第38回 戦時の若者を待ち受けたM検とは!? チンコ検査の実態。

 

寄らば大樹の陰、という。大勢(たいせい)におもねっていれば安寧が得られる、という考えだ。それも処世である。去る12月14日、第47回衆議院総選挙が行われた。結果は、ご存知の通り、自民党の圧勝。大勢である。体制である。安倍晋三、大喜びだ。むこう4年は、安倍首相の天下である。
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当選が確実となり笑顔を見せる安倍晋三首相(中央)。毎日新聞より。
ところが、多数派が必ずしも正義だと限らないのも、この世の習い。なんの因果か、オカマなんぞというマイノリティに生まれ落ちたせいで、そのことは痛いほど思い知らされている。そのせいか、皆が、白といえば赤と言う。右といえば左を向く。この世の主流が信じることは、とにかく疑ってみる。そんな天の邪鬼気質、ひねくれ根性が身に染みてしまった。
景気が良くなるのは大いに結構だが、抱き合わせで押し切られてしまいそうな改憲や集団的自衛権の問題が気になるところだ。
海外派兵をするとなったら、自衛隊である。近年ますます“なり手”が少なくなっている上に、少子化だ。まさかとは思うが、人手不足を補うために徴兵制復活なんてことにならなければ良いが……と案じてしまうのは、ひねくれ者の性(さが)か。ま、私のような老いさらばえた変態オカマなど、いまさら戦争にかり出されることはないだろうが(笑)。
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写真のゼロ戦(零戦五二型 721空 神雷部隊)フィギュアは、UCCコーヒーが映画『永遠の0』の公開に合わせてキャンペーンで配布したプロモーション品。
いまでは想像さえ出来ないことだろうが、日本も、かつては赤紙一枚で、いやも応もなく戦争にかり出されていった。富国強兵。若く、健康な者たちはすべからく徴兵されたのだ。さて、徴兵され、軍に配属された若者達がどんな扱いを受けたのか、こんな記録がある。といっても、本連載は、ホモ本の紹介であるからして、当然、ホモ視点の内容である(笑)
当時の、戦時の若者達を待ち受けていた試練とは……、M検である! といっても、いまの読者には、まったくさっぱり分からないだろう。しからば、説明しよう。M検の「M」とは、マラの「M」である。マラとは、チンコのことだ。つまり、チンコ検査の略称なのである。
浅ましいホモは、チンコ検査と聞いただけでさまざまに妄想をふくらませていることだろう。M検の実際についてはあとで説明するとして、かつてのホモ雑誌には、M検体験談が数多く掲載されていたものだ。商業ホモ雑誌『薔薇族』が発刊され人気を博した1970年代といえば、戦中派だった人達が50代から60代になっていた頃である。彼らが青春時代の嬉し恥ずかしのM検の思い出を、懐かしみながら投稿していたのであろう。当時、10代だった私にはまったくピンとは来なかったが、それでも、その異様な内容は、十分に興奮をそそるものであった。それでは、『薔薇族』1973年7月号に掲載された、笹岡作治著『ああ,M検物語』より、M検の実態を紹介することにしよう。
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笹岡作治著『ああ,M検物語』のトビラ。さし絵は、おかのけんいち。
『フンドシをさっさとはずさんか。一か所に集まるんじゃねえ。空いてるところにどんどん走っていけ。前のものがやることをよくみておけ、いいか、最初はおチンチンだ。次は尻。わかったな。まごまごするな。検査官がキンタマを握ったら、おなかをしっかりふくらます。まちがえるなよ』
『突撃用意』で、一歩前進、股をひらく。各班に別れた数人の衛生下士官がペニスをきつく握り、根元までしごくのである。性病にかかったものは、尿道からあふれる腫によってたちどころに露見してしまう。
「検身」と称せられる身体検査の光景である。入隊時に、また、入営生活の定期検診で、M検は行われた。主な目的は、性病と痔のチェックだったようだ。性病はともかく、痔の持ち主は飛行作業には向かないとされ、配属を変えられることもあったらしい。そのための検査でもあった。
それがおわると、さらに一歩前進、四つんばいになる。『さあ、這えよ。這えよ。尻をうんと持ちあげて、おチンチンの裏がよくみえるように這うんだ』班長は、ふざけた音色をひときわ大きくかなでながら、いかにも嬉しそうだ。
