#24 ロンドン70年代ゲイリブの同窓会

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渋谷区や横浜市などの同性パートナーシップ制度の導入への動きに沸く日本のメディアとSNS。社会のシステムが変わるというのは、突然自動的に変わるわけではなく、それ以前に変化を求める人たちの運動や努力があるもので、それはここロンドンも同じである。先週末、70~90年代に活動していたというLGBTのテーマに特化したシアターグループのイベントに行ってきた。
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『Homosexual Acts』(ホモセクシュアル・アクト)と題されたこのイベント、それはここ英国で初めて行われたゲイのシアターシーズンのタイトルだそうだ。このシアターグループ、“Gay Sweatshop”(ゲイスウェットショップ) が発足してそれを初めて行ったのが1975年の2月。今回のイベントはそれから40年という節目を記念して、当時の作品の一部をいくつか抜粋して芝居をし、それを見ながら当時を振り返るというものだった。
ダルストンと呼ばれるエリアにある、もとは何かの工場だったところを改造した小劇場に入る。なんだか客席の雰囲気が他の芝居やシアターイベントとはちょっと違う感じがした。その客席には元気なおじいちゃんおばあちゃんばかりといった様子で、お互いに懐かしい顔だとわかると、
「最後に会ったのは20年前だな、元気かい?」
などと挨拶をしている。いやはや、まるで同窓会に紛れ込んでしまった感覚を覚える。その多くの人が同性同士のカップルのようで、長い年月をかけてそうなったんだというなんとも柔らかい雰囲気が醸し出されている。いくらロンドンに来てゲイやレズビアンを街で見かけることに慣れたと言っても、この年齢層の方たちが同性同士で手を繋いだり、仲睦まじくしているのは、なかなかお目にかかれない。今までに見たことのない光景だった。
イベントが始まると司会者が順に当時のメンバーを順に紹介し、呼ばれた人は舞台に上がっていく。彼らは当時の劇作家、役者、舞台美術のデザイナーとして活躍していた方々。70年代に活動していて当時20~30歳代だと考えれば、現在はもう60歳~70歳だろう。
スラっとしたスーツを着こなして颯爽とでてくる人もいたが、体の自由が利かなくなっている人も多かった。杖をついて足がおぼつかない人、手の震えが止まらないままスピーチをする人、用意した紙を読み上げる途中で、老眼鏡をし忘れたといって笑いを誘う人と様々である。
しかし、その体の衰弱ぶりが強い対比となって、逆に彼らのスピーチを際立たせていた。熱意が込められたその言葉は力強く、当時いかに自分たちで、自分たちの権利を勝ち取ろうとしたのか、なぜそれをする必要があったのか、自分たちは誰なのか、と滔々と語られていた。彼らの顔はスピーチが終わる頃には紅潮し、瞳はステージの照明を弾くように輝き、強く若い力がみなぎっているようだった。
そのスピーチの間に挟まれる当時の芝居は、若い役者によって演じられ、ラブストーリーだったり政治的なLGBT解放運動(ゲイリバレーション=ゲイリブ)の様子など、70年代当時のゲイの生活が垣間見えるものだった。現代に生きる僕らが、当時の生活を見ることで、愛の形は今とそんなに変わらないなと思わされたり、その一方でLGBTを取り巻く環境は大きく変化を遂げたことに気づかされる。
もちろんここにいる人たちだけが、演劇のみが社会を変えたわけではないだろう。他にも社会運動だったり、政治だったりと、それぞれの形で自分たちの権利を勝ち取ろうとした人はいるのだろう。それに気づかせてくれたのは、ある役者のスピーチだった。
「久しぶりに懐かしい顔に会えて、今日は本当に嬉しい。そしてあの当時、たくさんの仲間がいてこういった活動ができたことを誇りに思う。今日ここにいるみんなはもちろん、今日たまたま来れなかった人、エイズやヤク中で死んじまったヤツもいるが、共に歩んだその仲間全てに感謝し敬意を表したい」
ロンドンでは同性婚が認められ、街で手を繋ぐこともでき、最近始まったドラマシリーズでは中年のゲイが主人公に置かれ人気を博している。40年前と比べ時代は変わったと言えるだろう。僕の肌感覚で言えば、ゲイとして生きるのになんの差支えもないし、ゲイだということもたまに忘れるぐらいだ。しかしそれはここロンドンでも勝手に変わったわけじゃない。普段は目に見えないところで努力をし続けた人がいたから社会は変わったんだと思う。
今東京で起ころうとしている変化の波というのも、降って湧いた話などではないはずだ。ゲイリブは煙たがられる傾向があるという日本で、それでも地道に活動をしてきた人たちがいるからこそのことだと思う。日本にいた時は、恥ずかしながら自分が何かをそういう活動をしたということはない。しかしロンドンに来てからというもの、自分に何ができるのか、何がしたいのかを考えさせられることが多く、このイベントもそのひとつのきっかけになったと思う。
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 2015/02/26 11:00    Comment  連載   みっつんのLondon Days              
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