第37回 ホモは死して何を残すか? 無名のホモが残した「オカズ帳」

 

早いもので、もう12月。年の瀬である。年末である。年末といえば、大晦日。大晦日といえば、やはり『女装紅白歌合戦である。のっけから宣伝めいていて恐縮だが、私はいまから戦々恐々としているのだ。というのも、今年はなんと、私が総合司会なのだ。前回出場したときは、わずか30秒。舞台で“でんぐり返し”をしただけ。というのも、その頃、このイベントはミッツ・マングローブがすべてを仕切っており、アイツから突然、電話がかかってきた。開口一番、「マーさん、森光子やってくんない?」だって。どうせ、人のことを年寄り扱いして笑おうという魂胆なのは、すぐに分かった。でもね、可愛いミッツの頼みである。むげにはできない。他のカウントダウンイベントの仕事が入っていたが、引き受けることにした。おかげで、登場して“でんぐり返し”→すぐに別会場へ移動という、レコ大→紅白をかけ持ちする芸能人のような忙しさであった。
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「第13回 2丁目 女装紅白歌合戦」日時/2014年12月31日(水)20時〜、会場/新宿2丁目・AiSOTOPE Lounge、料金/3500円 1ドリンク付。詳細は、http://aliving.net/2014-countdown/aiso/aiso2014.html
ところがである。私が“でんぐり返し”して間もなく、森光子が死んだ。あれほど元気そうだった、森光子が死んだ。笑うどころではない。巷では、私の“でんぐり返し”の呪いで死んだと噂が流れた。まるで私が殺したみたいじゃないか。まったく、縁起でもない(笑)。ところが、今年の9月、2CHOPOに『第25回 総勢50名のホモがすっぱ抜かれた。これが、芸能界男色相姦図!という原稿を書いた。この中で、高倉健ホモ疑惑についてふれた。そしたら、死んだ。高倉健が、死んだ。ひゃ〜〜〜〜っ、私のせいか? またも巷に、変な噂が流れる(笑)。ということで、健さん追悼の気持ちを込めて、この曲を紹介しよう。