四つんばいの列。検査官は尻たぶを両手でこじあけると、緊張でひくひくけいれんするトンネルの入口をじっとながめる。そして指の運動がはじまるのだ。肛門に挿入された指は一回転し、そのままそけい部を走りながら睾丸のつけ根に到達する。『こら、けつをもっともちあげて、足をいっぱいに開くんだ。尻にでんと力をかけてみろ』怖れの沈黙に閉ざされた順番を待つわかもの。すべすべした尻のふくらみをとらえている。それは成熟したばかりの青年のかおりを発散する。尻をたたかれたわかものは、たちあがって検便室へ。走りさるわかものの睾丸がおおっぴらにゆらゆら揺れている。
M検で明らかにされるのは、性病と痔ばかりではない。包茎かどうかも、一目瞭然。知られてしまうのだ。男だけの閉鎖空間である。当然、こんな展開が起きるのも無理はない。
 新兵には包茎が少なくない。それもほとんどが仮性包茎である。したがって定期検査は包茎を手荒く手術する場にもなる。薄皮をもみほぐして強引にめくるのである。(略)衛生下士官と班長の二人がかりで剝きにかかるのである。それはまず、新兵のそれを怒張させねばならない。ペニス、睾丸、そけい部、肛門、あらゆる性感帯が刺戟される。ひとたび昂奮状態に入ると、みるみるふくらんでゆく。『いい子だ、いい子だ。すぐ、お天道様を拝ましてやるからな』そんなせりふがきかれるのも、このときである。ひきつる強烈な痛みも、やがて昂奮をいやす快楽へとかわっていく。めくられてゆく亀頭が、さらに刺戟の対象になるからだ。くすぐったいだけの感触。それはわかものの姿勢をくずさずにはおかない。『どうした股をひろげんか。しっかり割るんだ』その度に尻をたたかれる。そして、『一丁、できあがり』となる。はじめて外気にふれた肌は、真赤につるつるひかっている。『風呂に入ったら、酒粕をきれいに掃除しろ』そういわれた新兵は、『ハイ! 有難うございました』という以外にない。
と、こんな具合だ。ヘタなポルノ小説よりエロいじゃないか(笑)
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笹岡作治著『ああ,M検物語』のさし絵。
M検で不運にも性病が発覚してしまうと、斯様な過酷な仕打ちが待っていた。
さあ大変だ。衛生兵が飛んでくる。『この野郎、尻を出せ』精神注入棒の乱打。はねかえってくる鈍い肉体のひびき。いくすじもの赤い条痕が尻を飾る。それから、みせしめにさらされる。股をひらいたまま腰を突出させ、苦しい弓なりの姿勢。ポーズがくずれる。間髪を入れずに飛んでくる精神注入棒。「そら、そら、ヨコネがみえんぞ。戦友にしっかりみせるんだ。陛下に捧げたからだを勝手に汚しやがって。それで申しわけが立つとおもうか。おチンチン様、私が悪うございました。おゆるしください。そういってみろ』
性病だけではない。もはや言いがかりとも思えるような、イジメも当たり前に行われていたのである。
『お前、女と遊んだろ』『遊びません』『遊ばない。嘘つくな。遊ばんおチンチンがこんなに黒いはずはない』『それは兵隊になる前であります』『やはり、遊んだじゃないか。そのときお前いくつだ』『二十歳であります』『入隊までは陛下から預かったからだ。汚しちゃいかんことはよく知っているな』『はい』『馬鹿野郎。分かっていてなぜ遊ぶか』途端に跳ねあがった金切声とともに下士官の拳がわかものの頬をなぐった。
天皇陛下も、兵隊の性病からチンコの色まで管理しなくてはいけなかったのだ。さぞかし大変だったことだろう。ご苦労様である(笑)。いまの感覚からすれば、人道に反し、人権蹂躙もはなはだしい。けれど、当時は、これが正義であった。大勢であった。体制であったのだ。
いま、これを読みながら、これがヘタなポルノ小説であって欲しいと願わずにはいられない。M検など、ご免である。戦争など、まっぴらである。もっとも、私のような老いさらばえた変態オカマなど、いまさら戦争にかり出されることはないだろうが(笑)。だから、若い、読者のホモ諸君。オカマと生まれたからには、大勢を、体制を疑ってみる気骨を持って欲しいと思うのだ。当たり前になどならなくてもいい。主流になどならなくてもいい。天の邪鬼でひねくれ者の気概を持って、正義を見据えて欲しいと願う。寄らば大樹の陰とはいうけれど、雑草の陰にもオケラならぬオカマだって生きているのだ。老いさらばえた私は、そう思う。
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『薔薇族』1973年7月号(第二書房/1973年 発行)

 

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