LGBT映画『カミングアウト』犬童一利監督2CHOPO独占インタビュー

 

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初日舞台挨拶から数日後のとある日、ご多忙の合間をぬって、犬童一利(いぬどうかずとし)監督(28)に2CHOPO編集部までお越し頂きました。LGBT映画『カミングアウト』にかける思い、撮影秘話、役者さん達の素顔や、今後撮ってみたい作品の話など、あんな話、こんな話を伺ってみました。最後には最新上演前後トークショー情報もあります、お見逃しなく。

―今回もLGBT映画を撮ったのはやはり前作の映画『SRS♂ありきたりなふたり♀』の影響が強かったのでしょうか。

僕、実は今回の『カミングアウト』を撮るまでLGBTという世界を全く意識していなかったんですよね。前作は性同一性障害のアーティストの恋愛の話でして。知人の音楽会社にMtF当事者の方とストレートの男性のソロアーティストがいて、お二人が付き合っていたんです。そこの社長に彼らの実話を基にした作品を撮れないかとオファーをして頂いたのがきっかけで。ただそのお二人の物語を映画にした、という意識でした。どうなんでしょう、影響していたんですかね?

—ではなぜ映画『カミングアウト』ではゲイにフィーチャーしたのでしょうか。

今回の『カミングアウト』はLGBT映画を撮ろうと最初から考えていたわけでないんですよね。さらに僕、友人にゲイがいたわけでもなく、LGBTを題材にしてくれと頼まれたわけでも、二丁目好きの友人がいたわけでもなく、LGBT映画という概念が無かったとさえも言っていいくらい(笑)むしろ前作を撮るまで、僕の周りにオープンなLGBTの人が一人いませんでした。
その中で、なぜゲイ、LGBTに至ったかと言うと、2012年の年末から2013年の頭にかけて、まずは『日本の今を切り取る』という漠然としたテーマが出来たのです。その中でまず、自分自身と向き合うことを描こう、と行き着き、僕自身の周りの人たちと話すようになりました。そしたら、ぼくらの世代はネガティブなことばかりいうなって。不況だとか、政治がよくないだとか。それにも関わらず、特に何かを変えようと動いてる人は僕の周りにはあんまりいなくて。まあ、言うだけ、というよりは誰かが良くしてくれるだろう、いつかよくなるだろう、という感じの、よくわからない希望にとらわれていて。なんか日本て割と裕福な国だからですかね。親がいて、義務教育行って、高校、大学と行って、社会人になれて、レールに乗ったらある程度しあわせ、な人が多い。けど、なんか自分の中でモヤモヤしたりとか、いつかなんかやろうと思ってることとかもあったりして。ちょっと不満もある、けどそこそこ幸せだから、自分自身と本気で向き合わなくても生きていける、それがしばらく続いたのが今の日本の不健全な原因かな、と色々と考えて。
で、その時に結局自分自身と本気で向き合うことが足りてないんだな、と。そこからいろいろ自分の中でさらに考えまして。本当に自分自身と向き合うことっていっぱいあると思ったんですよ、ただの異性愛の告白とかももちろん、例えば学校の中で自分の好きな子に告白するてのもそうでしょう。いろんなこと考えて。自分と向き合う、社会と向き合う、その他と向き合うということを一番突き付けられてる存在は何かと考えたときに、LGBTなんじゃないかって。それから最終的に行き着いたのが同性愛者でゲイの男の子が、好きな親友や家族にカミングアウトするという話だったんです。
また、ストーリーや作品のイメージが湧きやすかったというのと、前作がやっぱり潜在的に影響されていたのかもしれませんね(笑)

