第21号 外国人パートナーと現地で同性婚できますか? ~ 「もしも」に備える 同性カップル編⑪

 海外で日本人が同性婚ができない?

日本国籍の人が外国人と、日本以外の国でその国の法律に従って結婚する場合、その国での婚姻登録窓口で、本国ですでに結婚していないかなどを証明する書類の提出が必要です。婚姻要件具備証明書とか独身証明書と言われるもので、法務局や本籍地の役場で発行してもらいます。

この証明書には、以前は結婚する相手の性別を書く欄がなかったのですが、2002年5月24日に法務省の民事局民事第一課長が出した通知で、結婚の相手の性別を記載するよう書式を改め、相手が同性の場合、この証明書を交付しないことにしました。

この通知では、「今般、外国において認められている同性婚に使用するために同証明書が取得された事例がありました」「同性の相手方との婚姻について、……日本においても有効に成立させ得るように誤解されるおそれがあります」「婚姻の相手方が日本人当事者と同性であるときは、日本法上、婚姻は成立しないことから、同証明書を交付するのは相当でないと考えます」(『戸籍実務六法』所収)と述べています。また、独身証明書を発行できる市区町村役場へも、これに従うよう協力を求めています。

これ以後、日本人は海外でその国に同性婚の制度があっても、同性婚ができない状態になっていました。

このことを報じた2002年8月17日付け「毎日新聞」(*参照)では、女性やマイノリティの人権問題にくわしい角田由紀子弁護士が、「同性婚を認めている国で、同性と結婚しようと思う人が結婚できなくなる。国際的に同性婚を認める流れにあるのに、なぜそのような意地悪をするのか。重婚にならないことだけを証明すればいいのであって、相手の名前や性別、国籍を書かせるのはおかしい」と述べています。

 *この記事は大阪本社発行の毎日新聞に掲載されたもので、東京本社最終版を収録する縮刷版では確認できませんが、掲載時にいくつかのブログで書写されたものがありますので(著作権上の懸念はありますが)、それらをご参照ください。    

*「婚姻要件具備証明書(独身証明書)とその請求手続きについて」は、
東京法務局>取扱い事務のご案内>戸籍>よくある質問と回答
をご参照ください。
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新証明書の発行で、同性婚が可能になったが……

この措置は、法務省の一課長の通知によるものですから、この通知が撤回されるなど行政レベルで変化があれば、日本人も海外で同性婚ができることになります。そして事実、課長通知が出てから7年後の2009年にそういう変化が起こりました。

社民党の福島瑞穂党首(当時)が申し入れ、法務省で検討の結果、別形式の証明書を発行することになったのです。このことの背景には、社民党内での石川大我氏(社民党員)ら性的マイノリティ当事者の働きかけがありました。権利を求める当事者が政治に働きかけ、政治もそれによく応えて成果を得た、典型的な事例だと思います。
新証明書の発行を伝える報道(共同通信)

ところで、こうしてめでたく海外での同性婚ができたあと、日本人であるご本人はどうなるのでしょうか。

海外で婚姻した場合、日本国内の本籍地の役場に対して、「私は婚姻しました」ということを伝え、日本の戸籍にその旨、記入してもらうことになります。
しかし、この報道があったとき私が法務省の担当部署(民事局民事一課)に電話して聞いてみたところ、日本は同性婚を認めていないので、その婚姻を日本の戸籍では受け入れないとのことでした。また、海外で同性婚したあと、日本人の帰国にともない同性配偶者が日本へ入国・滞在するにあたり、「日本人の配偶者等」の在留資格(いわゆるビザ)を申請しても、そもそも配偶者ではないのだから、それも出さないとのことでした。

つまり、法務省によれば、相手の国ではその日本人は既婚者になるけど、日本では未婚者のままである、という状態となるわけです。それについても、法を定めるのはその国その国の主権であり、海外で合法でわが国で違法であるとかその規定がないということはままあることである、との回答でした。

なるほど、マリファナは某国では合法でもわが国では違法となる、というような例はいろいろあるでしょう。しかし、婚姻はそういうレベルと同列にできるのでしょうか? たとえば、死亡時の相続などで遺言がなければ、同性配偶者はさっそく相続人としての権利はないことになってしまいます。

海外で有効な同性婚をした日本人の同性配偶者の扱いについて、日本政府はどう考えるのか、一つの課題が示されていると思います。

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在留資格にはさまざまあり、これらの在留資格のどれかを得なければ、外国人は日本へ入国・滞在することができません。こうした外国人の在留資格を入国管理局へ申請取次ぎするのも、行政書士の仕事の一つです。入国管理局HPの在留資格一覧でも参照できます。

日本政府は、外国人の同性婚を認めているか?

