第41回 球界のゲイビデオ出演スキャンダル。 アナルのプリンス 寺嶋寛大選手と、TDNこと多田野選手。 新旧の事件に、ゲイ差別の変容を見る。

 

今回は、直球勝負である。そのものズバリである。年末からネット上で物議を醸している、例の事件を取り上げる。プロ野球選手のホモビデオ出演騒動だ。今回、このスキャンダルの生贄となったのは、千葉ロッテマリーンズの嶋寛大選手である。騒ぎは、2015年01月05日日刊サイゾー』に「プロ野球・千葉ロッテのイケメンルーキーにゲイビデオ出演疑惑! 本人は完全否定も……」という記事が掲載されたことでピークを迎えた。この記事は多くの人のツイッターなどにシェアされた。その後の反響は推して知るべし。私のTLも、この記事のリツイートや、この事件に対するつぶやきで埋め尽くされた。
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『日刊サイゾー』より。
ジャーナリスト 片岡亮の記事によれば、「184センチの長身で、藤原竜也似のイケメン」の寺嶋寛大捕手(22歳)が、ゲイビデオ『アナルのプリンス3 少年達の美しき肛門破壊!』に出演しているらしい。 寺嶋本人と目される男優は、『電マでパッくりん編』に出演の、役名がバスケ王子フミヤ君(19歳)である。さっそくDVDを入手。検証してみる。
 女性経験3人というフミヤ君。インタビューアの「性欲がそんなに、もともと強くないのかな」という問いかけに、「そうかもしれないですね」と答え、初々しさ炸裂である。そんなフミヤ君が、相手役の男優に乳首をいじられ、フェラチオされて、ついには、アナル舐めから指挿入まで。どうやらアナルが感じるらしいことを悟られたフミヤ君、大小さまざまな張り型を挿入され、電マで責められるのである。興奮のせいでポッと赤く上気した顔が、可愛い。「ケツになに入れられた時が、一番気持ちよかった?」「チンコ(の張り型)です」「チンコの形のヤツ? 最後に入れたヤツだ。一番デカいヤツだね」「はい」と、射精後のインタビューで答える。 ウブそうに見えて、実は、アナルもろ感だったフミヤ君である(笑)。
とはいえ、質問に答える寸前、視線がチラリと横を向いた。もしかしたら、カンニングペーパーでも読まされているのではないだろうか。だとしたら、チンコ(の張り型)が気持ちよかったという発言は、嘘なのか? いやいや、その最中の映像では、本当に気持ちよさそうだったが……。 ホモビデオ、特に素人モノを見る楽しみは、どこまでが本当で、どこからがフィクションかを見極めるのが楽しみでもあるのだ。
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「千葉ロッテマリーンズ」オフィシャルサイトより。
さて、このフミヤ君が球界のプリンス寺嶋選手ではないかと騒がれ出したのは、昨年12月。「出演映像と寺嶋本人の写真を比較する検証画像も多数アップされ、ネット上では『同一人物にしか見えない』と記事では伝えている。この検証画像なるものをチェックしてみたのだが、すさまじい。いろんな意味で、すさまじい。
ビデオからキャプチャーされた顔と、同じ向き、角度、似た表情の本人の顔写真を探し出し、並べている。目、鼻、口、ホクロ……個々のパーツの相似を指摘し、はては、歯科技工士を名乗る人物が、両者の歯形を見比べて検証している。一人に対して、ネットユーザーが総がかりで調べるのである。刑事ドラマでいえば、状況証拠は揃った!というところだろう。
インターネット活用の素晴らしさを実証したと同時に、相互監視社会の恐ろしさを感じさせる。ひとたびネット上に公開されたものには、プライバシーなど存在しなくなるのである。私も、ネットにヘタなことを書き込んだり、やたらな写真をアップしたりすると、この先、めぐり巡って恥をかくことになる。気をつけねば(笑)。
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ネット上に流れている検証画像の数々。耳から、歯から……。科捜研も真っ青である(笑)。
寺嶋のルックスの良さを「集客の起爆剤にしようと目論んでいたのは、球団である。しかも、親会社であるロッテ商品へのCM起用まで画策する広告代理店もいた。そんなタイミングで起きた、この騒動。記者は、「ゲイビデオの出演はイメージとして最悪「学生時代にAVビデオ出演があったとすれば、やり過ごせる話」ではないと書いている。そりゃ、そうだろうと私も思う。
こうした事件が起きると、「可哀相だ」「そっとしておいてやれ」と言い出すホモがいる。渦中の人物に同情的な態度を見せるのだが、その実、「騒ぎが大きくなると、これからホモビデオに出てくれる人がいなくなる」という理由だったりする。つまり、自分のオカズの心配をしているだけの身勝手さなのである。情けない。
中には、「これはゲイ差別だ」と騒ぎ立てる人もいた。はたして、そうだろうか。なんでもかんでもゲイ差別だと言うのは、いかがなものか? 私には分からないのである。ホモビデオでなくともアダルトビデオに出ていりゃ、そりゃ、騒ぎになるだろうと思う。アダルトビデオ出演が企業のイメージアップに繋がるとは、到底、思えないのが現実だからだ。ましてや、お菓子メーカーである。お口の恋人が“下のお口” だったなんて、悪い冗談でしかない(笑)。
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アナルのプリンス3 少年達の美しき肛門破壊!』(BRAVO!/2012年7月12日 発売/10,500円)
黄色いタンクトップを着ているのが、バスケ王子フミヤ(19歳)である。
むしろ、ホモなど自分のまわりにはいない。ホモが自分の人生に関わってくることなどありえない、と高をくくってゲイビデオに出演。お小遣い稼ぎをした挙げ句、身元がバレて慌てふためく。そっちの方が、実は、ずっとずっと差別的だと思うのだ。
