おすぎさんにキスをされた話―①

 

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某知人男性Aさん(ストレート)が或るバーに入ったところ、たまたまそこがおすぎさんの行きつけで、店の人に紹介され、酔ったおすぎさんに何度もキスされたという。

その場の流れで(というのも変な話だが)私をおすぎさんに紹介したいという話になったようで、後日私はAさんとともにそこに行き、おすぎさんにお会いしました。ごく最近の話です。

まず私くらいの世代より下は、少なくとも当事者の中では、ゲイと私みたいないわゆる性同一性障害(私はこの呼び名が嫌いなのだが、ほかにちょうどよい呼び名がない)が比較的くっきり分かれています。しかし、おすぎさんの世代の方々となると、世間的にはもちろん本人の自認さえ一緒くたという印象がありました。そういった時代に生きてきた方とお会いするというのは緊張もあったし、不安もありました。特に「何度もキスをされた」という話。正直なところ「昔のオカマ的なノリ」に乗せられるのは私が非常に不得意とするところで、そこに引きずり込まれたらどうしようと懸念していました。しかし断るというのも野暮すぎるし、なにより興味のほうが勝って、私はおすぎさんにお会いすることになったのです。この段でものすごく失礼なことを書いているのは承知しておりますが、とりあえず読んでください。

私たちのしばらく後に、仕事関係の数人とともに店に入ってきたおすぎさんはすでにだいぶ酔われていて、いきなりAさんに抱きつき、口と口でキスをしました。彼は特に抵抗するでもなく(かといって積極的にではないですが)何度もキスをされました。

私はここで、おや、ちょっと思っていた感じと違うぞ、と思いました。

キスを迫るおすぎさん、必死で抵抗するストレートの男性、結局キスされてオエー、みたいな、先述した「昔のオカマ的なノリ」の寸劇をどこか思い浮かべていたのですが、まったくそういう感じではない。

Aさんは私のことをおすぎさんに紹介しました。私は、この場ではやはりどこか仲間意識のようなものもあり、彼の紹介を補足する形で、すでに手術済みであることや戸籍も変えていることなども説明しました。すると、おすぎさんは柔らかい口調で「体調は大丈夫なの?」と。

なんと、第一声で体調を気づかってくださった。

性器を切除する手術は著しくホルモンバランスを崩すため、体調にもメンタルにも不調を来すことが多いけれど、私の場合は術後7年も経っているし、処方薬でホルモンを補っているので大きな問題はない。「もうだいぶ前のことだし、元気にやってます」などと私は返し、そして、じんわりと感激が広がっていくのを自覚しました。私の過去の手術などのことを話したときに、最初にこんなふうに体調を心配してもらったことはただの一度もなかったのです。

 

つづく

 

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