憲法は同性婚を禁止していないー法律家が報道関係者へ要請ー

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LGBT支援法律家ネットワークの有志が、2月16日付けで報道関係者に対し、「同性婚と憲法24条の解釈に関する報道について」と題する要請文を発表。このたび一般に対し、この要請文を公開することになりました。2CHOPO編集部でもこの要請文を入手しましたので、ご紹介します。

この要請文は、さきごろ大きなニュースとなった渋谷区の同性カップル証明書の報道のなかで、「憲法24条1項は、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すると規定しているので、日本では同性婚が認められない」との解説や論評が散見されることに対し、「憲法24条は同性婚を否定しておらず、同性婚制度をもうけることは何ら憲法24条に違反するものではない」との立場から、法律家として、「同性婚に関する憲法の規定の正しい解釈」を説明し、「今後の報道において、同性婚について憲法の誤った解釈が視聴者や読者に伝えられることのない」よう要請するものです。

当初は報道各社への送付や記者クラブへの配布にとどめていたところ、新聞報道において要請文の発信者と趣旨が紹介され公知となったことから、一般にも全文を公開することにしたものです。すでに同ネットワークのメンバー有志のフェイスブック等への掲載・シェア等が始まっています。

2CHOPOでもこの要請文を掲載し、多くのかたの議論の参照としていただきたいと思います。

※LGBT支援法律家ネットワーク:レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーなどのセクシュアル・マイノリティを支援する法律実務家・専門士業の全国ネットワーク。2007年に立ち上がり、現在では、弁護士、行政書士、司法書士、税理士、社会保険労務士など70名以上が参加している。各地のプライドパレード等のさいには、関連イベント(トークショーや相談会)を開催し、好評を得ている。


2015年2月16日
報道関係者各位

同性婚と憲法24条の解釈に関する報道について【要請】

LGBT支援法律家ネットワーク有志

要請の要旨
①「憲法24条1項により、日本では同性婚が認められない」との誤った憲法解釈を安易に報道することのないよう、強く要請します。
②憲法24条1項が「両性の合意」という文言を用いているのは、人々を「家制度」から解放し、男女平等の思想を宣言するという趣旨であり、同性婚を排除するものではありません。
③「個人の尊重」を定める憲法13条において保障される自己決定権の1つとして、また、「法の下の平等」を定める憲法14条に照らし、同性婚制度をもうけることは憲法に違反するものではありません。
④同性婚と憲法24条の関係について報道する際には、上記②、③の正しい解釈についてきちんと報道されるよう、強く要請します。

1 はじめに
本年2月12日、東京都渋谷区は、区内に住む20歳以上の同性カップルを「結婚に相当する関係」と認め、一定の要件のもと、パートナーであることを公的に確認する証明書を発行する条例案を区議会に提出すると発表しました。また、他の地方自治体においても、同様の条例の制定が検討されているという報道がなされています。私たちは、同性カップルの存在を認め、その生活をサポートしようとする渋谷区や各自治体の取組みを歓迎し、大きな期待を寄せています。
このような状況の中で注目されるのが、家族生活における個人の尊厳と両性の平等について定めた憲法24条です。同条の解釈について、渋谷区の前記条例案を巡る各種報道の中で、「憲法24条1項は、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すると規定しているので、日本では同性婚が認められない。」との解説や論評が散見されました。
しかし、以下に述べるとおり、憲法24条は同性婚を否定しておらず、同性婚制度をもうけることは何ら憲法24条に違反するものではありません。
私たちは、同性婚に関する憲法の規定の正しい解釈について説明するとともに、今後の報道において、同性婚について憲法の誤った解釈が視聴者や読者に伝えられることのないよう、強く要請致します。

2 関連条文
憲法24条【家族生活における個人の尊厳と両性の平等】
① 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
② 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

憲法13条【個人の尊重】
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

憲法14条【法の下の平等】
① すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
② 略
③ 略

3 憲法24条1項の趣旨について
日本国憲法が施行される以前の日本社会では、戸主を中心とした封建的な家制度のもとで、人々は自由に婚姻や離婚をすることができず、特に女性は男性と比べて様々な制約が課されていました。
日本国憲法24条1項の趣旨は、戸主の意向によらず当事者の合意のみによって婚姻が成立するものとして家制度から人々を解放するとともに、男女平等の理念を明らかにして、女性が男性と対等に婚姻生活を営めるようにすることにあります。
同性婚に関しては、憲法24条1項が「両性」という男性と女性との関係を前提とする文言を用いていることから、同性婚を認めていないという見解があります。
しかし、前述の憲法24条1項の趣旨からすると、「両性」という文言が使われているのは、単に男女平等の理念を明らかにしたものに過ぎず、同性婚を排除する趣旨ではありません。そもそも、同条項が制定された当時、想定されていた夫婦像は男性と女性による一夫一婦の関係のみであり、同性婚は念頭に置かれていませんでした。そのため、同条項が同性婚を認めないという理念に基づくものと解する余地はありません。
したがって、憲法24条1項は同性婚を認めていないという見解は、同条の趣旨や制定経過についての理解を欠くものと言わざるをえません。

4 同性婚に関する憲法規定の解釈
以上のとおり、「憲法24条1項は同性婚を否定していない」というのが憲法の趣旨や制定過程を踏まえた正しい解釈です。したがって、日本で同性婚制度をもうけたとしても、憲法24条1項に違反することにはなりません。日本国憲法が同性婚制度を禁止するものではないということは、憲法学者、民法学者からも有力に唱えられているところです。
さらに付け加えると、私たちは、同性カップルに対して何らの法的保護が認められていない日本の現状こそ、憲法上の重大な問題があるものと考えています。
すなわち、「個人の尊重」を定める憲法13条により、自分の人生・生き方について自分で決める権利である「自己決定権」が保障されていますので、同性カップルと生涯を共にするという生き方も、自己決定権の1つとして、男女のカップルと同様に保障されるべきです。しかし、現在の法制度においては、同性カップルに対する特段の法的保障はされておらず、男女のカップルのみが、婚姻やそれに伴う各種の保護を受けています。このような現状は、法の下の平等を定める憲法14条に照らしても、是認できるものではありません。

5 まとめ
各位におかれても、今後の同性婚を巡る報道にあたっては、上記の考え方を十分にご賢察のうえ、「憲法24条により、日本では同性婚は認められない」という誤った見解を安易に伝えることのないよう、強く要請します。

以 上

 2015/02/24 12:30    Comment  ニュース   同性婚              
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