―映画が公開されてからの反響はいかがですか。

表参道のスパイラルホールにて開催された第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭上映作品の反響が非常に大きかったです。一回限りの上映だったにも関わらず、約400名以上のお客様にお越し頂けました。また、11月末の劇場公開初日も満員になりました。脚本の執筆に当たり、取材など数々のご協力を頂いた東京のゲイ・タウンとして知られる新宿二丁目関係者、LGBT団体や活動家の皆さまも会場まで応援に駆け付けてくださいました。
映画のエンドロールが終わると皆さま拍手をしてくださって。目頭を押さえている方が多くて。これは本当に嬉しかったですね。なかでも一番印象的だったのは「すごい泣いちゃいました」と、僕のところに挨拶に来てくれる方がいたのですが、「今まで知らなかったことが知れて、新しい気付きになりました」と涙ながらに話してくださって。この映画の本質的な部分。僕が描きたかった「いつかなんてやってこない」「今向き合うこと」が伝わったんだな、と。それが素直に嬉しかったですね。
今回、たくさんの反響を頂きましたおかげで、全国上映が決定致しました。まず12月19日まで渋谷で上映されて、今後は地方都市で合計6館、12月下旬と1月下旬から、2~3週間ずつ公開が決まってます。劇場公開後には、自主上映で全国を回って行きたいですね。僕の実家が函館なので函館でもやれたらいいな、と。 また、ろうの方に向けた日本語字幕を付けて欲しいというご意見も頂いていますし、なるべくひとりでも多くの方にみていただきたいと思っています。ちなみに海外の映画祭にも出して頂きました。国によって受け取られ方も違うだろうと思いますし、世界中の方に『日本のを切り取った姿』を観て頂きたいと思っています。

※上映情報はこちらの公式サイトをご確認ください。

―今回の『カミングアウト』の出演者の方についてお伺いできればと思うのですが。

キーポイントとなる役に「赤間 陽」と「緑川 昇」といるんですけど。彼らを演じた髙橋直人くんと岡村優くんは同じ事務所、スターダストプロモーションの所属なんですけども、この二人は映画の役と彼ら自身のキャラが非常に似てるんですよ。岡村くんは「昇」みたい明るくて、誰ともいろんな話が出来て、兄貴肌で面倒見も良くて。髙橋くんは「陽」みたいな感じでマイペースで、すごく自分の世界を持っている。それぞれの役にぴったりで。なかなかローバジェットの映画だったので、結構、ご自前の衣装とかもご協力してもらって。割と持ってるものがそのまま当てはまるような感じ。

 主演の髙橋直人くん。非常に良かったですね。周りからの評判も良かったです。彼のお芝居は一番この映画で重要なポイントでした。クランクイン前に一週間稽古期間があったのですが、他の役者さんが入れ代わり立ち代わりななか、クランクイン直前まで彼は毎日稽古に取り組み。彼なりにちゃんとお芝居のプラン、というか役の心情とか持って来てくれたので本番でも安心して任せられましたね。「細かいこと言われなくてもわかるよね?」みたいな会話が交わされるようになりました。
女性陣も、小さい頃からやっていて、大きい映画の主演もやってたりするので、安定感もありました。当事者の方3名は、みんな取材をしていく中で知り合ったり、もともとの知り合いだったんですけど、やっぱりメディアでカミングアウトしてる方々なので、影響力もあり、キャラクターもあるので、非常にお芝居をいっしょにやっていても楽しかったですし、すごくよく演じていただけたなと思ってます。

―撮影の際に苦労されたことは?

台風が2回来たことですね(笑)今回の撮影期間は10日弱くらいで、まあキツキツな日程だったのですが、クランクインして2日目、去年の10月なんですけど10年に一度の台風が来てしまったんです。その日はバーのシーンを朝から撮影予定だったんですけど、台風の轟音でもう全然撮れなくて。結局丸々半日ずらしたんですね。昼から翌日の朝方まで撮影でした。そしたらまた台風が来てしまい…。その時は一回のロケで終わる予定だった海での撮影シーンに別日にまた行くことになってしまいました。映画撮影時に天候はもうしょうがない部分はありますけど、ほんと、かなり大変でしたね。

—色々な場所でロケをされてるんですね。

ロケ地には本当に協力いただきました。高田馬場に実在するLGBTフレンドリーのバーを使わせてもらったり、事務所を改造してサークルの部屋を作りました。あと実は「陽」の実家は僕が前にルームシェアで住んでいた家で、「陽」の部屋は僕の今の部屋だったりします。お姉ちゃんにカミングアウトする居酒屋のシーンは前作の『SRS♂ありきたりなふたり♀』でも使わせて頂いた、いつもお世話になっているオーナーさんのお店を無料で使わせてもらったりと。皆さまのお陰で、ロケ地代はほとんどかかってないんです。

