女装写真家・立花奈央子展『女装の軌跡と幸福論』2CHOPO特別インタビュー

女装家であれば一度は彼女に写真を撮って貰いたいと誰もが思う、女装カメラマンとして話題の立花奈央子氏。そんな彼女の6年間の集大成ともいえる写真展が今月26日(月)から2月7日(土)まで銀座のヴァニラ画廊にて開かれる。開催に先駆けて、2CHOPOでは彼女に写真展に対する想いと彼女の女装に対する考えを伺い、お伝えする。

4faf9d4d6049d1cd39148ea57f27b642
男らしさを残したままの“女装”

 私が女装の人の写真を撮り始めたのは6年ぐらい前なのですが、最初の頃の認識は浅くて、女装というのは「女になりきること」「完全に女にしか見えないようにすること」だと思い、いかに人の目を騙すかという撮影しかしてなかったんです。

ですが、何が人を魅力的に見せるかを考えた時、女としての造型を整えるより、笑顔が光った方がかわいく見えることから、表情や気持ちのありようの方が大事なんだと気付き、「男らしさ」を残したままでも、女装を十分に楽しめる、とそう柔軟に変わっていきました。その変遷が今回の写真展『女装の軌跡』というタイトルを付けた理由の一つです。

昔の女装というのは「完全に女にみえないと女装してはいけないと思われていて、のど仏を隠す、眉毛をつぶした上から細く書く、筋肉や血管を隠すために長袖を着るなどして、男の要素を消していました。でも、たとえ筋肉や血管が目立っても、顔がごつくても、一般の人に迷惑の掛からない範囲であれば、好きな格好をして遊んでいいんじゃないかって思ってます。

cba283e0e70033d9424fc1060f7d02aa
写真展の主役は「エッセイ」

 これまでの6年間に撮ってきた女装にまつわるポートレート写真を色々な角度からピックアップして、一同に展示します。被写体は多種多様で、女の子に見間違えられるような男性、ニューハーフ、休日だけ女装をするパートタイム女装、GIDなど。普通の人の「女装像」からはこんな質問が出ます。「将来女になりたいの?」「男が好きなの?」など。でも、彼女(彼)たちは出発点からゴール、たどるプロセスまで全部違う。女装を伝えるには、できるだけ沢山の切り口で見せる必要がありました。数十人に及ぶ被写体が展示される予定です。

タイトルの『幸福論』という部分には、被写体の方たちが女装行為を様々な形で抱えた生活のなかで、社会と折り合いをつけながら自分らしさをどうやって表現し、どこに幸せを見出すか、という意味合いが持たされています。展示のもう一つの顔として、モデルには女装にまつわるエッセイを書いてもらい、写真に添えて掲示します。本人の人柄と人生が見える文章によって、写真の見え方や大きく変わるでしょう。人は様々な個性を持っているんだ、という当たり前のことに改めて気づかされると思います。

社会が決めた「性別はかくあるべき」なんて、しゃらくさい。
人は自由にありのままの自分を認め、謳歌できる。

リーフレットに書かれたこの文言について。男だから男らしくしなさい、女だから女らしくしなさい、と社会では強制されるけれど、性別というのはきっちり50:50に出来るものではなくて、男らしい女もいれば、女らしい男もいますよね。だからといって社会が決めた、男だからかっこよく、強くありなさいという圧力に合わせて自分を変える必要はなく、あなたはあなたのままでいいんですよ、というメッセージが込められてます。だから、女らしいものが好きな男の人がいたら、そのままでいい。「ズボン履きたくない!」でもいい。TPOは最低限守って、どうしても履かなきゃいけないところでは履いて、そうでないところでは好きな恰好をすればいいと思うんです。

話はそれますが、私はスカートが大嫌いなんです。本っ当に嫌いで。普段はずっとパンツスタイルなんですけど、単純にスカートってものが生理的に嫌なんですよ。落ち着かないし、脚を閉じないといけないし、ポケットに物が入らない(笑)女というだけでスカートを履くというのを強要され続けて、本当に苦痛で。それと同じ意味でズボンを履くのが嫌だって男の人がいたっておかしくないし、そういう人が社会で決められているからと毎日ズボンしか履けないのは辛いと思うんですよね。だから、リーフレットの文言は自分のためでもあります。自分が好きなように生きていたいから、みんなを巻き込ませてもらいます(笑)

色んな人がいて、無数の価値観があるんだから。「こういう風に生きていくべき」「男は女と結婚して、子供を作って、親の面倒をみるべき」という、社会が決めた規範があるけれど、そんなのどうだっていいじゃないかっていいたい。
特にLGBTの人だと、自分のセクシャリティと社会規範の間でどうやって折り合いをつけていくかで悩むところは数えきれないほどありますが、一番大事なのは、「自分の幸せのかたちを見つけること」ではないかと思います。社会で認められるように立派に生きるのではなく、どんな形でも「自分が自分らしく生きる」ことができれば最高ですよ。

3e2d6fd57746d9967fe6980f247d9fce
女装に縁もゆかりもない中年サラリーマンに来て欲しい

 周りに女装家とか、LGBTとかがいない方に来て欲しいです。特に中年のサラリーマンのような、ある程度固まっちゃってる人だと面白いかな。女装界隈のことを見たことも聞いたことも、ひょっとしたら見えてても見えていないフリをしてたかもしれない方には、すっごい拒絶反応が出るかもしれませんが、そういう人にこそ、多様な価値観に触れて、知ってもらうことが大事。知らないことが偏見を生むと思っています。

マイノリティでいると、分かってほしさに一生懸命自己主張してしまいがちですが、相手の首根っこを捕まえて言って聞かせても、かえって相手が引いてしまうだけ。さらっと見せて、理解できないのはかまわない。何か引っかかるところがあったら、それについて考えてもらう。そのくらいの距離感で、それぞれの形で何らかの気づきを得てもらえたら、展示は大成功ですね。

19ea14bf947fe48d0469b7410f0cbac2

 


立花奈央子展 『女装の軌跡と幸福論』
日時:2015年1月26日(月)~2月7日(土)
会場:ヴァニラ画廊 Vanilla Gallery
東京都中央区銀座8-10-7 東成ビル地下2F [アクセス詳細]
時間:月~木曜12:00~19:00、金曜12:00~20:00、土、日曜12:00~17:00
料金:500円
公式サイト:http://www.vanilla-gallery.com/archives/2015/20150126a.html

立花奈央子ギャラリートーク
日時:2015年1月31日(土)17:30~
会場:東京都 銀座 ヴァニラ画廊
ゲスト:加茂碧唯(恥じらいレスキュー)、LadyBeard(ヒゲ女装パフォーマー)、宮田徹也(美術評論家)
料金:2,000円(ドリンク付)
※本イベントは予約制ではございません。ご参加の方は、16時半よりご案内の列にお並びいただけます。
※イベント当日の営業時間は12時から16時半までとなります。16時半には閉場いたしますので予めご了承ください。

4531a73288a2025f64cd71a1ae7c44b8

 

Top