第19号 「歩く速度」で老後を考える~「ボクの老後はどこにある?」⑤

 

今月の「老後の新聞」は1月、年の始めを意識した記事をお届けしていますが、3週目の「ボクの老後はどこにある」でも、性的マイノリティの老後を考えるNPO法人パープル・ハンズの1年を振り返り、これからの抱負を語ってみたいと思います。しばしおつきあいください。

私たちの〈暮らしと老後〉を作る活動

パープル・ハンズは2013年4月に設立総会を開催し(都による認証および登記は8月)、昨年4月が設立1周年でした。
1周年の記念イベントとして、4月に「おひとりさまの老後」でも知られる上野千鶴子さん講演会を開催。近年は「在宅ひとり死」を精力的にフィールドワークしている上野さんのお話に、約90名の参加者が熱心に聞き入りました(先生のスケジュールの都合で日が合わず、レインボーウイーク参加イベントになれなかったのは残念でした)

基幹活動である「ライフプランニング研究会(LP研)」と「パープル・カフェ」は、昨年も月替わりで継続開催し、毎回多くのみなさんにご参加いただきました。
暮らし作りに役立つ社会の制度や課題をセクマイの視点で考えてみるLP研では、昨年は「地域の理解者と繋がろう」をテーマに、あえてノンケさんの講師をお招きしてきました(一昨年までは当事者の専門家をお願いしていました)。介護のケアマネージャー、地域で高齢独居の人の見守りにあたる中野区社会福祉協議会、いつかはかならずお世話になる(?)葬儀社、 ゲイの患者さんも多いエイズ拠点病院の医師、のかたがたです。葬儀がテーマの回が、予想に反して普段よりも参加者が多かったことが、印象に残りました。
今月は不動産会社のかたをお招きします(あとで告知)。

LP研のない月は、お茶会形式のパープル・カフェを開催。ミドル世代の悩み、親の介護や自身の老後不安を語る場が少ないなかで、ご好評をいただきました。

この2CHOPOではあまり取り上げられませんが、「ゲイの老後はHIVの老後でもあり、HIVの老後はほぼゲイの老後」—-そうしたリアルな視点から、パープルではHIV領域での問題提起も重ねてきました。いま、薬や治療がとても進歩し、かつてのように感染から短期間で、若くして亡くなることがなくなった一方、HIVをもって老後へ突入するという新しい問題が出てきたからです。
エイズ文化フォーラムへの出講(横浜8月京都10月)、エイズ学会への参加(大阪12月、コミュニティセンター「dista」でのイベントにも出演)などの活動を行ないました。

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 歯に衣着せぬ物言いで鋭いコメントも飛び出した、上野千鶴子さん講演会(右は筆者)

はじめて助成金を受ける

昨年、パープルでとくに特徴的だったのは、はじめて助成金をいただいたことです。
パルシステム東京・市民活動助成基金さまから、中野区内の介護事業者へ性的マイノリティおよびHIV陽性者について研修会(2回)を行なう費用を助成いただきました。研修はその第1回を先月(12月12日)、中野区内の施設で開催しました。区内事業所以外に他区からも当事者の介護関係者が参加してくれ、新しいネットワークが生まれています。いまは第2回研修の準備中です(また後日、告知しますね)。
大和証券福祉財団さまからは、新しいパンフレットの作成費用を助成していただくことになりました。私たちはお金がないのでネットでの広報が中心ですが、高齢のセクマイのかたにはネットが苦手なかたも多く、首都圏でシニアゲイが多い上野や浅草のバーをはじめ、やはり紙モノで情報を届けていく必要があります。春頃には新しいパンフレットを作る予定です。

メディアへの掲載・出演も、いくつかありました。
昨秋は読売新聞でパープルの活動が紹介されました(医療面、10月30日、ネットにも転載)。また、TBSラジオ「荻上チキSession22」での「性的マイノリティの老後」の回(4月29日)や、文化放送「福井謙二グッモ二」の「朝いちテレフォン」(11月12日)でも、お話する機会をいただきました。
もちろんこの「2CHOPO」さんへの連載も、メディア登場ですね。

これらの活動をなんとか継続してこれたのも、会員になってくださったみなさま、そしてLP研等に参加したりメールなどで声を届けてくださったり、ツイッターをRTしてくださった多くのかたのおかげです。本当にありがとうございました。

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パープルはまだ大きな助成や事業委託費を受けて仕事をするだけの実力には乏しいですが、少しずつ助成というかたちで社会の評価を得ていくことは励みとなります。NPOの運営は、助成金に頼りすぎると、助成金獲得が自己目的化したり(いわゆる助成金疲れ)、それが切れたときは活動も頓挫することとなり、自主財源とのバランスも難しいものがあります。まだまだ手探りですが、みなさんとゆっくりと進めていきたいと思います。

「情報センター」型NPOから、将来は「独自事業」型NPOへ

パープル・ハンズの活動は、性的マイノリティの等身大の〈暮らし・お金・老後〉をキーワードに、学び合いと中高年からの仲間作りをテーマとしています。いろいろな情報を収集し、発信する、「情報センター」型NPOといえるでしょう。
その発信は、なによりも当事者へ向けてのものです。

社会では、性的マイノリティについて耳にする機会が増え、啓発系の当事者団体の取り組みもあって、研修を実施したり社内制度を改善したりする企業も見られるようになりました。いま、社会は「聞く耳」を持とうとしている印象があります。
その一方、いちばん働きかけが難しく、耳をふさぎ、変化することを恐れているのが、じつは性的マイノリティ自身なのかもしれません。「ステキでオシャレなLGBT」という明るいイメージさえ、ときには当事者を萎縮させることがあります。
しかし、老後の暮らし方が見えないなかで、ツイッターで「ゲイ 老後」で検索すれば、若いセクマイが「自分の50代が想像つかない」「きれいなうちに早く死んでしまいたい」「孤独死が心配」とつぶやく現実もあいかわらずです。

私達は当事者の一人として、おなじ当事者とともに歩んでいきたいと願っています。セクマイ(同性カップルだったりおひとりさまだったり)もこうすれば老後を生きられる、仲間もいる、とりあえず今できるこんなことからやってみよう、ちょっとだけ勇気を出して一緒に年を重ねていきませんか—-という情報を発信しています。

そんな人の輪が広がるなかから、「こういう事業があると助かる」「こういうものもほしい」「こうすればやれるかもしれない」というアイデアも出てくるかもしれません。
さまざまなかたとのネットワークのなかから、今後、性的マイノリティの高齢期を支えるための事業が運営できるような、「独自事業」型NPOへと成長していけたらと願っています。

スタイリッシュでもなく、企業が目を留めてくれるわけでもない、地味で不器用な団体ですが、今年も多くのかたのご参加をいただきながら、「歩く速度」で活動を進めてまいりたいと存じます。

 


【LP研1月例会】
 性的マイノリティと不動産 〜〜 借りる、買う、貸す、貰う

と き:1月25日(日) 午後5〜7時
ところ:コミュニティセンターakta
お 話:不動産会社常務取締役
(会場では社名・お名前公開でお話します)
参加費:500円(会員無料、会場で入会可)
性別・セクシュアリティ・年齢不問 予約等不要 お気軽においでください!

 

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