—ちょっと気が早いかもしれませんが、次に撮影していきたいものはありますか。

僕、今年の11月にもう1本撮影した映画、来年公開予定の『早乙女4姉妹』があるのですが、この『カミングアウト』と『早乙女4姉妹』の二本。それから今までやってきたものを考えたときに、なんかやっぱりメッセージ性のあるものを自分は作りたがるなと客観的に思ったんですね。何か伝えたいテーマとか、メッセージがあるもの、というんでしょうか。そんな作品が作りたいんだなというところが自分なりに分かってきたところはありました。次も同じようにテーマやメッセージを重んじた作品を作りたいです。かといってエンターテイメントに振り切った、深く物事を考えずに観られるような作品も撮ってみたいということも、もちろん思ったりもしますね。

—今後もLGBT映画を撮っていかれるのでしょうか。
この質問、頻繁に聞かれます(笑)前作の『SRS♂ありきたりなふたり♀』と、立て続けにLGBT映画を作ったからでしょうか。この『カミングアウト』というオリジナルの作品を作って、皆さんに反響を頂いたこともあって、違う描き方。こと同じ同性愛でも、違う演出の仕方とか、可能性とかあると思いますし。純粋に映画として、これから世に映画を残す作品としては、LGBTに関する映画はもう一回やってみたいテーマではあります。

—最後に、この映画をどんな方に観て頂きたいと考えていますか。
一番はLGBTを知らない方に見ていただきたいですね。 次は家族にLGBTの方がいるとか、周りにLGBTの方がいる方々にですね。 あと、セクシャリティを関係なくすると、僕らの世代、10代から30代 前半くらいまでの人たち、これから日本を元気にしていかなくちゃ いけない人たちに見て欲しいですね。
理由は、この映画のテーマの一つである「まずは知ること」とリンクします。取材を進める中で、いかに今の日本では、世間がLGBTについて知識がないか。また固定観念でものを語っているか、偏見を持っているかが痛い程分かりました。それは自分を含めて、です。僕はこの映画を作ったことによって、本当の意味で価値観が変わりました。知った上でどう思うかは人それぞれだと思うのですが、知らないのに偏見をもっているのは凄い不健全だと感じています。様々な方達と出会い、取材をして、脚本を書き上げた頃には、LGBTに関しての知識も相当あったので、そんな時に自分の周りの人達のLGBTに対する知識や理解のなさと出会うと本当にガッカリもしますし、世間に対しては怒りすら感じる様になっていました。なので、LGBTに対して知識がない方に、まずは知って欲しいと思っています。

 

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■ストーリー(※公式サイトより抜粋)
陽はゲイの大学生。サークルの同級生で親友の昇に片思いをしているが、大学のサークル仲間にも、一緒に暮らす家族にも、ゲイである事は隠している。唯一、新宿二丁目の行きつけのBar B♭ではありのままの自分でいられる。以前に比べれば、セクシュアルマイノリティも少しずつ生きやすい時代になってきた。しかし仲間達との友情や恋愛の他にも、就職や結婚など将来への不安は尽きない。過ぎ行く日々の中、陽の周囲に起こる様々な出来事。いつしか、陽の中にある思いが生まれ始めていた。葛藤の末に陽が進む道とは…。

■公開情報
渋谷ユーロスペース 11/29(土)~12/19(金)連日21時から上映
※今後の上映情報は公式サイトをご確認ください。


■最新情報
ユーロスペース上映最終週の 12月15日(月) から 12月18日(木) まで、トークショーを開催致します!
映画『カミングアウト』監督・犬童一利をホストに、以下の日程にてゲストをお迎えします。
(上映最終日12月19日金曜日のトークショーは検討中です)

▽2014年12月15日(月)上映後 22:40〜23:00頃
藥師実芳(やくしみか) 特定非営利活動法人Re:Bit 代表理事
Re:bitHP 代表あいさつ

▽2014年12月16日(火)上映前 21:00〜21:15頃
髙橋直人(たかはしなおと) 『カミングアウト』主演/赤間陽 役
髙橋直人スターダスト公式プロフィール

岡村優(おかむらゆう) 『カミングアウト』緑川昇 役
岡村優スターダスト公式プロフィール

▽2014年12月17日(水)上映後 22:40〜23:00頃
松中権(まつなかごん) 認定特定非営利活動法人 グッドエイジングエールズ 代表
グッドエイジングエールズHP 代表挨拶

▽2014年12月18日(木)上映後 22:40〜23:00頃
石坂わたる(いしざかわたる) オープンリーゲイ 中野区議員
石坂わたる公式HP

情報の詳細についてはこちらの公式サイトをご確認ください。

 


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