第13号 遺言は性的マイノリティの必須知識~「もしも」に備える 同性カップル編⑦

「もしも」に備える〜同性カップル編。結婚制度がない同性カップルのあいだで、一方が亡くなったときの相続を心配するかたも多いですね。2人でお金を出し合ったマンションなどがあると、とくに心配。でも、遺言があれば、ちゃんと財産を引き継ぐことができます。同性婚がないとネットのまえで嘆くより、まずは遺言を書きましょう!

 ●遺言で自分の遺志を実現できる

ものにはすべて所有権があります。所有者が死亡したとき、その所有権はどうなるのか? 法律では、その人の所有権は死亡の瞬間に、決められた人に、決められた割合で、瞬間的に引き継がれることに定めています。決められた人のことを法定相続人といい、決められた割合のことを法定相続分といいます。
自分が死んだとき、だれが法定相続人になるのか。まずきちんと押さえましょう。

親ときょうだいが残る場合、親が相続人になります。両親間での相続分は均等です。

きょうだいだけが残る場合、きょうだいが相続人になります。きょうだいのうちすでに死んでいる人がいて、その人に子ども(自分から見て甥姪)がいるばあい、甥姪も相続人になります。複数きょうだい間での相続分は均等で、甥姪はその相続分をさらに甥姪の数で平等に相続します。

しかし、自分が死亡したときには法定相続人以外の人に渡したいとか、法定相続分とは違う割合で相続してもらいたいという希望がある場合は、ぜひ、遺言を書いてほしいと思います。たとえば、「私のマンションは、親族ではなく、(法律的には規定がない)パートナーに引き継いでもらいたい」という希望も遺言で実現することができ、たとえ親族が出てきても対抗することができます。遺言は、まだ法律の規定がない同性カップルにとって必須知識とさえいえます。

もちろん、カップルにかぎらず、おひとりさまについても、「私の預貯金は、カムアウトした私を虐待した姉ではなく、理解し支えてくれた妹に全部、渡したい」とか、「私に万一時は、このワンちゃんの世話と引換えに親友に貯金をあげたい」などにも、遺言が活用できます。法定相続人であるきょうだいを一代飛ばして、直接、甥姪に渡してあげたいおじバカ・おばバカなかたの場合も、遺言が活用できます。

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マンションなどの資産がある場合は、ぜひ遺言を作りましょう!

 ●遺言でできること、その方式

遺言でできることは、性的マイノリティにかかわりそうなことでは、

財産の処分の指定(生命保険金の受取人の変更も含む)
遺言執行人の指定(死んでいる自分に代わって遺言内容を実現してくれる)
祭祀主宰者の指定(親族に先んじてお葬式やお墓の主導権をとれる)

です。「みんなで仲良く暮らしてください」などは遺言にはならず、あくまで法律的内容に限ります。
財産には、預貯金、有価証券、不動産、生命保険金請求権、家財・自動車、債権(他人に貸してあるお金の請求権)、そしてマイナスの財産とも言われる債務(借金・ローン、保証人債務も)があります。

遺言は法律(民法)で方式が決っており、それに違背したものは無効になります。私たちが通常、知っておきたい遺言は2種類—-自筆証書遺言公正証書遺言です。

自筆証書遺言は全文を自分で手書きし、日付、氏名、押印する、が要件。それだけで、法律的に有効な遺言が自分で書けます。でも、パソコンで書いて署名だけ自筆、では無効です(私はよく、「民法ができた明治時代には、まだパソコンがなかったから」と言って笑わせます)。
メリットは、かんたん、無料、何度でも書換えできること(相手が変わるたびに書換え可!)。しかし、デメリットは、死亡後、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要なこと。これは、遺言の形状等を確認する証拠保全的な手続きです。検認を経ないと、その遺言状は名義の書換えなどに使えません。あと、個人が作るので内容が不明確、真偽が疑われる、紛失や発見されない場合もありうる、などが懸念されます。

一方、公正証書遺言は、公証役場で専門の公証人に作成してもらう遺言です。メリットは、公証人が作るので信頼があり、検認不要、そのまま登記や名義変更に使えること。原本は公証役場で保管され、本人には謄本が渡されるので、紛失や火事で滅失ということもなく(再発行可能)、作成したことがわかっていれば、死後も照会に応じてもらえます。一方、デメリットとしては、作成手数料がかかる(財産の価額による)ほか、証人2名が必要、公証役場に何度か出向く、などがあります。行政書士などに相談・仲介してもらえば、別にそのぶんの報酬も必要です。

公正証書や公証役場については、第1号でもくわしく解説しましたので、ぜひご参照ください。

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弊事務所で作成したゲイのかたの公正証書遺言。自分に万一の場合は、ちゃんとパートナーに不動産を渡すことができます。

 ●同性カップルにとっての遺言作成のコツ

同性カップルのライフプランのための遺言について、作成のコツをあげてみましょう。

自筆証書と公正証書、どちらがいい?
死は、発病や事故などでいつ訪れるかわかりません。そのとき紙一枚でもあるのとないのとでは、法律的な意味がまったく違ってきます。
若いときや、まだ財産が少なかったりパートナーとの関係も始まったばかりのときは、拙著や当事務所のセミナー
、ウェブ情報などを参考に、自筆証書遺言を書いておかれるのがよいでしょう。自分で書いたものが不安な場合は、当事務所の「遺言の作成指導」などもご利用ください。
パートナーシップが安定し、とくに不動産など一定の資産がある場合には、若干の費用がかかっても公正証書遺言を作成しておかれることをお勧めします(親族への対抗やその後の手続きがラクなど)。作成にはみずから公証役場へ出向いて相談して問題ありませんが、第1回にも書いたように公証人にはいろいろな先生がいらっしゃいます。余計に費用はかかりますが、セクマイの事情に通じた当事務所など専門家に相談していただけると安心です。

受遺者とよくよく相談する
遺言はあくまでライフプランニングのために作成するので、遺贈される相手(受遺者。パートナーなど)とよく相談のうえ作成してください。死後、突然出てきた遺言にパートナーがあわてるようでは困ります。保管場所や検認手続きのこと、親族の連絡先なども、よく相手に説明する必要があります。

遺留分の知識をもつ
すべてをパートナーに遺贈しても、親には3分の1の遺留分の権利があります。親がそれを放棄してくれれば問題ありませんが、対抗策の準備が必要な場合もあります。3千万の不動産しかない場合、1千万を請求されても現金がないと、最悪、せっかく残してくれた家を処分して……ということも。親存命中の遺言作成は、専門家等によく相談してみましょう。なお、きょうだいには遺留分請求権はありません。

確実な執行のために執行人を指定する
不慣れな受遺者(パートナー)にかわって、検認手続きや親族との紛争処理、相続手続きなどをしてもらうために、慣れた専門家を遺言執行人として頼んでおくことも一案です。当事務所で作成させていただいた遺言の場合、ご希望があれば私が執行人になることも可能です(遺言執行人の指定も遺言で行ないます)。執行人が指定されていると、万一、親族が勝手に行なった財産処分(名義変更など)があっても無効になるので、より安心です。

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事務所の業務案内パンフレットもご用意していますので、お気軽に弊社事務所HPからご請求ください。

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