第6回 恋愛やセックスは孤独を満たす道具じゃない

 

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思春期にウォークマンで毎日聞いていたヒット曲が懐かしくって、気持ちだけでも青春時代にタイムトリップしようとYouTubeで聴き漁ってみると、ビックリするくらいどの曲も「寂しい」と連呼していた。華原朋美はくじけそうな姿を窓に映してあてもなく歩くし、浜崎あゆみは居場所がなかったし、宇多田ヒカルに至っては君に会えないとmy rainy daysなのよ。J-POPは寂しい曲だらけなのか、そういう曲ばかり好んで聴いていたのかわからないが、周りが全員敵だと思っていたトゲトゲしい十代前半の自分にとっては共感できた歌詞だったんだろう。最近になっても西野カナが会いたくて会いたくて震えているわけだから、孤独を感じている人は減っていないのかもしれない。

先日、トロントの高校生向けに恋愛講座をやっていたら、孤独感と葛藤している若者とたくさん出会った。自分とは生きている時代も文化も違っていながら、彼らが抱える悩みは自分のとそう違わなかった。一人の女の子は、独り身でいることに耐えられなかったことを話してくれた。彼女は一つの恋が終わると、休む間もなくまた次の恋に飛びついた。それが答えではないとわかっていながら、一瞬でも寂しさを感じることを耐えられなかったという。モテなかった自分からすれば贅沢な悩みでもあるが、彼女が言いたいことは痛いくらいわかった。そして、そうやって孤独な自分を紛らわすのは彼女だけではないということをよく知っていた。

うちの母にカミングアウトして何年も経つが、彼女は今でもゲイの自分が寂しい老後を送らないか心配している。彼女が抱いていたゲイのイメージからすれば、あたしが恋愛をして家庭を持つなんてことは想像できなかったんだろう。今の彼氏と数年付き合っているのを見て少し安心したのか、最近は老後の話を控えているが、いつか破局をした日にはまた毎日のように心配されることだろう。酒井法子世代の母は、うさぎは寂しいと死んでしまうというセオリーのせいできっと孤独がトラウマなのかもしれない。

母の考えにも一理あるとは思いながらも、「恋愛して家庭を築けば老後も安心」というロジックは安直なラブコメのようで納得がいかない。そもそも、幸せそうなキスで幕が降りるところがピークなラブコメはその瞬間で終わるわけで、その後に何が待ち受けているのかなんて誰にもわからない。百歩譲って彼らが順風満帆な恋愛をして、絵に描いたような家庭を持って、死ぬまでお互いを愛していたとしよう。そんなハッピーエンディングな人生を送ったところで、彼らはきっとそれぞれに孤独を感じて最後の時まで生きただろう。ラブラブな恋愛や幸せな家族で寂しさが満たされるなら、人間はこんなにも孤独を恐れる必要はない。

このコラムを通して口を酸っぱくして言っているが、恋愛やセックスはそれ以上でもそれ以下でもない。そこにないものを求めたところで何も得られない。セックスを山ほどしたって、恋愛を無休で続けたって、心にのしかかった孤独感は満たされない。寂しさが恋愛やセックスで解決すると思っているなら、すればするほどより寂しくなっていくだろう。そう言い切ってしまうと絶望的に聞こえてしまうが、決してそんなことはない。そこにないとわかっていれば、余計な期待をしないで済むし、セックスも恋愛もより自然体で楽しめる。

それでは、この孤独感を無くすにはどうすればいいかと聞かれたとしよう。何をしても無くならないなら、受け入れて生きるしかないとしか答えようがない。別に強がる必要はないし、感じないように蓋をする必要も無い。押し潰されそうな日もあるかもしれないが、無理に戦うこともない。人は孤独ないきもの。最近になってようやく、この悲しい結論を受け入れた。いざ頭で理解すると、なんだか心まで少し軽くなった。これからは、ゆっくり時間をかけてこの感情と仲良くなっていけばいいと思っている。

いつのことか、こんな素敵な話をされたことがある。

「恋愛は寂しさを埋めるんじゃなくて、自分が孤独を感じていることを共有できるパートナーを持つことだ。それだけで、この孤独を感じているのは自分だけじゃないんだってわかるから、なんだか前に進む力がもらえる。」

そんな恋愛を心がけたいものだ。

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