第7号 お葬式を語ったら、元気が出た!〜「ボクの老後はどこにある?」②

「老後の新聞」、第3週は「ボクの老後はどこにある?」をお送りしています。今月も「ライフプランニング研究会(通称LP研)」の報告をお届けしましょう。なんと9月は、「葬儀社のかたと語ろう」を行ないました。

セクマイだけで「老後」はできません。介護、医療、福祉など、社会のさまざまな高齢期セクターのかたと繋がっていこう、をテーマに開催中の今年のLP研。今回はついに葬儀……(汗)。テーマがテーマだから普段より参加者少ないだろうと思ったら、なんと奥さん! これが大入りよ。「老人ホーム」とか「同性婚」とかがホットな話題に見えますが、じつは「そろそろ親死ぬけど、どうすんの?」「自分、死んだらどうなるの?」が気になっている人が意外に多いかも。

ゲストは、オタクの殿堂ブロードウェイにある中野区の葬儀屋さん「あすなろ葬祭」の長島歩社長。オファーされたときはちょっとビックリしたそうですけど、町の葬儀屋さんの小回りのよさ、快くおいでくださいました。

●葬儀の費用がよくわかった!

中年世代は子として親の葬儀を、喪主となって行なう場合があります。馴染みの薄い葬儀屋さん、どうやって探せばいいのでしょう。

「ネットで、葬儀・○○区なんて検索するのが多いですね。ただ、地元がトップに出て来るわけではない。ホームページはいいこといっぱい書いてるけど、それだけではわからないこともある。日頃から近所で見つけておき、実際に会っておくのがいいですね。ただ、これは準備する時間がある場合。急に亡くなったというと、クジ運みたいなもの(笑)」

余談ながら病院で葬儀社が紹介される手順は……。病室で亡くなると霊安室へ移送。そこは病院ごとに契約している業者があります(契約ゲットには、それなりに骨が折れるとか)。霊安室から先、頼む予定の業者がないなどのときに限り「ではウチで……」と営業していいのだとか。

やはり気になるのは、葬儀にかかる費用です。

「葬儀はかならずしも安くはない。広告の安さだけに引かれると、あとで困ることも。どうしてもかかる費用は、火葬料、骨壺、寝台車(移送代)、お棺、死亡から24時間たたないと火葬はできないのでそのかんの斎場等での安置料やドライアイス、そして最低限の人件費。弊社では248,400円のセットを組んでいます。火葬だけなら(最近、直葬とかゼロ葬といって話題)10万円などの広告も見ますが、場所が地方で火葬料が住民ならタダの場合だったりで、よく場所や内訳を確かめないとダメ」

葬儀は規模によって費用も大きく異なります。高齢で友人の参列者もなく子や孫だけでする「家族葬」(60〜70万)、親族30人・一般40人の通常のお葬式(180万前後)、そして120人規模(270万)まで。内訳は、上記のどうしても必要な費用のほか、祭壇飾り関係、そして通夜や精進落としの飲食代や香典返し等「消えもの」の組み合わせです。内訳を見える化してもらうと、とかく不明瞭感がある葬儀もよくわかります。

「ただ、270万と聞くとエッと思いますが、参列者からの香典収入もあります。祭壇や演出の費用は、故人やご遺族の思いで伸び縮みもする部分。逆に家族葬が、香典収入もない分お金がかかったり、呼ぶ人の線引きがメンドウ、あとで弔問客がいつまでも来た、と良し悪しありますね」

準備する時間があるなら、できれば2社以上、見積もりをとってみようとも。「ワタシにもこっそり見せてくれれば、アドバイスもできますよ」(笑)。

そのうえで、最後に残るのが宗教者の費用です。

「まずはご実家の宗教・宗派、菩提寺の有無などをちゃんと知っておくこと。いない場合はウチでも紹介できるが、お布施・戒名等で50〜60万ぐらい」

少し会場にざわめきが起きましたが、墓苑も運営する寺院だと月の寺院の維持費を葬儀の件数で割るとそれぐらいになるとか。寺のお墓に入らないとか、地方や寺との付き合いの濃淡などその他の条件でも大きく変わってくる部分です。ネットで見る「お寺紹介、戒名料9万円から」などは、通信講座などで資格をとった無寺の僧侶らがやっているなど、ヘーという話も。

ところで、最初に「葬儀には3つの意味がある」、と長島さん。

物理的処理……ご遺体を火葬する(無害化)
社会的処理……親族や友人と決別する
精神的処理……セレモニーを通じて死を受け入れ、次のステップへ切り換える

身内で火葬だけ済ませりゃいいと思っても、遺体と最後のお別れをしたい人もいるし、評判の悪い「葬式仏教」ですが、遺族にとってのグリーフワークの場として葬儀に真剣に取り組むお坊さんも増えています。安くはない葬儀費用、それでなにを得るべきなのか、葬儀の3つの意味に立ち戻って考えてみることも大切ではないでしょうか。

