第14回 ラテンビート映画祭にゲイ映画!『ブエノスアイレスの殺人』

文化の秋到来ですなぁ。秋は映画祭の季節でもありまして、第27回東京国際映画祭が今月末に開催されるほか、もう一つ注目の映画祭が東京を皮切りに、大阪、横浜で開催されます。それが「ラテンビート映画祭」。これ、なにげに11回を数える人気映画祭でして。理由はもちろん、日本でなかなかお目にかかれない、スペイン語圏&ポルトガル語圏の映画が観られるから。ラテン映画って、突き抜けた明るさがある一方で、どことなく哀愁漂ったり、ダークサイドがむきだしになったり、とハリウッドやアジアにはない見応えがあるんですよ。また、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(TILGFF)でも、必ずといっていいほどラテン系の国からの出品作があるように、LGBTにまつわるエピソードを盛り込むのもお上手〜。

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で、今回のラテンビート映画祭には、要チェックの作品がございます。それが『ブエノスアイレスの殺人』。英語タイトルそのまま直訳したこのタイトルこそ物騒ですが、観てしまうと「ジェラシー・コップ」とでも改題したくなるほど、ゲイ度が高い作品。TILGFFで今年絶賛上映された『湖の見知らぬ男』を、「湖畔のハッテンバ殺人事件」と改題できるように、物騒なタイトルほどのサスペンス色がないのが玉に瑕?

ストーリーはこんなです。

80年代のブエノスアイレス。敏腕警部のチャベスは、ある殺人事件の現場に向かう。そこには、ガンソという若いイケメン警官が先に到着しており、被害者の遺体に寄り添っていた。チャベスはなぜガンソが先に現場入りしていたのか疑問に思いながらも、現場の捜査を開始。殺された男はリッチなゲイ男性で、遺体の状況から見てSMプレイまがいの拘束をされ殺されたと推測。ガンソは現場にあったゲイクラブ「マニラ」のマッチをチャベスに差し出し、2人はクラブで事件の関係者を探すことに。

いきなりガンソ(チノ・ダリン)のドアップから始まり、すっとカメラが引いて後ろに映るのはイカニモなゲイのおじさん。オープニングからして、TILGFFのような気分にさせられること間違いなしです。ただし、80年代が舞台になっているので、出てくるゲイクラブは超ノスタルジックだし、警官達によるゲイに対する偏見や差別、差別用語なども出てきますが、そこは大目に見てね。

とにもかくにも、ガンソとチャベスの関係が、もはやBLともとれるエロさ! チャベスはストレートで奥さん子供がいるんですが、おじさま好きにはモテ顔だし、ガンソは美貌の青年。しかも、ガンソがことあるごとに、チャベスにキスを迫るんですよ。かといって、ガンソはゲイ? と言われるとそこは微妙。きっちりガールフレンドがいるんですね(これが超ブス)。こうして、隠れゲイのノンケ喰い的な様相を呈しながら、物語は意外な方に進んでいきます。

ゲイクラブで目を着けた参考人に接近するために、ガンソがおとりになるんですね。そこからがこの映画の真骨頂。ガンソと参考人のイチャイチャぶりを監視するチャベスの表情がみるみる嫉妬に満ちていくんですよ。しかも、その直後のガンソのチャベスに対する態度は見事にツンデレ。これをジェラシー・コップと呼ばずしてなんと呼びましょう。

サスペンスものとしては、ちょっと物足りなさもあるかもしれませんが、クィア映画として観るなら上々。むしろ、直接的な濡れ場がない分、殺人事件モノの緊張感よりも、エロ的な緊張感が高まるという仕掛け。むしろ、この映画って誰がターゲットなの!? と聞きたくなるほど。

二丁目直近のバルト9が東京会場なので、サクッと観て飲みに出るもよし。また、他にもおもしろい作品があるので、通い鑑賞してもよし。(個人的にはちょっとだけビアン風味のプロット『Flowers』やドキュメンタリー『ガラパゴス・アフェア —悪魔に侵された楽園の島—』、新宿では上映しない『Living Is Easy with Eyes Closed』が気になるところ)

ラテンビート映画祭でカルチャーの10月を彩ってみてはいかが?

 

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<作品情報>
第11回ラテンビート映画祭
■開催場所&日程
東京:10月9日〜13日 新宿バルト9
梅田:10月24日〜26日 梅田ブルク7
横浜:11月7日〜9日 横浜ブルク13
http://www.lbff.jp/

ブエノスアイレスの殺人
監督:ナタリア・メタ
出演:チノ・ダリン、モニカ・アントノプロス、デミアン・ビチル ほか

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