第79回 17歳のMtFが女性名で埋葬されることを求め、5万人が署名

0caad581a6b0ea9d27635aab5d10da69
まきむらよ。
毎週月曜、こちらの連載「まきむぅの虹色ニュースサテライト」をお送りしております。
今回のテーマは、
17歳のMtFが女性名で埋葬されることを求め、6万人が署名
です。
★ 女性を自認する17歳が死去、両親は男性名での埋葬を希望
★ 遺書が自動投稿されるよう設定されていたものの、警察は自殺と断定せず
★ 本人が女性の名前で残した最期のメッセージ
★ お墓は入る人のものか、それとも入れる人のものか?
以上の流れでお送りします!
★ 女性を自認する17歳が死去、両親は男性名での埋葬を希望
211b9e5b1f0ac90bb81e9fb7dccef33e
2014年の終わり、アメリカに住むMtFトランスジェンダーのリーラー・アルコーンさんが自らこの世を去りました。たった17歳でした。
※MtF=男性とされて生まれ、女性として生きる人。Male to Femaleの略。
リーラーさんは最期に、SNSへの予約投稿でメッセージを遺していました。
生まれた時につけられた男性としての名前「ジョシュア」にわざわざ×をつけ、女性としての名前「リーラー」で署名して
ところがそのリーラーさんの両親は、彼女を女の子として扱わず、墓石に男の子の名前を刻もうとしています。そのため、リーラーさんを女の子として埋葬するよう求め、6万人以上が署名をする事態にまで発展しています。
★ 遺書が自動投稿されるよう設定されていたものの、警察は自殺と断定せず
リーラーさんが高速道路に飛び出して亡くなった後には、自動的に遺書がアップロードされるよう予約設定されていました。そのため警察は自殺の可能性を視野に入れて捜査していますが、リーラーさんの母親はこのことを「事故」であったと表現しています。
その上で、先にはっきり申し上げておきますが、この記事は自殺を美化・推奨するものではありません。私には「家族が悲しむから~」とか「生きてればいいことあるよ~」みたいなことは言えませんが、もしもあなたが死を選ぶことを考えていらっしゃるならば、どうかお願いします、私が悲しいのでやめてください。辛くなった時の相談窓口リストをふたつ貼っておきます。
相談すらできない、する価値が見いだせないにしても、どうかまずは先に、目を閉じるだけでいいから寝てください。好きなものだけでいいから食べてください。オナニーしてください。それすらできないなら、な~んにもしなくたっていいんです。どうか、かつて自分の性のあり方で悩んで生きるのをやめようとした私みたいなことを繰り返さないでください。お願いします。本当に本っ当にお願いします。お願いしましたよ。お願いしましたからね。
★ 本人が女性の名前で残した最期のメッセージ

それでは、リーラーさん本人のものとされるブログ記事から、最後のメッセージを抄訳でお届けします。

※1月5日追記……上記ブログ記事は運営元であるTumblrに削除され、閲覧できない状態になりました。英Dailymail紙が全文を一部伏字で掲載しましたので、こちらにリンクを貼っておきます

“もしあなたがこれを読んでいるならば、つまりそれは私が自殺をしたために、この記事を削除できなかったということを意味します。
 
簡単に言うならば、私は男の子の身体に閉じ込められた女の子なのです。4歳の時からそう感じていました。私は、この気持ちに名前があるのだと知らなかったし、男の子から女の子になることが可能だということも知りませんでした。ですから誰にも話さないまま、伝統的な「男の子らしい」ことへ自分を当てはめようとしてきました。
 
14歳の時、トランスジェンダーという考え方を知って、私は喜びに泣き崩れました。10年もの混乱を経て、私はやっと自分が何者であるかを知ったのです。私はすぐに母親に話しましたが、母親は「そういう時期なだけ」「本物の女の子になんてなれやしない」「神様は間違いを犯さない」「あなたが間違っている」と私を否定しました。もしこれを読んでくれているあなたに子どもがいるならば、お願いです、どうかこんなことを子どもに言わないでください。あなたがクリスチャンであっても、トランスジェンダーの人々に反感を持っているとしても、お願いです、どうかこんなことを言わないでください。こんなことを言われたとしても、言われたほうは自分自身を憎み嫌うようになるだけです。まさに私はそういう状況に追い込まれました。
 