最後に、読者の多数をしめる日本国籍者にはあまり関係ないかもしれませんが、海外で同性婚した外国人カップルが日本に在留するさいの資格などについて、整理しておきます。

通常、外国人の夫婦の一方がなにかの在留資格を得て日本に滞在することになり、その配偶者等を帯同する場合、その配偶者らには「家族滞在」という在留資格が付与されます。
在留資格の認定は行政の裁量権が広く、入国管理局で『入国・在留審査要領』なる膨大なマニュアルが作成されています。

その『入国・在留審査要領』の「家族滞在」の項には、「「配偶者」とは、(中略)外国で有効に成立した同性婚による者も含まれない」(「第27節 家族滞在」より用語の意義、抜粋)と明記されています。

また、一方が「永住者」としての資格を得て日本に永住する場合でも、その同性配偶者に「永住者の配偶者等」という在留資格が与えられるかについては、「婚姻は法的に有効な婚姻であることを要し、内縁の者及び外国で有効に成立した同性婚の者は含まれない」(「第29節 永住者の配偶者等」より「配偶者」の注、抜粋)としています。

日本政府は、外国人どうしの同性婚も日本国内では認めない方針をとっているようです。

 *『入国・在留審査要領』は、現在2014年9月版。東京都行政書士会が情報公開請求し、会員行政書士向けサイトで公開しているpdf版を閲覧。

とはいえ、こうした点をめぐっては、いくつかオモシロ(?)い動きもあることを紹介しましょう。

2014年まで大阪・神戸アメリカ総領事として在任したパトリック・リネハン氏は、自身がゲイであることをオープンにし、同性の配偶者がおられ、かつ彼を日本に帯同していました。その同性配偶者の在留資格について2013年3月15日、衆議院法務委員会で西根由佳議員(日本維新の会、当時)から質問された谷垣法務大臣(当時)は、

 これは、外交関係に関するウィーン条約に基づいて、「外交官の家族の構成員でその世帯に属するものは、」という扱いの中で認められているわけでございまして、外交官以外に及ぼしている措置ではありません。

と答えています。逆説的ですが日本政府も同性配偶者としての在留を認める場合があるということです。外国の首脳や大使には同性婚している人もいます。ビザ以外でも今後、来日のさい「配偶者同伴」がプロトコルの場面(宮中晩餐など)での扱い・処遇が注目されます。

また、おなじ国会質問のなかで、いわゆる「高度人材」をより多く日本に呼びこむための方策として同性配偶者への在留資格について聞かれた谷垣法相は、

 現在、日本の家族法、親族法等々が委員(西根議員)のおっしゃるような方向ではない(永易注:西根議員は「成長戦略の一環として、高度人材の同性配偶者の帯同を御検討いただきたい」と要請)というのは、やはり日本人の考える家族観と申しますか、そういうものが背景にあるというふうに私は思っております。
 今後それがどういう議論になっていくかというのは、これはまたこれからの課題でしょうが、少なくとも、現状においては、私どもは、今の日本の民法あるいは日本の入国法に従って判断をするという以上にはちょっとお答えができないわけでございます。

と答えています。(以上、衆議院議事録より)

ところが、こうした外国人どうしの同性配偶者の取扱いについて、日本で同性婚の成立を掲げて議員や関連省庁へのロビーイング活動をしているEMA日本は、私のメールによる質問にたいして、つぎのように答えています。

 政府も海外における同性婚の増大を踏まえ、同性配偶者の扱いを異性配偶者と異なるものとすることは人道上問題であるとの認識を持っているようで、近年は「特定活動」の在留資格(法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動)で同性配偶者へのビザを出す動きがあるようです。私たちでは実例を把握していませんが、すでに特定活動によって同性配偶者の入国滞在が認められた例はあると法務省入国管理局入国在留課に聞いたことがあります。

西根議員の質問とEMA日本のこのコメントのあいだに2年弱の時間があるわけですが、こうした件についても、今後の変化等に注目ですね。

なお、同性カップルのそれぞれが在留資格を得て日本に滞在して同居する場合、べつべつに住民票を作るのではなく、一方を世帯主に、もう一方を「縁故者」として世帯の住民票が作成できることが知られています。「妻」「夫」ではないですが、住民票では同性のパートナーシップをある程度、認めているわけですね。
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