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葬儀の規模ごとの見積もり例や、葬儀の基礎知識など、ふだん知る機会の少ない情報の資料をたくさん提供してくださいました。なお、葬儀費用は、基本的に親の遺産から支出し、相続税の計算上も、控除されます。

●おひとりさまの葬儀や死後事務委任も多くなった

つぎは、「おひとりさまの葬儀」。私たちセクマイも、考えてみれば「おひとりさま」の潜在層。どんな旅立ちを迎えることになるのでしょう。

「お金がなければ葬儀はできない。これは現実です。一人暮らしで生活保護の人などが亡くなると、役所から私どもへ依頼が来て、区から20万1千円支給されて火葬や片付けなどをします。お骨の引き取り手がないと、無縁仏として区がお願いしているお寺に葬ります」

「親や身内が高齢だったり遠方だったりで片付けに来れないので頼まれる、ということもあります。遺品整理ではいろいろマニアックなものや春画などが出てきたり、中年の男性のかたで「佐川男子」の写真集があったり(会場に微妙な笑)。人それぞれの人生が見えてきますね」

あすなろさんにも、死後の片付けや葬儀のことで相談に来る人も少なくないとか。高齢の人より30、40、50代ぐらいのかた。頭がしっかり動くうちに、自分の最期を考える人が増えてきたそうです。とくに女性で、自分はもう結婚しないわ、と決めている人のほうが積極的だそう。

「最近では、死後事務委任契約を引き受ける例も出てきました。ご葬儀や埋葬、残されるペットの行き先、部屋の片付けや引き払い、支払い、誰にあげてほしいなどの処分について、ご希望と預託金を受けて、いざというときはウチが喪主となって行なうものです」

お墓についての話も出ました。

「おひとりさまのみなさんが、きょうだいや甥姪に遠慮しながらお墓に入れてもらうぐらいなら、自分の墓をもちたいかもしれませんが、後継者がいないとお墓は買えません。最近は納骨堂形式のものが人気で、30〜40万ぐらいからありますね。粉砕しての散骨も人気。ただ、国有地や私有地での散骨は法律上ダメで、海や、墓苑として認可を受けたところへ(樹木葬など)。二丁目の仲通りで散骨してほしいと言われたら、ホントはダメですね。まあ、私は「置き忘れる」とかはあるかもしれませんが……」

なにやら含みをもたせたような発言も……。

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意外に大入りとなった、「葬儀」テーマのLP研。キャビネットの向こうやカメラの後ろ側にもまだ人がいます。用意した30部の資料がみんな無くなり、さらに数人が聴講していました。毎回、こんな感じで、セクマイの老後に必要なテーマをとりあげています。あなたも次回はぜひ。会場はコミュニティセンターakta(新宿二丁目)にて。

●死後は、誰か頼める人がいないとどうしようもない

ふだんなかなか聞けない話を、豊富な経験例とともに、わかりやすく話してくれる語り口に会場は引き込まれ、いろいろな質問の手も上がりました。

最後に長島さんが強調していたのは、「お金がなくても、区の費用などで、最低限の片付けとかはできます。ただ、散骨するのでもなにするのでも、誰か頼めるキーパーソンがいないとどうしようもない」ということ。セクマイの場合、最後はそこがネックになるのではないでしょうか。

さまざまなことを「秘密」にし、最期まで、誰にもなにも頼むことができないまま、そのときが来たとき、「あっ、間に合わない!」と思いながらあわただしい旅立ちを余儀なくされる……。そんなことがあるとしたら、私にはなんだかとても残念に思われます。

もちろん親友同士、パートナー同士、頼みあっていても、一緒に年をとるわけだから、自分がいざというときには相手もそれなりの年齢で、思うに任せない場合もあります。

社会にはいま、単身高齢者のための「見守り法人」が増えてきて、訪問や後見受任、そして死後事務の引受けなどもしています。セクマイの事情をわかった見守りや死後事務委任がいいというニーズに、パープル・ハンズなどの法人が応え、ある程度のお金を預けておけば、片付けや引き払い、ペットの里親探しなどもしてくれるという事業を将来立ち上げられたらとも思っています。

さらに、希望のスタイルの葬儀・お別れ会を開いたり、埋葬や散骨の引受け、もちろんみんなで入る「にじのお墓」(合同墓)などの運営もいいでしょう。

法律上まだ認められていない同性パートナーも、ちゃんと喪主や相続人となれるよう、きちんと書類を作っておくなども大切です(そのサポートもやります)。

お葬式の話をしていると、不思議ですが、私はなんだか元気になってきます。「よく死ぬことは、よく生きること」。言い古された言葉ですが、ゴールから引き算で考えると、あんなこともやったらどうか、これもいいねと、アイデアやすることが明確になってくるからでしょうか。

人間は死亡率100パーセントの生き物であり、今回の話と無縁な人は一人もいません。生老病死がそろったゲイライフ、LGBTライフが作れたらな——あらためて思ったLP研でした。

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