母親は私を、キリスト教系の偏見にまみれたセラピストの所へ連れていきました。私はわがままで、間違っていて、神の救済を求めるべきであると言われただけでした。悲しみをいやすために必要としていたセラピーを、私は受けることができませんでした。
 
私は幸せになれないでしょう。私には残りの人生を、女になりたいと望む寂しい男か、自分自身を憎み嫌う寂しい女として過ごすしかないのです。勝つことができません。出口だってありません。
 
あなたは「これくらい死ぬ理由にならない」と思うかもしれません。しかし、私にはこれで十分です。私の遺志として、私が法的に権利を持っている100%の資産……売れるものやお金、銀行への預金といったものを、トランスジェンダーの権利運動かサポートグループのために使ってほしいと言っておきます。
 
私がいつか安心して永遠の眠りにつけるとすれば、それは、トランスジェンダーの人がもう二度と私のように扱われず、感情と人権とを持った一個の人間として扱われるようになった日のことでしょう。ジェンダーのことは一刻も早く学校で教えられるべきです。私の死を無駄にしないでください。私の死は、2014年に自殺をしたトランスジェンダーのひとりとして数えられる必要があるでしょう。誰かその数字を見て、「うわっ、クソみてぇだな」って言って、そして改善してほしいと思います。社会を改善してください。お願いします。
 
さようなら、
 
(リーラー)ジョシュ・アルコーン”
とても力のある文章です。だからこそ、この文章がリーラーさんの望んでいないことを――つまり後追い自殺やクリスチャンバッシングといったことを加速してしまわないよう、私は願ってやみません。
キリスト教的価値観を理由にトランスジェンダーを否定したリーラーさんの両親のもとには、既にいやがらせや批判が相次いでいるのだといいます。しかしながらリーラーさんの両親もまた、我が子を想っていたからこそ、自分がいちばんよいと信じたセラピストのもとへ連れて行ったり、あえて厳しい言葉で叱責したのではないでしょうか。そのことでリーラーさんのご両親が我が子を苦しめてしまったという事実は、あくまで結果であり、目的ではなかったはずです
また一言にキリスト教といっても様々で、トランスジェンダーに理解を示す教会や関連施設だってたくさんあります。ですから、ご両親やキリスト教を一概に悪者扱いしても仕方がありませんイギリスのメディアPinkNewsによれば、リーラーさんの葬儀はご両親への脅迫のため延期されたそうですが、まったく残念なことです。
★ お墓は入る人のものか、それとも入れる人のものか?
748a24bca938a52942d27790a01c4772
リーラーさんのご両親は、自分たちがつけた男の子としての名前「ジョシュア」で我が子を埋葬しようとしています。そこで、本人がつけた女の子としての名前「リーラー」で埋葬されるよう、2015年1月5日現在6万人以上の人々が署名を寄せています(Change.org)。
それに対してリーラーさんの父親は、メディアに対してこう語っています。「私たちは息子を愛している。(中略)息子のことを知らない人と議論したくはない、ただ静かに悲しむプライベートな時間が欲しい」(出典:WCPO
日本では、個人の名前が目立った形で墓石に刻まれないことも多いため、話題に上りにくいことではあります。しかしながら葬儀や埋葬の場において、弔う遺族の意思と弔われる故人の遺志とどちらが優先されるべきかというのは、トランスジェンダーに限った問題ではありませんね。
なお、故人を女性として扱った上での葬儀はトランスジェンダーサポートグループによって、男性として扱った上での葬儀はご遺族によって、それぞれ別々に行われるとのことです。
ともあれ周りが本人をどう扱おうが、その人はその人自身です。

性のあり方がいかにあるかということは人間の一部であり、そしてその“一部”を含めて、わたしたちはそれぞれに、自分自身として在ります。

Top