詞/寺山修司、曲/クニ河内、唄/川筋哲郎
これは、寺山修司が監督した映画『書を捨てよ町へ出よう』の劇中歌。ハッテン映画館に集まるホモ達が、ゲイ・アイコンであった高倉健への愛を歌ったものである。いま聴いても胸に迫る。名曲である。
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CD『書を捨てよ町へ出よう』サントラ(ビクターエンタテインメント/ASIN B00005GXA5)
今年の『女装紅白』でも、主催者から“でんぐり返し”をしてくれと政治的な圧力をかけられている。さて、どうしたものか。また誰か死んだら、やだなぁ。でんぐり返るべきか、でんぐり返らないべきか。戦々恐々としているのである。まったく縁起でもない(笑)。
私はこの連載で、毎回毎回、歳取っただの、死が近いだの、縁起でもないことばかり書いている。紹介する本も、人が死んだり、殺したり、ろくでもない本ばかりだ。そもそも古本は、死に馴染みの深い存在である。それが証拠に、死んだ故人の蔵書が処分されて、古本屋に買い取られることも多い。古本のかつての持ち主が死んでしまっていることは、ざらなのだ。私がホモ本の収集に手を染めたのも、とある人物の遺品整理で貰い受けた数冊のホモ雑誌がきっかけだった。その人物とは、『薔薇族』や『さぶ』など、ホモ雑誌の表紙を手がけていた人気のイラストレーター 木村べん氏である。彼が亡くなったときに、遺族が、絵を描く資料にしていたのであろう男性ヌード写真集やホモ雑誌を捨てようとしたのだ。故人の近しい友人のひとりが、それは忍びないと思い、私に貰ってくれないかと言ってきた。捨てられてしまうぐらいなら、と、引きとったのが始まりであった。遺族にしてみれば、男の裸の本を後生大事にしていたと世間に知られてしまうのは、故人の恥になると思ったのか。ホモだと知られてしまうことは、一族の汚点だとでも考えたのかも知れない。彼の世代や、彼の家族たちの世代では、無理からぬこと。責める気持ちにはならないが。それでも、彼が大切にしていたホモ蔵書が捨てられてしまうことは、彼がホモとして生きた証が失われてしまうことではないのか、とも思えたのである。ホモ画家としての名声も、確たる地位もあった木村氏でさえ、そうである。名の知れぬ一般のホモ達は、なおさらであろう。死んで、遺族が遺品整理をしていてホモ本が出てきたら、真っ先に処分するはずだ。無かったことにするはずだ。それは、とりもなおさず、その人の人生を隠蔽し、ホモじゃなかったことにする作業である。それじゃあ、あんまりじゃないか! 私はそれから、古いホモ本を買い漁り、それらの持ち主であった無名のホモ達の思いを、生きた証を、次の世代のホモに語り伝えていこうと思い立ったのである。
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というわけで、今回紹介するのは、これ。正確には「本」ではない。アルバムだ。どこで、どうして、古本屋のもとに渡ってきたのか不明だが、アルバムやスクラップ帳といった「紙もの」が店先に並ぶことがある。遺品整理で一切合切の蔵書を古本屋に売り払った中に紛れていたのかも知れない。これも、そうした一冊だ。なにはともあれ、なかを見てもらおう。
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アルバムは「コクヨ」の「FREE ALBUM」という商品で、現在も売られているロングセラーである。それに、雑誌から切り抜いたのであろう男性ヌード写真やイラストが、美しくレイアウトされ貼り込まれている。おそらく1960〜70年代のものだろう。元の雑誌は、これも推測の域を出ないが、風俗奇譚』や『奇譚クラブ』のようだ。そこに混じって、何枚かの生写真がある。もちろん、白黒写真である。エロ雑誌の通信販売で売られていたものであろうか。
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エロ本には、きまって通信販売の広告が出ていた。そこで「ホモ㊙写真」が売られていた。これは、70年代初頭の雑誌より。
これはもちろん、オカズ帳である。みうらじゅんも大喜びだ(笑)。大量のエロ本そのままだと、家族に見つかる心配もある。お気に入りだけを選りすぐり、アルバムにすることで偽装工作を図ったのだろう。しかも、当時のエロ本は、SM、女装、ホモが混在していたため、邪魔な女のヌードなどは除外して、男の裸だけをコンパイルしたのだろう。涙ぐましい努力が感じられる。そういえば、私も『薔薇族』や『ドンのお気に入りモデルだけを集めて、スクラップ帳を作ったことを思い出した。もっとも現代の若者達は、オカズといえばネットだ。切ったり貼ったり、そんな手間をかけてオカズ帳を作った経験などないだろう。さしずめこのアルバムは、お気に入りブックマーク集だと思ってもらえば、わかりやすいかもしれない。
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よく見れば、雑誌の切り抜きではなく、コピーを貼り込んであるページもある。どうしたことだろう? もしかすると、友人知人から借りたエロ本をコピーしたのかも知れない。当時は、男の裸の写真など、そうそう手に入れることは難しかったのだ。貴重品だったのである。それに、今のようにコンビニで気軽にセルフコピーなど出来るわけでもなかった。原稿を店の人に預けて、コピーを取ってもらうのが普通だったのだ。まさか男の裸の写真のコピーを頼むことなど出来なかったに違いない。皆が帰った後で、会社のコピー機をこっそり使ったのかも知れない。だとしたら、当然、男の裸の写真をコピーしていたことがバレれば、会社をクビになったであろう。そんなリスクを犯してでも、作者は、このオカズ帳を完成させたかったのである。そんな熱い情熱が伝わってくる。
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全部で17ページ足らずのアルバムだが、とても見応えがある。見開きのページごとにテーマに沿って写真が選ばれており、この見開きは外人モデルだけ、とか。この見開きには、SMっぽい写真だけ、とか。それが、余白を生かした余韻のあるレイアウトで、ページをめくるごとに緩急が生まれる構成となっている。このオカズ帳の作者は、デザイン感覚と編集能力に優れた人物であったのだろう。もしくは、好きこそ物の上手なれ、か(笑)。
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人は誰でも、一生のうちに一冊の本を書くことが出来る、という。どんな人生であれ、それを真摯に書き綴れば、立派な「本」になるというのだ。このアルバムは、まぎれもなく故人の「本」である。嘘偽りのない、故人の内面が綴られているではないか。私の蔵書の中でも、もっとも貴重な一冊である。虎は死して、皮を残す。この人は死して、オカズ帳を残した。さて、私は死んでなにを残せるのだろう。せめても、集めたホモ本蔵書だけでも後人の役に立つ形で残していきたいものである。

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日時/2014年12月13日(金)23時〜、会場/原宿・Ucess The Lounge、料金/2500円 1ドリンク付。詳細は、https://www.facebook.com/events/1506795602924857/?source=1

 

大晦日の“でんぐり返し”までにもイベント出演が目白押しで、七転八倒の大忙しだ。まずは、つい先ごろDJ活動20周年を迎えたDJ Tomo Asahinaの「The CIRCUS」が、12月13日(金)。その名の通り、数々のパフォーマーとDJ陣が繰り広げるエンターテインメント性溢れるパーティだ。オカマはLady-Jと、私。

 

 

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日時/2014年12月26日(金)23時〜、会場/新宿2丁目・doop Tokyo、料金/3000円 1ドリンク+イエーガー・マイスター付。詳細は、https://twitter.com/doopugly

そして、12月26日(金)は「UGLY」。大阪からナジャ・グランディーヴァとFoxy-Oを迎えての、絶品ショウケースを堪能して頂けるイベントだ。迎え撃つは、ディタ・スターマイン、エンジェル・ジャスコ、ダイアナ・エクストラヴァガンザ、マルガリータ、オナン・スペルマーメイドと、私。オカマてんこ盛りでお届けする女装忘年会である。

 

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