第17号 同性パートナーシップ保障、今できること(まとめ) ~「もしも」に備える 同性カップル編⑨

 

 新年おめでとうございます。
昨年9月からこの2CHOPOで連載を開始。「日本で年を重ねるセクマイに役立つ記事」「等身大のセクマイライフ」をモットーに更新を重ねてきました。今年も少しでもみなさんのお役に立つ記事をお届けしたいと願っています。取り上げてほしいこと、ご質問、ご感想などなど、お知らせいただければ励みとなります。
また、昨年より本格始動した「東中野さくら行政書士事務所」でも、少しでもセクマイの人生の充実に資するよう、事務所での寺子屋セミナーやご相談、必要な書面の作成まで、ご来所(初回相談無料)・ご用命をお待ちしています。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 ●なにを求めるのか—-承認か、実利か

今号では、年の始めにあたり、同性婚法制もない日本で、同性パートナーシップをどうやって保障するか、これまでの振り返りも兼ねて考えてみましょう。

同性パートナーシップ保障といいますが、そこでなにを求めているのでしょう。

一つは、自分たちはパートナーなんだという承認でしょうか。それを二人で承認しあってもいいけれど、なるたけ多くの人にも承認してほしい。そんなとき、お金は相応にかかりますが、ウェディングは一つの方法だと言えます。いまや同性ウエディングを引き受けてくれる式場もずいぶん出てきました。もちろんパーティー上手なゲイなら、式場に大枚払わなくても自分たちで場所借りて、ユニークなイベントをやってしまうかもしれません。
また、2人だけで承認しあうより、大勢の人のまえで誓うほうが、パートナーシップの誓約(相互扶助や貞操義務など)にいっそうの効果(縛りとも言いますが)が期待できるでしょう。
ただ、ウエディングにはなんの法律効果もないことは、挙式するご当人がいちばん知っていることだとは思います。

ということで、パートナーシップ保障のもう一つの目的は、パートナーになんらかの実利(権利)を与えたり、自分が相手に関して実利(権利)を得ることでしょう。年を取ってくると、それもまた切実です。同性間でそのことを保障する包括的な制度は、2015年現在の日本にはありません。

実利と承認、なにを求め、そのバランスをどうとるか。現状でできる方策を、もう一度整理してみましょう。

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2009年に『同性パートナー生活読本』(写真左)を書いたとき、結婚情報誌でリサーチしたら、同性結婚式を引き受ける式場は皆無でした。たった5年でずいぶん変わりましたね。

 ●書面作成でできること

方策の一つは、二人の合意事項を第三者にも示すことができる書面を作成することです。
現代は自己決定が尊重される時代であり、パートナーを自分の代理人として権限を与え、それを書面など第三者にも提示できるかたちにしておくことは、本人の自己決定を尊重するうえで、第三者もそれに従うべき効果が期待できます。また、いくつかの書面は法律に規定があり、第三者に対する効力も法定されています。
さらにそれを公証人が作成する公文書である公正証書にしておくことで、いっそうの法的効力を期待することもできます。公正証書で作成することが法律で決まっている書面もあります。
こうした書面の知識は、この連載でもご紹介してきました。ざっと思い出してみましょう。

 パートナーが入院して意識不明時に、面会したり治療方針の決定に関わりたい
面会権付与のほか、治療決定にパートナーの意向を尊重してほしい旨の医療意思表示書を作成し、パートナーに与えておきます。本人にその意思があれば、尊厳死宣言(不要な延命措置の拒否など)も盛り込むこともできます。
もちろん、パートナーに自分の緊急連絡がいくよう、日ごろから緊急連絡先カードの携行も大切です。

 パートナーの判断能力が衰えたとき、財産管理を代理したり医療や介護を調えてあげたい
認知症や植物状態などで判断能力が失われたときの代理のために、任意後見契約という制度があります。おたがいに任意後見人になる契約をしておくことは、パートナーであることの証明にもなります。男女の夫婦でも、お金のことは、こうした法的手続きを踏まないと勝手に処分することはできません。

 パートナーが亡くなったとき、財産を引き継ぎたい
遺言を作ることで、財産や事業を引き継ぐことができます。遺言ではほかに祭祀主宰者(喪主)の指定、生命保険金の受取人の変更などもできます。お金を出し合って不動産を買ったときなどは、名義者の万一に備えて遺言を作成しておくことが大切です。