まず、ノンケの、ホモが存在していないかのような思い込みが、どれだけのホモを苦しめてきたことか。性的マイノリティに対する無関心は、差別である。次に、これだけのネットの普及に対する認識の甘さ。(ホモビデオに関わらず)アダルトビデオ出演のリスクへの無知。だいたい、そんな甘い考えでアダルトビデオに出ようだなんて、プロとしてアダルトビデオ業界で働いている人達に失礼であると思うのだ。
 プロフェッショナルとは、自分の仕事に誇りを持つことである。誇りとは、仕事の責任とリスクを引き替えに、対価を得ることだ。19歳は、大人である。いい歳をして、そのことが分からないような奴は、ダメである。そう思うのだ。「そういうアルバイトがあって、出れば30万円ぐらいもらえる」と記事にある。数時間の撮影で、出演料30万。これを高いと思うか、安いと思うか。ゲイビデオ出演で得るもの、失うもの。プロとしての覚悟が求められるのである。
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さて、野球選手でゲイビデオ出演スキャンダルの金字塔といえば、TDNこと、多田野数人選手である。それをスクープしたのは、『週刊現代2002年11月9日号。記事を追いながら、この事件のあらましを見ていくことにしよう。
 A投手は、大学球界できわめつきの高評価を得ている、文字通りのエースだ。そのA投手は、大学合宿所で後輩を襲う「事件」を起こしていた。さらに、ビデオに出演して裸に剥かれ、乳首を舐められ、首に輪をつけられて悶絶している。しかも、男性同士のセックス・シーンまで演じているのである ──  。
(『スクープ 前代未聞のスキャンダル「今秋ドラフト1位」あの大学エースが「ホモビデオ」に出演』のリード文より)
2002年のドラフト会議で複数の球団による争奪戦が繰り広げられていたA投手=多田野数人選手だが、ネット上で、ゲイビデオ『真夏の夜の淫夢』にそっくりな人物が出演していると話題になる。しかも、同じ野球部の後輩も出演していた。ついに、大学野球部の監督が、その事実を認め、多田野獲得の最有力候補であった横浜ベイスターズが直前になって指名を撤回。ゲイビデオ出演との因果関係は明らかにされていないが、「諸般の事情を総合的に検討」した結果であるという。ドラフトの真っ最中であり、巨額な契約金のこともあり、世間の注目を集める一大スキャンダルとなったのである。
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『週刊現代』2002年11月9日号より。
こうした同性愛スキャンダルは、いくつかのフェーズに分けて考えなくてはならない。アダルトビデオに出たことが問題なのか? それが、ゲイビデオであることが問題になるのか? ひいては、本人がホモであることが問題なのか? それぞれの局面において考えなければいけない。多田野選手の場合は、本人がホモであるかどうかが大きな関心となった。
 さらにこの関係者はこうつづけた。
「Aは、以前からそうした性癖を持っていたようです。合宿所で後輩部員を襲い、大きなトラブルになったと聞きました。寝込みを襲われた後輩部員が、『出るところへ出てやる!』と怒り狂ったといいます」
Aが1年生部員の部屋に忍び込んで身体を触るという苦情が、その1年生から寄せられたんです。以前からも、『A先輩はヘンだ』というウワサはあったようなんですね。(略)1年生の性器に触ったり、首に抱きつくというようなことが何回かあったんですよ。(略)本人に事情を聴くと、『仲良くなりたかった……』と。『なぜ男なんだ』と聞くと、『女ともしました(注/「とも」に傍点)』ということでした
(『スクープ 前代未聞のスキャンダル「今秋ドラフト1位」あの大学エースが「ホモビデオ」に出演』本文より)
 この記事は、多田野選手がビデオの中だけでなく、日常から男性に性的なアプローチをしていたことを強調する。記事の趣旨は、ゲイビデオ出演スキャンダルから、本人のホモ疑惑へと変容している。これは、明らかな差別であるといえる。
その後、まるで日本から逃げるかのようにして、渡米。2004年、アメリカでメジャーデビューを果たすも、記者会見で「大学時代に(ゲイ)ビデオに出たことがあり、今はとても後悔しています。当時は若くお金が必要でした。たった一度の過ちであり二度と同じ間違いはしません」「僕はゲイではありません。これだけははっきりと真実を伝えたかった」とコメントしている。なぜ、彼は、わざわざ自らのセクシュアリティを「ゲイではありません」という形で公表せざるを得なかったのか。ゲイビデオ出演よりも、ホモであることの方が問題とされてしまう。これこそが同性愛差別の正体なのである。
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『週刊現代』2002年11月9日号(講談社/2002年 発行/320円)
一方、寺嶋選手の記事の場合は、「ゲイかどうかは個人の自由であるのだが」と、本人のセクシュアリティについては不問である。書き手も気をつかったに違いない。それが、この10年間に起こったホモを取り巻く状況の変化だともいえるだろう。すこしはマシになってきたのだな、というのが正直な感想であった。
願わくば、ロッテが、ゲイビデオ出演も、他の仕事と同じキャリアとして評価するぐらいの度量のある会社であることを願う。だって、アダルトビデオは、立派なエンタテインメント産業のひとつであるからだ。
 素人モノとはいえ、出演した以上は、プロの男優である。役者である。その演技は、正当に評価されるべきだと思うのだ。「肛門の力をぬいて」と言われたフミヤ君が、ふっと体の力を抜き、やすやすと張り型をくわえ込んでいく。演技かどうかは別として、その身体コントロール能力はプロのアスリートとしては高得点である。これからの活躍が期待できる新人選手であることは間違いない(笑)。

