#16 ダイバーシティ絵本 – “星の家族たち”

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明けましておめでとうございます。みっつんです。今年もどうぞよろしくお願いいたします。新年一発目、今更感は否めませんが、先週のクリスマスの話をさせてください。それではどうぞ。
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12月24日、クリスマス・イヴの朝、目が覚めると3歳3ヶ月の姪っ子が、「サンタが来た!サンタが来た!」と騒いでいた。ここ、スウェーデンではプレゼントをもらえるのは子供だけではなく大人もお互いに持ち寄るので、ものすごい量のプレゼントがクリスマス・ツリーの下に置かれる。プレゼントは24日の夜、ディナーの後に家族の誰かが扮装したサンタがやってきて皆に配るのだけれど、子どもには「プレゼントがたくさんだから、前の日(23日)の夜にこっそり持ってきてるんだよ。」と説明しているのだ。
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サンタまだかなぁって外見て待ってるリカと姪っ子
イヴの夜、スモーガスボードと呼ばれるスウェーデンスタイルのビュッフェを準備し、テーブルを囲む。ディナーが終わると、軽く片付けてサンタを迎える準備をする。グルッグと呼ばれるスパイス入りのホットワインを作り、暖炉に火を入れ、サンタを待つ。今年のサンタはリカ。覆面的なサンタのお面をかぶって、バレバレじゃないかと思ったけれど、リカサンタがやってきた途端、姪っ子はそれをサンタを信じ、興奮を抑えきれないで騒いでいた。
サンタからプレゼントをもらい、サンタが帰るとみんな、それぞれにきれいに包まれた包装紙を剥がし、何をもらったか見せ合う。大人になっても(例え中身がある程度予想できていても)とてもわくわくする瞬間だ。・・・と、前置きが長くなってしまったが、その中でその姪っ子がサンタにもらった絵本がおもしろいので、紹介したい。
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『星の家族たち』とでも訳せばいいのだろうか、それがタイトル。作者は僕らが今いるスウェーデン北部、ノールボッテン県出身の方らしい。子どもにわかりやすい言葉で書かれたその絵本は、11もの違うカタチの家族を紹介している。要約するとこんな感じ。

ミクシィはお母さんと弟と、綺麗な庭のある家で暮らしている。
ミルトンとおばあさんは二人で大きな赤い家に暮らしている。
ミラは二人のお父さんと暮らしている。お父さんたちはミラのくるくるヘアーをいつもブラシでといている。森にキノコ狩りに行くのが好きなんだ。
ちっちゃなイダはパパとふたりで暮らしてる。彼女はどこに行く時も赤いコートを着ていく。
アルヴィンは弟とお母さんと、お母さんの新しい彼女と一緒に住んでいて、ツリーハウスを建てている。
ルーカスはとても遠い国からパパとママの家にやってきた、そのとき最初の歯が生えてきたばかりだった。
ミリスとパパは一緒に古い家に住んでいる。2週間に一度ミリスは別の所に住んでいるお母さんと、遊びに出かける。
サイモンは10人の姉妹と1人のお兄さんがいる。彼らが全員揃うと、玄関は靴でいっぱい。
 アナとアクセルは愛し合うカップル。彼らに子どもはいないけれど、とても幸せな家族。
サラのお母さんはとてもいい男性と会った。サラはアントンとミレというふたりの兄弟ができた。
ミアの両親はあまり調子が良くない、だからミアはおじいちゃんとおばあちゃんと毎日一緒に過ごしている。

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ミラと二人のパパ
この本を読んで、なるほどと思わされたのが、子どものいないカップルの話を除いて、主人公が全て子どもであること。ほとんどは『誰々は〜』と子どもの名前から始まっている。とくに彼らが幸せかどうかなんて書かれていないけれど、この絵を見ればどの家族も幸せそうだ。この絵本に出てくる子どもたちはみなそれぞれが主人公であり、誰かに守られて愛されて育っている。それさえあれば、彼らの周りの大人が、ひとりなのかふたりなのか、男性なのか女性なのか、ましてや性的志向は、子どもにとってどうでもいいことだと気づく。
僕も含め大多数の人が、大人になる過程、もしくはなってからも、知識やモラル、倫理や社会の目などに考え方を誘導される日々を過ごす。それが社会の平和や秩序を保つために必要なものであることは言わずもがなである。しかし、それらの型やカタチみないなものにはめる事自体が目的となってしまったとき、一番大切なものをどこかに置き忘れてしまうことはないだろうか。そして人間は自ら作ったその型に縛られ、もがいたりしてはいないだろうか。
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アルヴィンの家族、弟とママとママの彼女
話はちょっとそれるけれど、ロンドンで演劇ワークショップをしていた時、同性婚についての議論になった。こっちは宗教の関係もあって一筋縄では語れないが、20代の女性がこんなことを言った。
「LGBTをサポートはするけれど、同性婚制定の必要はない。結婚制度自体が古い型であり、彼らがストレートの人たちの真似をする必要がないからだ。結婚制度自体をなくせばいい。」
言ってる意味はわかるが、それに賛成はしなかった。僕は、結婚制度もしくはモノガミーが良いか悪いかを議論していたつもりはなかった。「個人、ひとりひとりがそれぞれの人生や性格にあった選択ができるかどうかが問題だ」と言った。僕にとって興味があることは、誰しもが自由に、自分らしい生活を選ぶことができることだ。勝手に選択肢を狭められては困る。彼女が言っているのは、また違う型にはめようとするだけで、結局容量が変わっていないから、またあぶれるひとが出てきてしまう。新しい型が必要なら、ダイバーシティ(多様性)という名の何倍も大きな容量を持つ型が必要だと僕は思う。この絵本では子どもを持たないというのも、一つの家族のカタチだと言っているし、ここにあげられた11のカタチだけではないんだよということも、一番最後に描かれている。
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覆面サンタと姪っ子と甥っ子
閑話休題。これを受け取った3歳の姪っ子はまだ、この絵本を理解できないだろう。でも僕ら「リカとミッツ」は、パパとママ、おじいちゃんとおばあちゃんのようにカップルだという認識が、彼女の中で既にあるらしい。そういう彼女の姿を見ていると、古く堅い頭を持つ人の考えを、無理やり変えることに必死になる必要はないと思わされる。そんなことしなくても、彼らは先に死んでいくし、この子どもたちは柔軟に新しい世界を作ってくれると思うから。
ちなみに、この絵本を姪っ子にに送ったのはリカのお母さんだった。もちろん彼女はリカと僕の間で子供を持つ話を知っている。だからこの本を姪っ子にプレゼントしたのだろう。自分のおばあちゃんが、孫にこんな絵本をプレゼントするなんて、僕の時代には想像できなかったが、こういう家族のサポートがあるのは、本当にありがたいと身に沁みるイブの夜だった。
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氷のランタン
クリスマスイヴの夜、僕もサンタからたくさんのプレゼントをもらった。でも一番のプレゼントは、4回目の冬のスウェーデンで初めてとなる、オーロラが見れたことだった。まだ太陽風が弱いのか、写真で見るような緑とかカラフルなものではなく、白いレースのカーテンのようなものが北斗七星を覆い、ヒラヒラたなびいているようだった。-22℃の中、寒いけどあったかい気持ちになった。

 

 2015/01/01 06:00    Comment  連載   みっつんのLondon Days              
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