第77回 【ええ話】ハリー・ポッターが現実世界にかけた魔法とは

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まきむらよ。

毎週月曜、こちらの連載「まきむぅの虹色ニュースサテライト」をお送りしております。

今回のテーマは、

【ええ話】ハリー・ポッターが現実世界にかけた魔法とは

です。

★ 「ハリー・ポッターで最もグレートな魔法」と題された心理学研究が発表される
★ 「ハリー・ポッター」の何が現実世界を動かしたのか
★ 物語は、子どもを大人の都合で動かすための道具なのか?
★ 作者のJ. K. ローリングさん、LGBTについてtwitterで神対応

以上の流れでお送りします!

★ 「ハリー・ポッターで最もグレートな魔法」と題された心理学研究が発表される
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人に言ったら笑われそうなことを、大真面目に研究している人が世界にはいます。

「猫がキーボードの上に乗っちゃったことを検出してくれるソフトウェアの開発」

――クリス・ニスワンダー氏
2000年度イグノーベル計算機科学賞

「なぜ人はバナナの皮を踏むと滑るのか、その仕組みの証明」

――北里大学・馬渕清資教授ほか
2014年度イグノーベル物理学賞

今回ご紹介する論文、「ハリー・ポッターで最もグレートな魔法」もそのひとつに見えるかもしれません。

2014年、イタリアの研究チームによって「応用社会心理学ジャーナル」に発表されたこちらの論文は、平たく言えばこんな研究結果を示しています。

「『ハリー・ポッター』を読んだ子どもは、同作品を読む前と比べて、同性愛者・移民・難民などといった社会的マイノリティへの偏見が軽くなる」

あらまぁ! それがほんとにほんとなら、未来はもうちょい明るい気がしてくるわね!

だけど、いったいどうして「ハリー・ポッター」がマイノリティへの偏見と関係するというのでしょうか?

★ 「ハリー・ポッター」の何が現実世界を動かしたのか

実は「ハリー・ポッター」のストーリー自体、現実世界にあるマイノリティ差別が反映された物語なのよね。

ハリー・ポッターの世界では、人々がその出自によって以下のように区別されています。

(1)“純血”の魔法族
(2)魔法が使えない人間から突然変異で魔力を持って生まれてきた、“マグル生まれ”
(3)片方の親だけが純血の魔法族である“半純血”

マグル生まれや半純血は「穢れた血」と呼ばれて見下され、「魔法族は魔法族同士で結婚するべきである」と考える純血主義者に排除されています。

あらあら。これってなんだか、人類の歴史のいろいろを思い出さない?

たとえば、ユダヤ人・障害者・同性愛者などを「劣等」扱いして虐殺し、アーリア人同士の結婚を推奨したナチスドイツ政権下にとっても似ているんじゃないかしら。

アメリカのメディアMedical Dailyによれば、「ハリー・ポッター」の悪役ヴォルデモートと、ナチスドイツを率いた独裁者ヒトラーの間には、多くの類似点が指摘されているといいます。

「ハリー・ポッター」は子ども向けのファンタジーですが、だからといって甘くキラキラふわふわしてるばっかりじゃなくて、しっかり現実という土台に裏付けられているというわけね。

しかしながらそんな「ハリー・ポッター」に、これは子どもを洗脳するための道具ではないのかというような批判も寄せられているのだそうです。

★ 物語は、子どもを大人の都合で動かすための道具なのか?
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「ハリー・ポッターは同性愛プロパガンダの道具だ」

2007年、作者のJ. K. ローリング氏は、主要キャラクターであるダンブルドア校長がかつて同性に恋していたと公表。

その後「児童文学にゲイのキャラクターを出すなんてとんでもない」との批判の声が相次ぎ、同作品には「リベラル左派の洗脳道具」「同性愛プロパガンダ」などといったレッテルが張られました。

そして2014年には、「ゲイフレンドリーなハリー・ポッター」が“家族を壊す”ものであるという批判から、キリスト教原理主義者により「ファミリーフレンドリーなハリー・ポッター」が書き下ろされました(出典:PinkNews)。

このファミリーフレンドリーバージョンでは、ダンブルドア校長が同性に恋した過去はなかったことにされています。原作では独身のダンブルドア校長ですが、このバージョンでは女性の教師であるマクゴナガル先生と結婚し、子どもをもうけているのだとか。

だけれど、お互い様よね。原作を「同性愛プロパガンダ」と呼ぶならば、わざわざそんなふうに書き直したほうだって「異性愛プロパガンダ」じゃないの、って思うのよ。

大人が何を書き何を読ませるかということは、確かに子どもの考え方に影響するでしょう。そして人が書くものは、いかに中立を心がけたとしても、書いた人の考え方に影響されて偏ってしまいがちなものです。

だけれど、子どもだって、読みたいものを選びます。最後に自分の考え方を選び取るのは子ども達自身であるということを、物語を書いたり読ませたりする大人たちは忘れてはいけないと思うのです。

★ 作者のJ. K. ローリングさん、LGBTについてtwitterで神対応
2014年12月、「ハリー・ポッター」作者のJ. K. ローリングさんのもとに、読者からこんなコメントが届きました。


「ホグワーツ魔法魔術学校には、きっといろいろな人たちがいるんでしょう。LGBTの生徒たちにとっても安全な場所なんだって、私は考えたいな」

それに対してローリングさんは、こんな温かなコメントを画像付きで返しています。


「もちろん!『ハリー・ポッター』に教訓があるとするならば、それは、誰ひとりクローゼットに隠れて生きるようなことがあってはならないってことです」

たぶんこれ、「みんなカミングアウトしろ」みたいな意味じゃなくて、「そもそも誰かがクローゼットに隠れなくちゃいけなくなるような状況のほうこそなんとかしよう」って意味だと思うのよね。

人間はその歴史から、そして歴史が投影された物語から、過去を反省して未来に生かすことができる生き物です(……って、私は信じたいわ)。「ハリー・ポッターで最もグレートな魔法」というこの論文で発見された“魔法”は、果たして、人間の冒してきた過ちを繰り返させず、よりよい未来を作ってくれることになるでしょうか。

ということで、今回も読んでくださってありがとうございました! また来週月曜日にね。まきむぅでした◎

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