第18号 葬儀とお墓と死後事務と ~ 「もしも」に備える 同性カップル編⑩

 

門松は冥土の旅の一里塚 めでたくもありめでたくもなし

おめでとうオメデトウと騒ぐけど、人はお正月で年をとるごとに死へ向かって近づいている……。今夏で49歳になる私の回りにも、「そんなに慌てなくても」と思うぐらい早々に向こうへ渡ってしまった友人・知人が何人もいます。
お正月だからこそ、将来かならず来る「その日」のことを、同性カップルバージョンで考えてみました。

パートナーの葬儀の喪主になれるでしょうか

亡くなるということで最初に思うのは、やはりお葬式のことでしょうか。パートナーのお葬式を出してあげられるのか。親族から「お骨はこちらで引き取って家のお墓に入れる」「親戚の手前、お葬式に来ないでほしい」と言われたなど、悲しみに追い打ちをかける話も聞かないわけではありません。

自分の葬儀はパートナーに喪主になってほしい—そういうときは、遺言でパートナーを祭祀主宰者に指定しておくことができます。
祭祀主宰者は、祭祀財産(一族の家系図、仏壇などご先祖を祀るもの、そしてお墓など)を継承します。祭祀財産は他の遺産(不動産や貯金)と違って分割するものではなく、だれか一人がこれを受け継ぎます。家や土地の慣習で決まるでしょうが、遺言などで本人が指定しておくこともできます(民法897条)。
この祭祀主宰者と、遺族代表として葬儀を主宰する喪主とは、厳密には性質が異なる面がありますが、遺言で祭祀主宰者に指定することで、葬儀やお墓のことはパートナーに任せたいという本人の意思を明確にすることができ、そこを親族側との話し合いの出発点にもできるわけです。

性的マイノリティと葬儀をめぐっては、パートナーがちゃんと喪主や配偶者としての席を与えられたという話もあれば、親族側から出席を一切拒まれたという話もあり、逆に出席はしたが事情を知らない親戚の奇異の目を恐れて自分から友人という立場で末席に座ったとか、さらには菩提寺の住職が勝手に激怒したとか、さまざまな話があります。

人間の通過儀礼として、冠婚葬祭はやはり大切なもの。性的マイノリティの(同性ウエディング)や(LGBT成人式)には多くの人が心を動かされますが、(葬儀)や(法事、周年での追悼会)でも故人と心安らかに過ごせる時代が訪れてほしいものです。

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もしものときも、一生をともにしたパートナーとして見送ってあげたい。性的マイノリティも、人として当然の別れをしたい。そのためにどんなことができるのか。ご一緒に考えていきましょう。(イラスト:キャミー)

 パートナーとお墓を建てたり、そこへ入れますか

つぎにお墓。パートナーと一緒にお墓を買いたい、入りたい、という願いはかなうのでしょうか。
墓苑の区画の土地は、所有権ではなく使用権です。使用権の継承者(つまり子ども)がいないと、墓苑の使用権も買うことができないのが一般的です。また、墓石や納骨施設はどこへ建ててもいいわけではなく、墓地として都道府県知事が許可した場所に限ります(墓地、埋葬等に関する法律10条)。
子どものいない私たちが、あらたに通常の墓地を買ってお墓を建てるということは、むつかしいようです。

ただ、承継者がいないのは性的マイノリティに限った話ではなく、いまどきそんな人はノンケにもゴロゴロいます。それで、寺院などの合祀墓に人気が集まっているわけです。ずらっとお位牌がならぶ位牌堂形式だったり、機械式駐車場よろしく番号を押すと骨壺が拝礼所に出てきたり、家族単位で納骨するお厨子タイプだったり、いろいろあるよう。広告だと80万円ぐらいが相場みたい。お厨子タイプの場合、同性カップルでも申し込めるのか、だれか聞いてみてください(笑)。
公営墓地も、納骨堂や合葬墓、樹木の回りにお骨を撒くタイプなど、いまやいろいろです。都立霊園のパンフレット(5ページ)も参考になります。
加えて昨今は、おひとりさま女性のNPOでもお墓を建立するなど、志を同じくする人たちの合祀墓もいろいろあり、パープル・ハンズでも将来、性的マイノリティのみんなで入れるお墓が作りたいなと思っています。そのときはカップルさんもおひとりさまも、ぜひ、ご予約ください(笑)。

散骨を口にするかたも多いですね。さまざまなNPOや事業体が引き受けており、日本国内の場合、節度ある葬送ということで、海へ散布するのが基本のようです。実行をパートナーにお願いしておけばいいし、イベント好きなゲイなら、屋形船を借り切ってお台場沖でドンチャン騒ぎしたあと、パートナーさんを中心にみんなで散骨セレモニーもいいかもです。

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ちょっと新聞広告の切り抜きを見ても、こんなにありました。お墓をご縁に、お寺でのいろいろな活動(写経や精進料理の会なども)への参加もあったりします。寺院以外にも、合祀墓などに取り組むNPOの活動もあります。

 パートナーの死後の手続きを、私がやれますか

さて、人ひとり亡くなると、じつはさまざまな手続きがあるものです。「死後の手続き」などのワードで検索すれば、葬祭業者から種々の士業者まで、さまざまなかたが遺産相続から役所の手続きまで、一覧を掲載してくれています。
こうした手続きを死後事務といいます。パートナーが他の人に邪魔されたり、あるいは役所や銀行等に断られたりすることなく、あなたの死後事務をきちんと行なえるよう、おたがいに死後事務委任契約を結んでおくこともできます。死んだ人から委任状はもらえませんから、いわば事前に委任状を貰っておくわけです。
遺言を作る場合は、死後事務を行なう負担付き遺贈とすればよいでしょう。

そのまえに、死後事務にあたるパートナーが、あれどこ? これなに? と迷わなくてもいいように、重要な書類や情報をきちんと整理しておくことが大事です。いちいち天国に電話かけて聞くことはできません。
そんなとき便利なのが「エンディングノート」。書店に行けばそんなコーナーもあるし、銀行・葬儀社・介護事業者などが無料で配布していたり(作成者ごとに書き込み項目の重点の置き方が違うところがオモシロい)、ネットでダウンロードできる場合もあります。
財産の情報だけでなく、死後に知らせてほしい人(知らせないでほしい人)、葬儀スタイル等の希望のほか、最近は各種のSNSのIDやパスワード、消去等の希望を書くページも目を引きます。

東日本大震災後、ミドル世代のおひとりさま女性に「エンディングノート」が流行、との新聞報道がありました。2万人の一瞬の死に際会し、自分だっていつどうなるかわからない、と思ったとき、手元のものをここで一度、整理しておきたいと思ったのでしょう。
お正月は一年の計。夢はどんどん羽ばたかせたい。同時に、いまここで死んだら自分はどうしたいのか? 遺言(自筆証書)を書いてみたり、エンディングノートを埋めて、人生の中間棚卸しをするのも、お正月の大事な過ごし方かもしれませんね。

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私の事務所にも、いつのまにか有料・無料のエンディングノートが集まっていました。ネット上に公開されているものもあります。手前は、ミドル女性に「エンディングノート」がブームとの記事(朝日新聞2012年11月18日)

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