第4回 たまには臆病な自分を忘れて!セックスは生涯続くアドベンチャーよ

 

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「これでアソコも暖めて!」

新居に引越して、やっと片付けも済んで、夏の終わりにハウスワーミングを開催したところ、友人から素敵なモノをもらった。普通、新居を祝うためのパーティに持っていくギフトは新生活で使えそうな日常用品だが、たまにユーモアを忘れない友人がいたりする。「パーティが終わるまで開けちゃダメだよ!」と忠告されたので、みんなが帰ってからキラキラにラッピングされたプレゼントを手に取った。

包装を破って中を見ると、予想通りおもちゃだった。こどものおもちゃではなく、おとなのおもちゃ。興味津々な彼氏が見てる横で、パッケージから取り出すと漆黒のバイブレーターだった。大きくはないが、小さくもない。表面はシリコンで、高級感があって触り心地抜群。人間工学を研究し尽くしたかのような特殊なデザインはとてもモダンでまるでアート作品。電池を入れると、バイブレーションに様々なパターンまであった。「絶対にイカせてみせる!」そんな意地と誇りを感じた。

「最近のバイブレーターって凄いのね。」それだけ言って、あたしはそれを箱に戻して本棚に飾った。インテリアに成り下がったバイブレーターはしょんぼりしていた。

ここ数年、自分でもビックリするくらいバニラなセックスばかりだ。別に昔から過激でハードコアなセックスをしていたわけじゃないが、次々と新しいことにチャレンジしていくんだと思っていた。しかし、そんな夢見がちな若い頃の自分から遠くなればなるほど、どんどん臆病になっていた。「とりあえず、やってみよう」という自信は「でも、そんなことしたら」という心配に変わった。だから、バイブレーターにも背を向けたのかもしれない。そんな未知なものを使うなんて、と入れず嫌いしていた。

「昨日、お尻に腕までズボズボ入っちゃった。もう最近ただのタチじゃ物足りないんだよね。」
ジャズがかかる昼下がりのカフェで紅茶を飲みながら、二十歳になったばかりの友達が大声で朝まで続いたというセックスを一部始終話してくれた。アラサーのあたしは、目を丸くしてそんな彼の話を黙って聞いていた。フィストファックなんて都市伝説だと思ってた自分からすれば、彼の話に挿入できるネタなんてない。カップに残った紅茶を注ぎながら、「どうしてそんなことしようと思ったの?」と思わず聞いたら、彼は「どうしてしないの?」と返した。どうやら、彼はその質問の意味を理解しなかったようだ。

その次の日、タオル一枚で「準備はいい?」と真剣な面持ちで彼氏に問いかけた。バイブレーターとローションをぎゅっと握って、ふたりでベッドにジャンプした。「マジでこれ入れるの?」「え?自分から入れたいって言ってたじゃん」とぎこちないやり取りを繰り返しながら、あたしは期待と後悔の狭間に揺れていた。そうこうしているうちに、ブォぉぉぉーンっと激しく振動しながらそれが入ってきた。バイブバージンを卒業した瞬間である。

「どう?」

彼が目を輝かせながら聞いてくる。

「ちょっと黙ってて。」

予想以上の快感を邪魔されて、少しご機嫌斜めなあたし。

バイブレーターがこんなに気持ちよかったなんて思ってもみなかった。今なら「ビビビ」婚をした松田聖子の気持ちが少しわかる気がする。こんな年になるまでバイブレーターを試さなかったことを少し後悔したが、そんなことを忘れるくらいこの瞬間が生き生きしていた。1時間後、汗だらだら流しながら彼氏と寝転がってセックスの余韻に浸っていた。こんなに燃えたのは久しぶりだった。携帯を手に取って、プレゼントをくれた友人に「ありがとう。とても気持ちよかったよ。」とメールした。

シャワーで綺麗さっぱりして、キッチンで乾いた喉を潤しながら、改めてバイブレーターのことを考えた。「どうして今まで使わなかったんだろう?」変化を恐れるようになったのか。他人に変態だと思われるのが恥ずかしかったのか。フツーでバニラな毎日の方が居心地がよかったのか。答えはそう簡単には出てこないが、十分に一皮剥けた気分だ。今ならフィストファックも…いや、それはまだちょっと早いかもしれない。

ベッドルームの掃除を終えた彼もキッチンにやってきた。

「ねぇ、バイブと俺、どっちが気持ちよかった?」

と、真顔で聞いてくるので。

「バイブ!」

と、二つ返事で答えた。

だって、恋愛の秘訣はオープンコミュニケーションでしょ。

少ししょんぼりする彼に「そういえば、バイブどうしたの?」と聞くと、「見てないけど?」と困った顔で言う。まだ一回しか使ってないのに、失踪させてたまるかと家中を探した。お尻の中に入ったままというベタなギャグはまずないとして、ベッドルームにもシャワーにもない。そこで洗濯機が回る音が聞こえて、「まさか!」と思って中を覗くと、バイブはタオルに混じって綺麗に洗われていた。濡れ濡れのバイブを取り出して、スイッチを付けるとまた元気に震えだした。これが彼氏の天然ボケの仕業なのか、それとも自分の立場をバイブレーターに奪われたくないという嫉妬心なのか、あたしにはわからない。ただ一つ確かなことは、近いうちに彼がおとなのおもちゃ屋さんへショッピングに連れて行かれるということだ。

さぁて、次は何に挑戦しよう!

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