おすぎさんにキスをされた話―②

 

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私が「オカマだけどOLやってます。」というブログを書き始めたのは26歳の頃でした。当時、近いうちに性転換手術をしようと思ってお金を貯めていたけれど、手術は夢というより自分にとっては義務で、こんなことに百万ほどの大金をつかうということに私はどうも納得がいっていませんでした。ひとつ、このことをネタに同じくらいのお金を稼がないと割に合わない。本でも出してみようか。いまちょうどブログ本が流行っているから、ブログで内容を書きためてみるか。……ということで始めたのが件のブログでした。あえて「オカマ」という自虐的な言葉をタイトルにしたのも、それがいちばんキャッチーだと思ってのことです。結果として、ほぼ思惑通りブログは書籍化されました(思惑と違ったのは売れ行きです。もっと売れると思ってた……)。

しかし、当初私は物書きで生計を立てようなどとは露ほども思っていず、本を一冊出して印税を稼いで終わりというつもりでした。何社からも書籍化のオファーがあったため、それが別の文筆の仕事に発展し、しまいにはそれが生業となるとは思ってもいませんでした。

ところで私は、はっきり言って自分がこういうセクシュアリティであることにまったく誇りがありません。世間的に恥ずべきことだとは思っていないけれど、自分自身は恥ずかしく、できれば隠したいと思っていて、いまだにその気持ちに折り合いはつかないのです。だから、こういう仕事が生業になると分かっていたならば、本当はデビュー作以降ペンネームをすぐ変えて、デビュー作を隠して女性として仕事をしたかった。しかし、オファーをくれる方々は私の名前で仕事を頼んでくれているから、いきなり名前を変えるわけにもいきません。

こうして、私はプロフィール上のデビュー作「オカマだけどOLやってます。」を隠さずに仕事をすることになりました。それでも「元男性」まして「オカマ」という属性は非常に恥ずかしいため、セクシュアリティをネタにした仕事はほぼすべてお断りし、もちろん、メディアに出るステレオタイプな「オカマ」像に合わせることも断固拒否しました。

「元男性」の事実を意地で隠したりはしないが、不必要なところではそれを記さない。このスタンスで活動してみると、意外と周りは受け入れてくれました。幸い、その後に出したセクシュアリティと無関係の著書も多くの人に気に入ってもらえ、私の「元男性」という属性を知らない人も増えました。しかし逆に、そのせいでまだ私はデビュー作との折り合いがつけられず、わだかまりが解消せずにいます。

で、おすぎさんに話は戻る。

 

つづく

 

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