第27回 日本初のホモ用占いカード、ついに発売!! もちろん仕掛け人は、この人! 鏡リュウジ『秘密のルノルマン・オラクル』

歳を取ると、いろいろなことに合点がいく。溜飲が下がる。「あぁ、なるほど」「やっぱりね」「だよねぇ〜」という感じである。なぜ、あんなつまらない男にのぼせ上がってたのか、とか。どうして、アイツのことが嫌いでしょうがなかったのか、とか。あんなことしちゃった、こんなことやっちゃった。そんな諸々に合点がいく。だが、けっして理解できたわけではない。歳を取っただけで、そんなに頭が良くなるわけはないのだ。残念なことに。分からないままだがその因果が受け止められる、という感じか。むしろ、諦めに近い感じだ。私ももう十分に歳を取ったつもりではいるが、いまだに「なんで女装なんてしてるんだろう?」と考えることがある。良かったのか悪かったのか、悩むこともある。だが、すぐに「だよねぇ〜」と独りごちて納得してしまう。良いも悪いも清濁混淆あわせ飲み。人生、そんなに白黒ハッキリつけられるもんじゃない。それが分かっただけでも、怪我の……いや、歳の功名というべきか。

それでも悩みは尽きない。諦めを知らない若い頃はなおさらだ。そこで、占いである。鰯の頭もなんとやら、である。困ったこと、分からないことがあれば、占いに頼りたくなる。私も占いが大好きなのだ。とはいえ、決して信じているわけではない。じゃ、何のためかといえば、合点をいかせるためだ。「だよねぇ〜」を先取りしてしまうためだ。

人間、分からないことは嫌いである。不安にさせられるからだ。暗闇に向かって足を踏み入れるのは、勇気が要る。分かってないと、体が動き出さない。だから、前もって分かったことにしておく作業が必要だ。それが、占いである。占いは、人生の上に薄いトレーシングペーパーを被せて、あれやこれや地図や設計図を書き込む作業である。そして、結果が出てからは、いいわけだって書き込めてしまう。失敗したら「はずれた!」と、占いのせいにだってできてしまう。こんなに都合の良いメカニズムは他にはない。宗教を除いて……だが。

占いには数多くの種類がある。星占い、血液型……はては亀の甲羅まで。おもしろいことに占いにも流行がある。日本では、戦前までは人相、手相、四柱推命西洋占星術。うお座生まれは……というヤツだ。いつの頃からか雑誌や新聞の占い欄も、ことごとく西洋占星術に切り替わっていった。

雑誌や新聞の星占いを見ても、それはもちろんノンケ仕様である。「さそり座生まれの女性の恋愛運」とか、「おとめ座の女性と相性が良いのは……」といった具合だ。男の私が男との恋愛運を調べることは、まずできない。それが悔しくて、星占いを勉強してみた。西洋占星術では生まれたときの星の位置を記入したホロスコープという地図らしきものを作成し、そこで星の位置や星同士の関係を読み取っていく。一般的な恋愛運の解釈では、質問者が女性の場合は金星を彼女自身をあらわす星と考える。そして、相手の男性を示す火星との相性を見ていくことになる。もう、この時点でホモは蚊帳の外である。なぜなら火星はふたつも無いのだから(笑)。

1970年代に入ってブームとなったのが、鏡リュウジが、日本初のオリジナルのルノルマン・カードと解説書のセットを出版したのである。


鏡リュウジ『秘密のルノルマン・オラクル』(夜間飛行) 2014/8/10発売

ルノルマン・カードは、全36枚からなる占いカードで、それぞれに象徴的な絵柄が描かれている。愛情をあらわすハート、幸運を示すクローバー、敵や嫉妬を意味するヘビ……といった具合だ。タロットに比べて非常に分かりやすい表意である。占い方はカードの並べ方によっていろいろな方法があるが、特徴的なのが象徴カードと呼ばれるものだ。紳士と淑女が描かれたそれぞれのカードを、質問者自身をあらわすカードとしてテーブルの上に並べる。これを中心に、他のカードとの組み合わせで占いの意味を読み取っていくのである。例えば、紳士のカード(象徴カード)の近くにヘビのカードがあれば、近くに敵がいます……といった具合だ。恋愛運では、もし、紳士のカード(象徴カード)の近くにハートと淑女のカードが並んでいたら、貴方に好意を寄せる女性がいます……とでも解釈するわけである。んじゃ、ホモの恋愛運の場合は……。

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鏡リュウジ『秘密のルノルマン・オラクル』より、2枚の「紳士」のカードと「ハート」のカード。

私は、鏡リュウジ氏に絶賛を贈りたいと思う。というのも、彼はオリジナルの日本版ルノルマン・カードを考案するときに、象徴カードである紳士と淑女のカードをそれぞれ2枚ずつセットしたのである! つまり、紳士のカード(象徴カード)の近くにハートともう一枚の紳士のカードが並んでいたら、貴方に好意を寄せる男性がいます……と読み解くことも可能になったのだ。これについて彼は、次の様に語っている。

