第23号 性的マイノリティと不動産、業者に徹底インタビュー ~「ボクの老後はどこにある?」⑥

2月12日、「渋谷区が同性カップルに結婚相当の証明書」「住宅賃貸や病院面会に効果」の報道は激震でしたね。一部には、「渋谷区で同性婚始まった」と、早とちりなツイートも見かけましたが、区はわざわざ「結婚とはまったく別の制度」「法的効果はない」としています。条例を提案することが明らかになっただけで、まだ条文や登録要件もわかりませんし、そもそも可決するかどうかさえ不明です。
でも、その日のメディアの騒ぎようはスゴかった。行政が性的マイノリティの存在を「公認」することのアナウンス効果は、絶大なものがありますね。もちろん当事者のなかにも、「カップルだけかよ」「また恋愛礼賛か」「××やってる渋谷区がコレってどうよ……」などいろんなご意見があるのは私も承知。ただ、それでもこのアナウンス効果は同性カップルにとどまらず、性的マイノリティ全体の認知拡大・地位向上に確実につながっていると思うのは、楽天的すぎ? まずは3月、渋谷区議会での討論、そして行方を注目です。

さて、条例の提案理由に、同性カップルが住宅賃貸の場面で断られる、などがあげられていました。ということで、ちょうど1月のパープル・ハンズ「ライフプランニング研究会(LP研)」で、「性的マイノリティと不動産」をテーマに不動産業者のかたにいろいろうかがいましたので、今回はそのご報告をしたいと思います。
お話くださったのは、都内に7店舗・2営業所を展開するS不動産会社の常務取締役、Aさんです(会場では会社名、お名前を公表してお話いただきました)。

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 ホントに同性二人は家を借りられないのか?

性的マイノリティと不動産をめぐっては、「同性カップルでは家を借りられない」「中年二人、老年二人は不可能」と言われてきました。まず、そこから斬り込んでみましょう。

「どちらかといえば厳しいですが、同性二人可の物件はあるんですよ。借りられない原因の第一は営業担当者の問題で、担当者がオーナーに相談もせず、同性二人は勝手に断るケースも多い。駅前の不動産など、仲介手数料メインのところでは、むずかしそうだと思うのはどんどん断るんです。非効率ですから」
「われわれは長年の営業のなかで、オーナーさんから管理を受託している物件を多数もっているし、生活保護、水商売、外国人、無職、フリーター……そういう困難を抱えたかたでも可能な物件やオーナーもいろいろ開拓してきました。信頼ができてくると、あなたの裁量で好きな人入れてくれていいよ、というオーナーもいます。そういうオーナーや物件をどれだけ持っているかが会社や営業担当者の力量であって、仲介料稼ぎの駅前型はそれがないわけです」

私もうかつにして、不動産屋さんにも2パターンあることを、今回はじめて知りました。
では、Aさんのお店で上手に家を探してもらうには、なにかコツがあるのでしょうか。

「お客さんにお願いしたいのは、最初からすべて話してほしいということでしょうか。カップルであるとか経済状況もふくめ。現実には一人が入居し、あとで居候するパターンが多いでしょうが、入居者があとあと肩身の狭い思いや不安を感じるぐらいなら、はじめから2人名義で契約をしてはどうでしょう。言いにくいのはわかりますが、きょうも50代の「友だち」二人で入居したいというお客さんの物件を探したところです。われわれも、あとから違う事情が出てくると困る場合もあります」

そのへん、御社は社員さんの対応が可能だ、と。

「うちはお客さんに失礼な対応はないと思っています。つねづねうちの社員には、お客さんにはいろんなかたがいらっしゃり、他の不動産屋さんで断られたかたもいらっしゃる。われわれは口幅ったいですが社会貢献性ももった仕事である。そういうかたに住まいを見つけるのが君たちの仕事だ、物件がないと言うな、と指導しています」

Aさんは仲間とこの会社を立ち上げたころ、まだお客さんが少ないので、水商売のかたOKの物件を開拓し、お姐さんたちに営業し、あるマンションはほとんど水商売の寮みたいになっていたこともあったとか。その歴史あっての発言です。
もちろん、同性二人で住むことに理解のないオーナーもいるでしょうが、おなじように、若者二人はいや(友だち呼んで騒ぐ)、若夫婦はいや(別れたら家賃払えないだろう)、子ども連れはいや(汚す)など、オーナーごとに思い込みはあるもので、同性カップル証明1枚あればハイ、貸します、となるかはわかりません。お客さんの多様性に応えられるよう、オーナーや物件も多様に揃え、かつオーナーたちへの説得の努力を怠らないのが不動産屋さんの務めだとおっしゃっていました。
ことさらLGBTフレンドリーを掲げるより、「すべてのお客さんに住まいを」という姿勢、私は納得でした。

 *後日の電話取材で、見た目と書類の性が違うトランスジェンダーのかたにも、同様の対応と努力をすると答えてくださいました。

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今回のLP研も関心が高く、30名近いかたが参加されました。なお、UR(旧住宅公団)のハウスシェアも、同性二人の連名契約が、問題なく可能です。こちらの記事もご参照ください。

 セクマイの老後=高齢独居の場合は?

