#17 サロガシーの旅 | 病院選び

 

ここ最近、アメリカのいくつかの不妊治療専門の病院と連絡をとっている。まずはメールでアポをとると、スカイプで面談をしてくれる。これは始めのコンサルテーション・相談、ということで無料だ。僕らが契約しているエージェンシーはアメリカの東部にあり、ちょうど今年で20年目を迎え、複数の病院とともに650人の赤ちゃんの命を授かる手助けをしてきたそうだ。その経験から僕らの望みにあった病院のいくつかを候補として紹介してくれていた。
0b9308dff741860fd10637c6a21653e6
スカイプ・コンサルの様子

 

医者はスクリーン越しに、誰の精子を使うかとか僕らの健康状態を聞いたりして問診したり、IVF(体外受精)の行程やスケジュールを説明してくれたりする。逆にわからないことがあれば僕らからも質問したりする。また、医者は僕らの関係性、付き合ってどれくらいなのか、結婚してどれぐらいなのか、もとの家族との関係性などついても質問をする。不妊治療として子どもを授かるにあたって、当事者の置かれている環境や状況というのが、とても重要になってくるからだ。
いくつかの病院と連絡を取ってみて、工程やスケジュール、妊娠の成功確率などあまり違いがないことに気づく。その一方で違う点があったりもする。その違いを理解することが、自分たちにあった病院を選ぶ基準になってくるのだろうと思った。
例えば全体でかかる治療費が、病院によって違ったりするのだけれど、体外受精させた受精卵(胚)を移植するのに、1回目で成功しない可能性もあるので、何回までそれができるかというのが、病院によって違ったりする。また新鮮胚移植を優先させたい医者もいれば、凍結胚移植を勧める医者もいたりする(新鮮胚移植と凍結胚移植との違いについてはこちらを参照)。凍結胚移植の場合だと胚の凍結保存のコストがかかってしまうが、一度精子と卵子を採取してしまえば、何度も病院に通う必要がない、すなわち旅費がかからないので全体的にはコストが安くなるというメリットもある。複雑な要素が絡み合っていて、なかなか簡単には決められない。
それらの要素を加味した上で、リカと2人で「ここがいいね」と思える病院が1つ見えてきた。ロンドンから近い東海岸の病院だったということも大きな理由の1つではあるけれど、それ以上に、話をしたドクターの感じがよかった。というのも、彼自身も2人の子どもを持つゲイの父親で、同じサロゲートの経験をした人だったからだ。商業的サロゲートが認められているアメリカとはいえ、彼は仕事としてだけでこの職に就いているとは思えない、静かな熱意みたいなものがあった。コンサルが終わった時の手元のメモは、他のドクターよりも倍以上になった。
彼は、医学的見地のことだけでなく、自分の経験に基づいたアドバイスをしてくれたし、また、子どもが生まれた後の心理的な部分のケアについてもてくれた。ひとつ例を上げると、生まれてくる子どもへの説明を、どのタイミングで、どこまでするのかということ。僕らは子供に対して、彼らが生まれたきた理由を正直に説明をするつもりではいたけれど、それがいつなのかというのはわからなかった。しかし彼曰く、9~10歳ごろまでは理解できず子供本人の混乱を招く恐れがあるので言わないほうがいいのだそうだ。そのためには自分たちの家族に対してもそれを理解してもらい、皆が同調する必要があるということらしい。
僕らのサロゲートチームには、他に社会福祉士もいて精神的なサポートは彼らがしてくれるので、実質的な治療を行う医者がそこまでしなくてもいいのかもしれない。しかし、これからのこのサロゲートの旅のまだまだ長い道のり、同じ立場に立ったことのある人が、近くにいてくれるというのはなんとも心強い。まだ最終決定はしていないのだけれど、これが決まれば、プロセスがもっと具体的に進んでいくんだなと感じたし、今年はそういう意味で大切な年になりそうな予感がしたお正月だった。
268d6ebae8e84d4d7d2f5eb4a00a4804
テムズ川南岸(サウスバンク)から、ロンドンシティを望む。左に見えるのは聖ポール大聖堂

 

Top