今泉浩一監督『すべすべの秘法』予告編。
さて、素人モノといえば、職業俳優を使わないことで定評のある泉浩一監督の最新作『すべすべの秘法』が公開される。本作は、ゲイ漫画家たかさきけいいちの短編作品を原作に映画化。取り立てて派手な事件も事故も起こらない“きわめてありふれた”ゲイの日常を描いた作品だという。
両親と京都に暮らすリョータは東京での短期研修が決まり、「東京のヤリ友」であるイッセイの家に泊めてもらう事になった。朝はそれぞれが仕事に出かけて夜は一緒に過ごして寝る、ただそれだけになるはずの5日間。家に到着した最初の夜、イッセイはごく自然にリョータとセックスしようとするのだが、リョータは 素直に応じることができない。実は彼には東京に来る前から一つ、気がかりな事があったのだった…。
(「UPLINK」ホームページの作品紹介より)
彼の作品はすべて観ている。一本には出演もしている(笑)。今泉マニアの私である。ところが、この作品だけ未見。一年ぶりのアンコール上映となる今回こそ、見逃せない! しかも、1月17日(土)、上映後のトークショウにも出演させていただく。ぜひ、ぜひ、ぜひ、おいでください。
すべすべ2014のコピー
アンコール上映『すべすべの秘法』+『家族コンプリート』 日程:1月16日(金)〜20日(火)、会場:東京渋谷・UPLINK料金:1800円。詳細は、http://www.uplink.co.jp/event/2014/34374

 

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