第70回 世界の大都市でレズビアンバーの閉店が相次ぐ3つの理由

18年間続いたあるレズビアンバーの閉店を、こんなふうに見送った人がいました。

「さようなら――ここは私の人生で、はじめて“家”だと思えた場所だった」

ああ、まったく、なんていうことかしらね。

まきむらよ。

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毎週月曜、こちらの連載「まきむぅの虹色ニュースサテライト」をお送りしております。

今回のテーマは、

欧米の大都市でレズビアンバーの閉店が相次ぐ3つの理由

です。

今年10月23日、いわゆるゲイタウンとして有名なサンフランシスコで、唯一のレズビアンバーとして営業していた「レキシントン・クラブ」が18年間の歴史に幕を下ろすことを発表しました(出典:公式facebookアカウント

このような「ゲイバーがにぎわう地域で、レズビアンバーばかり閉店」という事態が起こっているのは、サンフランシスコだけではありません。

2012年には、当時残っていた中でパリ最古のレズビアンバーだった「ル・トロワジエーム・リウ」が閉店(出典:TÊTU))。

現在「パリの新宿二丁目」ともいえるマレ地区には、把握できる限りわずか2件のレズビアンバーしか残っておらず、しかも日・月・火曜日は閉店。つまり週の半分くらい閉まっているような状態です。

他にも、欧米の多くの大都市では、レズビアンバーが絶滅寸前の件数まで追い込まれています:

ブルックリン 1件
マンハッタン 2件
ニューヨーク 3件

そんな欧米の大都市におけるLシーンの盛り下がりようを、あるfacebookユーザーはこんなふうに嘆いています。

「ぶっちゃけ金曜夜のビアンバーより、日曜朝の教会のほうがいっぱいレズビアンいると思うわ……」

つらたん

いったいなぜこんなことが起こっているのか。
これにはおそらく3つの理由があると思いますので、順番にご紹介してまいりましょう。

★理由その1 そもそもガンガン飲む女子が少ない

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写真:PAKUTASO

パリ最古のレズビアンバー閉店によせて、あるLなパリジェンヌはこんなことを言っていました。

「ゲイは店に飲みに来るけど、ビアンは店に話しに来るのよ。

デカい体でガンガンビールかっくらって派手に楽しむガチムチ熊さんみたいなキャラが、レズビアンシーンには少ないじゃない?

ヘロヘロに気の抜けきったジントニック一杯をぐるぐるぐるぐるかき回しながら、だらだらだらだら店に居座ってしゃべり続けるような客ばかりじゃ、そりゃあビアンバーもつぶれるわよ、当たり前のことよ」

うわあ……

サーセン!!!!!

まあお店でのんびりおしゃべりする自由だってもちろん誰にでもあるんだけど、そういうお客さんばかりでお店の経営が成り立つかっていうとなかなかむずかしい……っていう現実よね。

また、多くの研究は、「いわゆる女性の身体を持って生まれた人の方がアルコールに弱く、平均アルコール消費量も低い」ということを指摘しています(出典:NIAAAほか)。

飲まないし、飲めない。ということでドリンク一杯で一晩過ごすようなお客さんが多いと、やっぱりお店の経営にはひびいてしまいがちだということですね。飲めないことは悪いことではありませんが、長年続いてほしいお店に長時間滞在するならば、ちょっと過ごし方を考えたいものです。

★理由その2 ジェントリフィケーション

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写真:PAKUTASO

ジェントリフィケーションとは、要するに「うちの街にお金持ちがめっちゃ引っ越してきたせいで家賃も物価もガン上がりしちゃって、もともとの住人が住んでいけなくなっちゃったよー」状態のことです。

いわゆるLGBTフレンドリーな街の場合、以下のようなことが起こりかねないわけですね。

(1)ある街がLGBTフレンドリーだと評判になる。
(2)さまざまな経済状況のLGBTが街へ引っ越してくる。
(3)そんなさまざまな住人たちの中、女性に比べて平均賃金が高く、しかも共稼ぎのリッチなゲイカップル世帯が特に無双状態になる。
(4)リッチなゲイカップル向けの高級店が続々開店。家賃もガンガン上がる。
(5)リッチでもゲイカップルでもない元々の住人たちが住めなくなる。
結果→レズビアンバーがつぶれる

だからといってリッチなゲイカップルを悪者にしてもしょうがないし、リッチなのはゲイカップルだけじゃないし、また男の収入に頼らない女が全員貧乏生活を強いられると言っているわけでは決してないのだけれど。

ただ現実問題として、いわゆる男性よりも女性が、シスジェンダーよりもトランスジェンダーが、ジェントリフィケーションのあおりを食って街を出ていくことになりやすい……ということですね。(参考:Huffpost gay voices

★理由その3 男性に比べて縄張り意識を持たず、家飲みしがち

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写真:PAKUTASO

上記でお話した「家賃の値上げについていけず、引っ越さざるをえない」ということにも関連してきますが、先述の記事によるとアメリカの研究者はこんな指摘をしているそうです。

「ゲイ男性がひとつの街に長く住み、『この街が自分の居場所』と感じられるテリトリーを作る傾向があるのに対して、レズビアン女性は公共の場所で安全を感じられないことが多く、自宅などプライベートな場所をより好む傾向にある」

家飲み派か

たしかに、女だけで飲んだ夜道を帰るのって、ちょっと面倒事もあるわよね……。
わたしも飲み帰りの夜道、ハァハァしてる人に絡まれて「ねえ……そのニーソ……1000円で売ってくれないかな??」って言われたことあるわ。

3000円で買ったニーソなんですけど!!

まぁそんなこたいいとして、「外で飲みたくても怖い目に遭いそうでイヤだ」っていう人を増やしちゃうような治安の悪さは、めぐりめぐって何も悪いことしてない飲み屋さんをつぶしちゃったりするということよね。ハァハァするのは結構なんですが、相手のことを思いやれずに自分だけハァハァしちゃう子はちょっと社会的なふるまいができてないのでどうぞご自宅でごハァハァください^^って話です。

……ということで、欧米のレズビアンバーが閉店に追い込まれる理由を3つ挙げていきました。
他にもなにかあるかしら。あなたは、どう考えますか?

わたしは個人的に、
「レズビアンバーじゃないとレズビアンでいられない」
「女はレズビアンバーじゃないとガールハントできない」
っていう状況それ自体がそもそも打開されてほしいと思っているのね。

だから、例えばレズビアンバーの減ったパリでも、レズビアンがミックス営業のゲイバーでトランスのバイの友達と仲良く喋ってる……みたいな光景を見るとうれしくなります。

だけど、世の中「ほかでもないレズビアンバーだからこそ安心できる、楽しめる」っていう人だってもちろんいるわけよね。

だから、そもそも「レズビアンであることを隠す必要がない」世の中で、「レズビアンが身を隠して泣くための場所」じゃなくて「レズビアンカルチャーを楽しむ人たちの場所」が継承されていってくれればいいなあと、わたしは思うのでした。戸籍の性別変更をしていないMtFレズビアンや、自分がレズビアンだという確信を持っていない人だって気楽に入っていけるような、そんな場所がね。

ということで、今回も読んでくださってありがとうございました! また来週月曜日にね。まきむぅでした◎

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