第72回 国語辞典が「恋」の説明を男女間に限定しない表現へ

言葉が考えをつくるのかしら、それとも、考えが言葉をつくるのかしら。

どっちかしらね。

まきむらよ。

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毎週月曜、こちらの連載「まきむぅの虹色ニュースサテライト」をお送りしております。

今回のテーマは、

国語辞典が「恋」の説明を男女間に限定しない表現へ

です。

今まで、日本語をはじめ多くの言語の辞典は、「恋愛」「結婚」といった言葉を男女間前提の表現で説明してきました。

例えば「恋愛」は、「男女が互いに相手をこいしたうこと。また、その感情」というようにね(出典:広辞苑第六版)。

あら、それじゃあ男女間じゃなければ恋愛じゃないっておっしゃるつもり? と思って同じく広辞苑第六版で「同性愛」の項目を引いてみると、なんと堂々とこんなふうに書いてあります。

「同性の者を性的欲望の対象とすること。」

!?

はぁ。まったくもう、某アイドル風にブチ切れさせていただけば「エッチだけだと思うなよふざけんな!!」って感じです、いやエッチだってもちろん大事だけど。異性愛の項目でも同じような説明がされているとはいえ、恋愛を男女間に限定したうえでこの言い方はちょっと、あんまりよね。

さて、そんな説明はそろそろ時代遅れよねっていうことでしょうか、近年になって「異性愛以外のあり方を無いことにしない辞書を作ろう」という流れがみられるようになってきました。今回はそんな様子を、

★ 日本語辞典「そういえば恋も結婚も男女間に限らないよね」
★ 英語辞典「法律変わったから結婚の説明に同性婚入れるわ」
★ 中国語辞典「『同志』って言葉を同性愛って意味で使うのは許さない」

以上の流れでご紹介します。

★日本語辞典「そういえば恋も結婚も男女間に限らないよね」
2013年12月、「三省堂国語辞典」の最新版である第7版が発売されました。

その編集委員である飯間浩明氏が、つい先日ツイッターで「『愛』『相性』『色恋』などは、どれも男女に限らないことなのだから説明を見直した」との発言をし、大反響を呼んでいます。


また「結婚」の項目についても、おそらく日本語の辞書として初めて同性婚を含めた説明に書き直されているようです。

 


日本の法律が結婚を男女間のものとしている以上、「海外では同性婚もある」という言い方にとどめるほかなかったのでしょうね。

それでは、同性婚が法制化された国の辞書ではいったいどういう変化が起きているのか、英語を例に見てみましょうか。

★英語辞典「法律変わったから結婚の説明に同性婚入れるわ」

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英語の辞典では、同性結婚の法律をイギリス王室が認めた約1ヶ月後に「結婚(marriage)」の項目が書き換えられました。

イギリスにおいて初めて同性婚も含め「結婚」を説明したのは、「マクミラン英語辞典」となりました(出典:PinkNews)。

同書はもともと結婚のことを「それぞれ夫と妻である二人の人間の関係」と説明していましたが、そこに「もしくは、同性間における同様の関係」と書き加えることで同性婚の法制化に対応したのです。

しかしながら辞書は法律書ではないわけなので、別の辞書では慎重な対応をする動きもありました。

例えば「オックスフォード英語辞典」の編集委員は、同性婚が法制化された直後、「辞書は法律の変化ではなく言語の変化を反映しなければならない」という意見を表明。「結婚」の項目をすぐには書き直さず、単語の使われ方の変化を観察する……という選択をしています。

そんな「オックスフォード英語辞典」も、最新版では「結婚」の項目を「法律によっては同性間も含む」というような表現に改訂しました(原文はこちらから)。同様に「恋愛(love)」「妻(wife)」「夫(husband)」なども、男女に限らない表現に書き換えられています。

とはいえ、法律や辞書が書き換えられたからといって、自分の意見まで書き換えられてはたまらないと感じる人たちもまたいるわけよね。

たとえば「結婚はあくまで男女間のもの」と考える英語話者たちは、いまでも同性婚について書くときに「同性間のいわゆる“結婚”と呼ばれるもの」みたいな表現をすることで抵抗を試みています。

またネット上には、保守派の視点から説明する英語辞書「コンサバペディア」も立ち上がりました。コンサバペディアに言わせれば、結婚とは「神聖な力に定められた男女間の契約であり、一生涯続く」ものであるのだそうで、同性婚のみならず離婚をも否定する内容となっています。

同じ単語であっても、こうやって価値観によって辞書の説明が変わってくるわけよね。そしてその辞書を読んだ人が、またそれぞれの価値観をかたちづくっていくことになる。ところ変わって中国では、「辞書によって人の価値観を操作しよう」とでもいうような動きがありました。続いてご紹介しましょう。

★中国語辞典「『同志』って言葉を同性愛って意味で使うのは許さない」

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中国語では、ゲイやレズビアンらがお互いを呼び合う時に「同志」という表現を使うことがあります。まぁ、日本語の「組合員」にちょっと似てる感覚かしらね。

「同志」はもともと香港や台湾で使われ始めた表現です。大陸側の共産主義者がお互いを「(共産主義的理想にもとづく)同志」と呼んでいたことを、外からからかうような感覚で広まりました。

現在は、共産体制への批判と、性の多様性を認めない社会への批判、そしてちょうど日本のゲイがお互いを「組合員」と呼ぶようなノリがまぜこぜになったようなニュアンスで広く使われています。たとえばアジア最大のプライドパレードである「台湾LGBTプライド」も、現地での正式名称は「台湾同志遊行」です。

そんなに大々的に使われている表現なのに、現代中国語辞典の第6版は2012年、「『同志』という言葉を同性愛という意味で使う事実を広めたくない」ということで説明を省いてしまいました。CNNによればこのことは中国語圏で大きな批判を集め、LGBT活動家のみならず言語学者や一般ネットユーザーからも失望の声があがったとのことです。

中国語辞典は説明を省き、日本語の多くの辞典では恋愛を「男女間のもの」と説明する。こうしていわゆるセクシュアルマイノリティは、社会のみならず辞典の上でもいないことにされている現状があるわけよね。

けれど、マジョリティとかマイノリティとかである前に、私たちはそれぞれ、ここに、存在しています。最後に、中国語辞典の説明省略事件について、中国の出版社に勤める崔岩氏がメディアに語った言葉でこの記事を終えたいと思います。

「彼らが辞書に書かれなかったからといって、彼らが存在しないというわけではない」

(出典:中国新聞網

 

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……ということで、今週も読んで下さってありがとうございました!
どんどん冬めいてくるけれど、あなたはちゃんとあったかくしていらっしゃるかしら? 私は12月頭まで引き続き、日本でお仕事をしています。一時的に妻と国際遠距離恋愛になるけれど、それも含めて楽しもうと思ってるわ。

ちょっと宣伝させていただくと、11月27日発売の芸術評論誌「ユリイカ 2014年12月号 特集=百合文化の現在」にて、百合レズ論争というできれば踏み込みたくなかった地帯について頑張ってエッセイを書いていますのでお手柔らかによろしくお願いします。

それから11月29日(土) の10:30~11:25には、日本テレビ系列「人生が変わる1分間の深イイ話」国際結婚スペシャルがご好評につき再放送です。ありがとうございます! 妻とわたしの生活の様子もVTRで流れます。

こちら2CHOPOの連載でも、引き続き毎週月曜日、あなたに世界の虹色ニュースをお届けしてまいりたいと思いますので、ぜひこれからもよろしくお願いしますね。まきむぅでした◎

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