第14号 養子縁組のホントが知りたい~「もしも」に備える 同性カップル編⑧

●同性パートナーシップ保障としての養子縁組

 今回は養子縁組についても考えてみましょう。

 養子縁組をして法律上の親子になってしまうことで、法律上は規定のない同性パートナー間に法律関係が成立し、さまざまな壁に阻まれてできなかったことが家族として可能になるのが養子縁組の「メリット」です。
 日本では双方が成年であれば、自由に養子縁組できます。未成年者を養子とする場合は家庭裁判所の許可が必要であり、養親はかならず成人(20歳以上)であることが必要です。年上を養子とすることはできません。

 養子縁組をするには、必要書類を揃えて役場の戸籍窓口で養子縁組の届出をします。また、成人2人の証人が必要です。頼める人を探しておきましょう。届は、不備がないかぎり役所は受理しなければなりません。
 逆に、養子縁組を解消するときは、離縁ができます。離縁について話し合いがこじれた場合は、家庭裁判所に申し立てて調停を行なうこともできます。婚姻の解消である離婚と同様です。

  同性婚制度がない日本で、養子縁組が、一種のバイパスもしくは緊急避難策として利用されてきたのは事実です。「いまはこの方法しかない」と選択するカップルもいれば、そもそも対等であるべきパートナーシップに親子というタテの関係を持ち込む養子縁組はおかしい、と抵抗感をもつ人もいます。
  さらに現民法は、養親子の関係にあったものは、離縁をして親族関係を終了したあとでも婚姻することができないと規定しています(民法736条)。遠い将来、日本にもしも同性婚の制度ができたとき、養親子関係にあったことはリスクとなる、と考え、「自分(たち)は養子縁組をしない」と言う人もいます。

  ただ、私はその場合は養子縁組無効確認の裁判をする余地があると思いますし(パートナーシップのための養子縁組は、本来の養子縁組の意思はなかった、と)、そもそも同性婚を立法しようというときには、代替策として養子縁組していた人たちへの配慮条項も盛り込まれるべきでしょう。

 いま、どうしてもパートナーシップを法的なものにする必要があるなら、遠い同性婚をおもんぱかって現在の不利益をがまんするのも考えものとは思います。


現民法(736条)では、養親子間での婚姻は禁止されていますが、同性婚法制ができるときには、対処策がとられることを期待します。


●メリットは、すべて家族としてOKになること
 
 ここで養子縁組のメリット・デメリットを、整理しておきましょう。
 養子縁組すると、税金や社会保険においてすべて家族(親子)として取り扱われ、一方に収入がない場合、扶養家族として税金の扶養控除を受けたり自分の会社の健康保険を利用させたり、自分が死んでも厚生年金から遺族年金などを受給させることができます。
  「家族(親族)」を条件とするサービスや商品を購入することもできます。生命保険金の受け取り人に指定できたり、携帯電話その他の家族割り引きサービスな どを購入(申し込み)できます。都営や区営などの公営住宅への申し込みも受理されるし(当選できるかはわかりませんが)、民間賃貸住宅への同居もスムーズ に契約できるでしょう。住宅ローンの共同ローンも組める可能性が高い。
  また医療や介護等の場面で、保護者として、あるいは意志決定の代行者として見なされます。すなわち、医療現場での看護(面会)や病状説明での同席、本人重 篤時のキーパーソンとして、医療者等の理解が得られやすい。ただし、認知症や植物状態など本人の判断能力が失われたときの法律行為(財産処分や契約など) の代理は、家族(親子)だからといって無条件にできるわけではありません。1親等(親子はおたがいに1親等)の親族として法定後見を申し立てて後見人となるか、あらかじめ両人間で委任契約や任意後見契約を交わしておくことも大切です。

 一方が死亡した場合、法的な親族として相続が発生します。遺言がなく突然亡くなることがあっても、法定相続人として本人の財産を引き継ぐことができます。


個人情報保護の問題から、医療の場から締め出されがちな同性パートナーですが、法律上は親子ということで医療者の理解が得られやすいでしょう。もちろん医療意思表示書でクリアする方法もあります。(イラスト:キャミー)


●親族とのトラブルには、注意が必要
 
 一見、万能のような養子縁組ですが、デメリット(?)なこともあります。
 縁組みすると、養子は養親の氏を称します。パスポートや健康保険証、銀行その他の届けなど、さまざまな公私にわたる書類・届けの苗字の変更を余儀なくされます。当然、勤め先等にも告知が必要でしょう。

  近年、養子縁組が悪用される事例があり(ネームロンダリングして携帯や銀行口座を開設→転売など悪用)、不自然に年齢の近い養子縁組は窓口で確認するよう法務省が通達したり、窓口での確認を義務づけた条例を定めた自治体もあります。むしろ、そのさいには自分たちは同性カップルであり、現行法上この方法しか ない、と主張することが有効かもしれません。同性カップルであることはなんら違法ではなく、担当者に悪用でないことがわかればいいのですから。

  とはいえ、本来の目的(親子関係の創出)とは別の目的で制度を使うことが、いざというときに争いとなる可能性は、皆無とはいえません。養親が亡くなった場 合、養子にはすべての相続権がありますが、突然現れた養子をまえに、養親がわの親族とトラブルにならないとも限りません。また、生命保険金の支払い時に保険会社が疑いをもつ可能性も、なきにしもあらずです(担当者等に事前に説明が大切)。

  また、養子側が先に亡くなる「逆縁」もありえます。その場合、養子自身の財産には、養親のほか元の父母も相続人となり、相続人は3人となり、その権利は均等です。相続手続きを進めるさいは、パートナーである養親は養子がわの実父母と交渉する必要があり、養子縁組の事実を知らない場合は困難な事態の発生も予 想されます。それぞれの父母が存命の場合の、万一時のシミュレーションも大切です。
 諸外国に比してかんたんにできる養子縁組ですが、事前に同性カップルの事情に理解のある専門家に相談してみることもお勧めします。
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東京の豊島区では養子縁組に窓口を訪れたすべての人に、一律に確認を求めることが条例で定められました。暴力団などの違法行為対策のためです。

【編集部より】著者繁忙のため来週(12/16更新)の「老後の新聞」は休刊します。悪しからずご了承ください。

 

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