性的マイノリティと不動産の問題は、同性カップル暮らしだけではありません。セクマイは通常の結婚制度がないため、「おひとりさま」として高齢期を迎えることが多い現実から、昨今の「高齢独居」と住宅賃貸も気になるところです。

「高齢独居はホントに多い、まさに社会問題ですね。私たちは、生活保護のかたの入居困難のときもそうでしたが、いま抱えているオーナーさんたちに、高齢独居のかたが増えている現実をご説明し、これからはこういうかたの入居にも理解をもたないとダメだし、それがオーナーさんの責務でもありますよ、と一軒一軒説明しています。うちではいくつかの区と、生活保護の人の住宅探し窓口の提携を結んでいます。オーナーは最初、先入観から生保の人へ抵抗がありましたが、実際、入居しても問題はなく、理解が進みました。それとおなじことを、いま高齢者対策として取り組んでいます」

オーナーさんは高齢独居の入居に、どんな抵抗を感じるのでしょう。

「やはり「孤独死」などで、いわゆる事故物件になることですね。事故といっても、どんな亡くなり方をしたのか—-病死か事故死か他殺か自死か、どれぐらいたって発見されたか、どういう場合に告知義務があるのかなど、事故物件には定義や行政のガイドラインがないんです。各会社やオーナーの判断です。ただ、事故があったのに告知をしなかったらペナルティー、つまり借り手から瑕疵担保責任を問われることになります。うちはそのことがあってから7年間は告知し(2人目以後の借り手であっても)、家賃の減額をすることにしています」

超高齢社会の現在、家賃債務の保証、定期的な見守り、死後の片付け契約など、高齢独居の賃貸困難の解決のために、官民でいろいろな事業が始まっています。そういうサービスに加入している高齢者なら、オーナーも貸しやすいでしょう。私たちセクマイも知っていてよい動きではないでしょうか。
ちなみに保証人といえば、いい年になって親も亡く、保証人が立てられなくて家が借りられないという声も聞きます。そのへんはどうなのでしょう。

「いまは保証会社がほぼ必須で、保証人の有無はあまり問題になりません。保証料は、初回は家賃の半額。以後、年ごとの更新料が1万ずつとか、そんな感じです。引っ越しのさいの経費には、保証会社利用の保証料も加えておいてください」

現場はずいぶん変わってきているな、という印象でした。

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高齢独居の人の入居には、官民でさまざまな取り組みがされています。写真は高齢者住宅財団とか東京都防災・建築まちづくりセンターですが、その一例です。Aさんの会社では、お世話した高齢者に、その後もときどき電話かけて様子を見たり、遠方の身寄りから「連絡が取れないのだが見てほしい」と依頼されたりすることもあるそうです。あと、高齢者向けの住宅(サービス付き高齢者住宅とかシルバーピアなど)に転居するのも一案です。

自分の事情を理解してくれている味方(ノンケ)を作る

当日はこのあとも、「購入か賃貸か?」「新築市場優先で、中古市場が未熟な情況」「競売」「任意売却」など、購入にからむ話も出ました。また、投資用マンションの情況についても、ココだけの話(笑)などもうかがえました。
ほかにも、いわゆる事故物件はけっこう人気が高い、でも内見に行ったら「あ、ダメ、感じます」と辞退されたり、入居後も「やっぱり出た……」と言われた。夜逃げされた家を見に行ったらニシキヘビだけが残っていた。いつのまにかオレオレ詐欺の事務所に使われていた。余談も盛りだくさんでした(笑)。

また、「老後はみんなでグループホーム」と、なにかとセクマイ界隈で話題にのぼるシェアハウス。Aさんの会社でも以前、1棟、シェアハウスの管理を受託していたそうですが、あまりにも入居者間のトラブルが多く、手間がかかりすぎて管理から手を引いたことがあるそうです。

「テレビなどの影響で、入居希望者は多いのですが、想像していたのと違ったと言って、3、4か月で退去されるかたもいます。われわれも入居のさい、想像していたのとは違いますよ、と説明しているんですけど(笑)」

もちろん、うまくいっているシェアハウスもいろいろあります。趣味がおなじ人が集まるとか、共同子育てを実践など、コンセプト系とでもいうものは人気も高く、空室が出てもすぐ埋まる情況だとか。「(高齢)セクマイのためのシェアハウス」がそのままコンセプトとして通用するかどうかはわかりませんが、そのためにはどんな工夫があるとOKなのか、企画力のある人にはぜひ考えてほしいものです。

最後に、家探しのコツは、その不動産会社、その担当者とずっと付き合っていくことだとか。オーナーは「借り手はどんなかた?」とかならず聞きます。以前から付き合いのある担当者なら、「全然問題ないです、こういうかたです」「うちで借りていただくの、もう何度目です」と言えます。
いまはネットで先に物件を探すパターンが多いですが、一つの不動産屋さんと付き合いつづけるのも、古くて新しい、上手な借り方・探し方かもしれません。同性カップル、見かけと書類の性別が違うトランスの人……自分の事情を理解してくれている味方(ノンケ)を一人でもいいから開拓すること、その勇気をもつこと。私たちのがわでも努力することはあるのかもしれません。

 


*こちらの不動産屋さんに家を探してほしいかたは、私あてお問合せください。会社名をご連絡します(私ならびにNPO法人パープル・ハンズは、一切、仲介料等はいただいていません)。
*また、こちらの会社で働いてみたい(社員、アルバイト等)というかたは、常時募集中だそうです。ご興味のあるかたも、私あてお問合せください。セクシュアリティ等、一切不問です。

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