かつては恋愛や結婚といえば男女間のものだけに限られていましたが、今では先進国の多くでは男性同士や女性同士の愛も当たり前のものになっています。愛に性別はありませんものね。また、人間関係を占うときに、同性の上司と部下、などといったことを占う必要もあるでしょう。あなたの指向性や目的によって、どのカードを使うかを選択するようにしてください。鏡リュウジ 『秘密のルノルマン・オラクル』より)

素晴らしいことではないか! これで心ゆくまで男同士の恋愛運が占える!! 日本初のホモ用占いカードなのである。占い業界を支えているのは、恋に悩む思春期のティーンエイジャー達である。この本も多くは彼らが買い支えていくのだろう。そんな彼らが、紳士カードと淑女カードが2枚ずつあることの意味に気づき、思いを巡らせてくれるなら、占いの当たりハズレよりももっと大切なものを手に入れられるだろう。鏡リュウジ氏とこの本の出版社の英断に感謝したい。鏡氏でなくては、この企画は実現することはなかっただろう。やっぱ、「だよねぇ〜」である。

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各国のルノルマン・カード。左上より時計回りで、『ASTRO MYTHOLOGICAL』(B. P. Grimaud)、『La Sibylle Des Salons』、『GYPSY WITCH』(The United States Playing Card Campany)、『The Concise Fortune Teller』(B. P. Grimaud)、『Jeu De Cartes De Mlle. Lenormand De Paris – No.12273/150』(Muller & Cie.)

さらに好感が持てるのは、鏡氏の実直さである。「実はこれは海外のデッキではすでに一般的になっている様式」だと、正直に書いているのである。事実、占い師 Doctor Mariusが考案した占いカード『Suits Of Love』には、男女それぞれ複数枚の象徴カードが付属している。さらに、フランスのカードメーカー「Lo Scarabeo」社は、そのものズバリの『Brotherhood Tarot』は、全編、ヒゲ熊マッチョの写真コラージュによるデッキである。

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次に紹介するのは、「Destiny Books」から出版されたカードと解説書のセット 『The COSMIC TRIBE TAROT』。これまた写真コラージュによるデッキだが、シュールというか、ぶっ飛んだイメージが炸裂。絶体にいけないクスリとかキノコを服用している感じだ(笑)。おまけに、やたらと裸の男女が出てくる。こんな感じだ。

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Stevee Postman 『The COSMIC TRIBE TAROT』より、イカホモな「5.教皇」、チンコ丸見えの「4.皇帝」、女装オカマの「8.正義(バランス)」のカード。

で、一般的なタロットでは、こんな感じ。どちらが好みか?って問題だ。

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モダン・タロットの代表作ウェイト版より、「5.教皇」、「4.皇帝」、「8.正義(バランス)」のカード。

そして、この 『The COSMIC TRIBE TAROT』には、恋人のカードが3枚付属しているのだ。それぞれ、男女、男男、女女の組み合わせの恋人たちが描かれている。なんともPC(=Political Correctness)で便利なデッキである(笑)。

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質問者のセクシュアリティや占いの内容によって使い分けるために、レズ用、ノンケ用、ホモ用の3枚用意された「恋人」のカード。

ご多分に漏れず私が占いにハマり始めたのは、恋多き思春期のころである。同性への恋心を誰に相談するわけにもいかず、ひとり占いに頼ったのだ。まさかその頃は、ホモ用占いカードが売り出されるなんて、どんな占い師であっても予測だに出来なかったに違いない。事実は小説より奇なり。人生は占いより奇なり、である。いい世の中になったもんだ。いまさら恋占いをする気も、その必要もなくなってしまったが(笑)、私にもまだわずかに予測のつかない人生が残されている。たまには秋の夜長、ルノルマン・カードでひとり占いでもしてみるか。

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写真左/鏡リュウジ 『秘密のルノルマン・オラクル』(夜間飛行/2014年 発行/ISBN 978-4-906790-11-1)
写真右/Stevee Postman 『The COSMIC TRIBE TAROT』(Destiny Books/1998年 発行/ISBN 0-89281-700-3)

さて、占うまでもなく、大入り満員、大成功間違い無しのイベントがある。ひとつは、なんと10周年を迎える『SURF』である。いまどき誰も履かないような小っちゃな競パンに魅せられたホモ達がわんさか押し寄せる人気イベント(笑)。「強制競パンROOM」や「もっこりコンテスト」など、チンコの先がヌルヌルしそうな企画もある。

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『SURF 10th Anniversary』
日時/2014年10月12日(日)21:00〜、会場/新宿二丁目・AiSOTOPE Lounge、料金/¥3500 1ドリンク付き。詳細は、http://ameblo.jp/akiba-night/

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