りに迷惑かけまい、かけまいと、小さくなって暮らしている……。(生保は遊んで暮らしてるって、誰が言った!)

Bさん、一人暮らし、認知症。社協の金銭管理代行サービス*を利用していて、訪問して生活費を渡してあげると、5秒前にあげたお金を「これなに? あなたにさしあげます」と言ったり。判断能力は下がっても身体能力はあるので、介護度が上がらず施設に入れない。でも、徘徊して帰ってこれなくなるなどの危ない行為がなければ、認知症でも家で一人暮らししてる人はいます、と。そんなもんなんですねえ……。
*判断能力が衰えたが、成年後見(前回参照)をつけるほどではない人が、社協と契約して通帳やキャッシュカードの管理をしてもらうサービス。月千円で利用できる。国で推進しており、全国の社協で実施されている(権利擁護事業と言います)。

Cさん、やはり一人暮らしの認知症。これまでも金融機関で何度も騒ぎを起こしており、家に訪問すると、自分の苗字の三文判が50個あった。ハンコもよく無くし、銀行に行くたびにお金を下ろすための改印手続きをしていたのでしょう。

こうした一人暮らしなどのかたは、地域や銀行からの連絡で社協につながり、その点では地域の見守り力のおかげでなんらかのサポートにつながったわけですが、つながるまえに悪徳業者などにさんざん貯金も吸い取られたあとでやっと社協につながったかたもいたり、そもそも地域で誰にも気づかれず亡くなったり、所在不明になった人もいるでしょう、と。

地域での孤立(高齢者にかぎらず)の問題は、本人側にも介入を拒む人もおられ、なかなか支援がむずかしい場合もあります。拒むといっても、メンタル面の障害やその他で関係を拒否している場合もあり、かならずしも「本人の勝手」と言い切るわけにもいかない……。閉じこもりも、認知の症状が進み、自分で片付けられなくなったり、美醜の感覚がずれてきて、いわゆるゴミ屋敷になっていたり……。

ここにくわえ、これからセクマイの高齢期問題を考えた場合、セクシュアリティの秘密を抱えていて介入されたくないとか、メンタル不調やHIV陽性、トランスの人は身体に処置をしている、見た目と書類上の性別が違うなど、さまざまな事情から介入を拒む場合があるかもしれません。

社協の人も、これといっていい方法があるわけじゃない、私たちも継続的に訪問を重ねたり、地域の人がゆるやかに気遣う(姿見かけない、電気がついてない、など)ことで、命を救う機会になれば……と、おっしゃっていました。

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中野区社協での取り組みには、

・ボランティア希望者をボランティしてほしい人につなぐシステムづくり
・生活資金の短期貸付
・公共施設や自宅開放での町の居場所づくり(まちなかサロン)
・軽度の認知症の人の預貯金の管理代行(権利擁護事業)

などがあります(一例)。こうしたフリーペーパーは、地域情報の宝庫です。社会福祉協議会ごとに行なっている事業は異なります。一度、お住まいの地区の社協のWEBや広報紙などを見てみてはいかがでしょう。

●社会へ開く、セクマイ側にも必要な努力

後半の質疑応答では、いろいろな手が挙がりました。
パープル・ハンズのようなセクマイ団体が地域で他のNPOなどと連携していく契機を社協さんでも作ってほしいなどの要望もありました。中野区では社協主催でいろいろな団体も参加する「福祉まつり」があったのですが、今年から無くなったので、その後継イベントも検討中、だそうです。パープルでも、個人のカミングアウトが難しいなら、「地域にこういう団体があります」と団体カミングアウトを進めているところです(社協との交流もその一つ)。中野区役所で8月に開かれた区内NPOパネル展にも参加したり、区内の介護施設などへ研修や相談の提供による認知を広げたいと思っています。

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中野区役所で開かれた、区内のNPOの活動を紹介するパネル展。パープルも参加。地域の高齢サポートが私たちセクマイにフィットしたものになるかは、まだまだ不明です(イラスト:キャミー〈パープル・ハンズ会員〉)。

地域活動というとかならず出てくる「町会」ですが、そこへ入っていくことは労力的にもどうなのか? などの質問も出されました。

町会長が80代後半だったりすると(でも元気、地域ボス)、そこへセクマイの人が入って受容されるかというと、やはりむずかしい(苦笑)。ただ、地域のかたは一度、味方・仲間になると非常に強い。高齢期サポートもそうだし、大災害などでも重要でしょう。いきなり「ゲイ・レズビアン」として入っていくのでなく、一人ひとりそこに住んでいる「住民」というところから入っていって、あとで、「ああ、この人はそうだったのね、でもべつに普通じゃん」と認知されるルートはないだろうか、などのアドバイスもありました。そういえば私にも、地域の神輿活動に参加していて、地域でいつしか「あそこは男夫夫(ふうふ)の家」と認知されている友人のゲイカップルがいます。これもセクマイの地域参加かもしれません。そんな話もいつか書いてみたいと思います。

セクマイの団体がこうして地域の「一般」の組織と連携していくことはこれまでたしかに少なかったかもしれませんが、今回のように腹を割って話せば、いろいろな繋がりや信頼感が生まれることを実感させられたひとときでした。

安心できる老後・高齢期のためには、私たち自身も勇気を出して、社会に自分を開いていく努力が、これからもっともっと求められるのでしょうね。

※本文中に言う「ゲイ」は男性同性愛者に限定せず、性的マイノリティ全体を意図して用います。マイノリティ内部の差異を無化する点でご批判はあえて甘受しますが、あらかじめ読者のご寛恕をお願い申し上げます。それぞれのアイデンティティや情況に応じて、適宜ご参考になさってください。

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