 二人のパートナーシップと相互扶助などを明確にしておきたい
合意事項をまとめて、同性パートナーシップ契約書を作成することができます。男女夫婦などでも最近作成がみられる婚姻契約書の同性カップル版です。男女では子どもの養育のこともよく盛り込みます。ビアンカップルなどで相手の連れ子への養育協力なども盛り込み、第三者に示すこともできるかもしれません(幼稚園や病院での送り迎え等で活用も)。

よく、同性婚がないために同性カップルは(法律婚の男女に比して)これこれのことができない、などの一覧表を見ることがありますが、じつは上記のような書面を作成することで、実質的に婚姻と同様の内実を得ることができるのも確かなのです。

もちろん、パートナーを受取人にして生命保険の契約ができないとか、共同で住宅ローンを組めないなどがあることは私も知っています。しかし、できないのとする必要があるかは別で、自分たちに保険に入り、家を購入する必要があるかは、こちらこちらもご参考に考えてみてください。
また、税制(配偶者控除など)は法律婚が要件であり、事実婚なら可能な社会保険の被扶養者扱いも、同性カップルでは難しいと思われます。しかし、これも配偶者控除は年収103万円未満、社会保険の被扶養も年収130万円未満の専業主婦(主夫)保護のためであり、男女法律婚でも共働きの人には無関係です。双方が社会生活と自分の収入をもつためにも、健康や事情が許すなら共働きのほうがいいと思うのですが、いかがでしょう……。

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パートナー同士で任意後見契約をすれば、登記証明がパートナー証明の役割も果たしてくれます。書面には、こうした法律的な効果が期待できます。

 ●カミングアウトもじつは同性パートナーシップ保障

もう一つの方策として考えられるのは、ちょっと言いづらいのですが、親族へのカムアウトです。
たしかに書面は一定の効果がありますが、たとえば病室で親族とはち合わせた場合など、どんな情況になるのかは、なってみないとわからない面もあります。そうなったら、腹を決めて、自分は何者なのか、二人はどんな関係なのかを告げるよりないでしょう。遺言も同様で、死後、突然そういう文書が出てきたら、いくら法的に有効でも、親族と揉める可能性はあります。
逆にいえば、おたがい親族等にカムアウトし、顔もつながって日ごろから親戚づきあいができているのなら、親族の口添えで病室に入れてもらったり、遺産も「これはあなたが貰ってあげて……」となるかもしれません(ただ、相続税と贈与税と二重にかかる可能性があるので、やはり遺言は必要)。

考えてみれば、書面もそれを使用するときは、二人の関係を公表するいわばカミングアウトであり、同性婚もまた役所の窓口でするカミングアウトだといえます。制度や書面の利用は、すべて自分が同性愛者であることを前提とするものであって、それ抜きに、透明人間としてこっそり使える同性パートナーシップ保障というものはないわけです(それでも書面には、あからさまにパートナーとか書くわけではないので、知識のある「おひとりさま」がちゃんと書面を作っている、というカムフラージュ感は多少ありますが……)。

いのちと財産とパートナーを守る、同性パートナーがいる身として……。それを引き受けるかが問われるのかもしれません。前号の上川あやさんのインタビューではありませんが、私も古いオカマなので、つい「覚悟」「ゲイプライド」ということを思います(若い人には暑苦しいでしょうが)。
とはいえ、仕事も親もある身で一気にできる話でないことも重々承知……。

人は一度に歴史の階段を駆け上がることはできないのでしょう。まずは自分たちの暮らしとパートナーシップのために、書面作成など現状でできることを少しずつでもしてみませんか。法で守られる安心を実感してみてください。
日本の同性愛者は、カミングアウトの問題もあって、同性婚に積極的になれない……。私はそんな印象を持ってきました。でも、一度、法で守られる安心を知った人は、やがて包括的な法制度の必要性を痛感するとともに、いまの書面の限界性に不満が高まってくるだろう。それが日本の同性愛者に地殻変動を起こすつぎのエネルギーをもたらすのではないか—-私はそう願いながら、今年も事務所業務を続けていこうと思っています。

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小さな事務所ですが、駅から1分の便利さと、窓外の景色がいいのが自慢です。個人事務所の小回りを生かして、夜や土日もご対応します。お気軽にお問合せください。「しきい」が高いというかたは(笑)、毎週木曜日、新宿のゲイバー「タックスノット」(性別・セクシュアリティフリー)におります。どうぞお遊びにおいでください(ソフトドリンクも多数)。

 

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