第83回 レズビアン的妊活生活

 

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秋のピクニックでひざまくら

こゆき:私たちはふたりで子どもを含めた家族になりたいと考えています。『ふたりのママから、きみたちへ』という本を出版しているので、そちらも参考にしていただきたいです。その本の執筆からおよそ一年が経過しているので、今回は「今、私たちが直面している妊活の課題」について書かせていただこうと思います。

《精子のこと》
ひろこ:私たちは精子提供を受けて、妊娠出産したいと考えています。日本ではレズビアンカップルとして生殖補助医療を受けることができません。これは法律で禁止されているのではなくて、日本産科婦人科学会のガイドラインに基づくものです。
先日、不妊治療で有名なとあるクリニックにふたりで電話をしました。レズビアンカップルであることを説明して「妊娠可能かどうか検査してほしい」と予約のためにお話ししたところ、「うちのクリニックは不妊治療が前提となっているので、治療できない同性愛者の方は検査もできません」と言われてしまって。とても残念な思いをしました。

こゆき:そうだね。私たちは検査もすべてカミングアウトして受けたいと思っているので、治療専門でない別の一般的な産婦人科を予約することにしました。
どうして不妊治療が「法的に婚姻している男女の夫婦」を前提としているのか、その必要はなんなのか、きちんと議論を進めてほしいと思います。(事実婚の男女カップルにはまた別の可能性があるようなので、気になる方はお調べください。)

ひろこ:レズビアンカップルとしては日本では生殖補助医療を受けられないので、私たちは自宅でスポイトで人工授精したいと思っています。

こゆき:今はゲイ男性の方から精子提供を受けられないかお話しさせていただいている最中です。詳しくはプライバシーの関係から書けないのですが、これはなかなか大変なハードルで苦戦しているということをお伝えしておきます。

ひろこ:海外の精子バンクを利用するという手もあるのだけど、なんといっても渡航費、滞在費など、経済的な問題が。排卵日ごとに仕事を休んで海外に人工授精を受けに出掛けることは、今の私たちには現実的にはない選択肢だよね。海外の精子バンクから精子を輸入して日本の医療機関で人工授精するという選択肢もないわけではないけれど、やはりレズビアンカップルとしてはできません。レズビアンカップルとして精子バンクを利用して人工授精するには、実際に海外に行かなければなりません。

こゆき:残念だけど、私たちにはそれは無理だね。専門的なやりとりを英語でしなければならないので、通訳の方もお願いするとなると、大変な費用がかかることになるよね。

知り合いの男性から精子提供を受けるというのは本当に大変なことです。いろいろな課題もあります。でもそうやって妊娠出産したレズビアンカップル、レズビアンファミリーがすでに日本にもけっこういること、そして生まれてきた子どもたちが幸せに育っていることは、ぜひ知っておいてほしいです。

《経済のこと》
こゆき:お金のことは差し迫って大変だよね。私は自由業だから、いい月もあれば、「(もし子どもがいたら)これで3人で食べていくのか…」ってじっと手を見ちゃう月もあるからね…。産む前後の何ヶ月かお仕事できなくて、その間わたし無給って、…ヤバくないか!?

ひろこ:私はフルタイムで働いている会社の社会保険があるから、出産・育休の給付金があり、それはとても恵まれていると思います。

こゆき:非正規雇用などで国民健康保険加入の女性は出産期のお金のことが本当に大変だよね。女性の半分が非正規雇用なのに…。自治体によるけど、出産自体には手当があっても、その間もなんとか食べていかなきゃならないし、その後は育てていかなきゃならない。

ひろこ:そうだよね。この点は、男女で賃金格差がある現状で、女性ふたりのカップルの場合は大変になる場合もあるよね。

こゆき:私たちはどちらも出産したいと考えているので、固定でどちらか一方が働いてお金を稼ぐ人、どちらか一方が家事や育児を担う人、という分け方ではなくて、その時々に合わせて対応しようと話し合っています。
例えば、まずひろこさんが先に出産できればと思うのでその場合は、

ひろこ産休中→こゆき働く
ひろこ出産後→フルタイムの会社に復帰、こゆき育児メイン

ひろこさんが自宅でも働けないかとか、私は時間が自由になるお仕事のご依頼を中心にお受けできないかなどなど、フレキシブルにできればと思います。
あ! この本を読みながら想像していました。

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『きみは赤ちゃん』(川上未映子/2014年 発行/文藝春秋)

私が出産する場合は、何年か先になると思うので、そのときの状況に合わせてふたりで考えようと思っています。

ひろこ:どのみち経済的にはなかなか大変だけど、これまでもなんとかしてきたのだし、協力してがんばっていこうと思っています。

《私たちに向けられる言葉のこと》
こゆき:カミングアウトしながら妊活していると、いろいろ言われます。「カミングアウトしながら」というか、メディアに出たりソーシャルで発信しながら…だからだと思うけど。

ひろこ:そうだね。まぁでもそういうことも織り込み済みで、ふたりで話し合って決めてやっていることだから。

こゆき:といっても、なにもネガティブなことばかりじゃなくて、励まされることも本当に多いし、来年放送予定の密着取材も今から楽しみだよね。はぁ(溜息)、でもそこには妊活で一喜一憂する、情けない私が映っているわ…。

ひろこ:妊活って初めてのことだし、わからないこと、うまくいかないこともたくさん。不安になったり、ときには泣きたくなることも。しかも同性カップルへの理解がまだまだ不十分な中では心ない言葉が向けられることもあります。でも、セクシュアリティに関わらず、多くの妊活中の女性は悩みながらだと思うんです。女性も男性も、セクシュアル・マイノリティもそうでない人も、もっと女性の産む/産まないについて考えてみてほしい。子どもを持つ/持たないについて女性を追いつめるような言葉は本当に残念なことだと思うんです。子どもを持たない人生ももっと尊重されるべきだと思うし。

こゆき:「子どもを持つ」という選択を、結婚したからとかしてないからとか、同性愛だからとかそこだけではなくて、「人として人を育てさせていただくこと」として真剣に考えてみてほしいと思います。

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