第87回 「子どもを産んだならレズビアンじゃない」? 弁護士による裁判中の発言が物議をかもす

 

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まきむらよ。

毎週金曜、世界のニュースから性を考える時事コラム「まきむぅの虹色NEWSサテライト」をお送りしております。

今回のテーマは「『子どもを産んだならレズビアンじゃない』? 弁護士による裁判中の発言が物議をかもす」です。

あなたの周りにもしかして、こんなことを言う人はいないでしょうか。

「結婚したんだからもうバイセクシュアルじゃないでしょ?」

「真のMtFは自分のことを『俺』なんて呼ばない」

「なんでFtMがレズビアンイベント行くの? 男としての自覚を持ちなよ!」
こうやって誰かの性のあり方をいちいちジャッジする、なんていうかお前は性の審判か!? って感じの人が。

先日イギリスでは、なんと裁判所で弁護士がそれをやっちゃって大問題になっているんです。

今回はそんなニュースを、

★ 『子どもを産んだならレズビアンじゃない』? 弁護士の発言が物議をかもす
★ “同性愛者である証拠”って?
★ 個人のセクシュアリティは、いったい誰が決めるもの?

以上の流れでお送りします!


★ 『子どもを産んだならレズビアンじゃない』? 弁護士の発言が物議をかもす
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2015年3月のはじめ、イギリスの裁判で、「子どもを産んだならレズビアンじゃない」という発言があって問題になっています。

この裁判は、ナイジェリア人のアデロンケ・アパタさん(写真)が、「母国に戻れば同性愛を理由に迫害される。イギリスで難民として暮らさせてほしい」ということで起こしていたものでした。

かつてアパタさんはナイジェリアで、同性愛を理由に逮捕され、拷問されました。続いて兄弟と息子が殺害され、ご本人にも投石による死刑が言い渡されました(出典:Diva Magazine)。

そこで2004年、アパタさんはイギリスに亡命。しかし難民として認められず、労働許可すらない状態に追いやられ、さらにPTSDに苦しんで自殺未遂をします。それでも一命をとりとめたアパタさんは、LGBTアクティビストとして再出発。彼女と似た境遇の人々を手助けし、ついに2014年には賞を授与されるまでになりました。

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「ポジティブロールモデル・ナショナルダイバーシティアワード」授賞式にて
写真はfacebookページより

にも関わらず2015年、アパタさんを難民として認めるかどうかの裁判で、家裁弁護士は本人を目の前にこんな発言をします。

「(アパタさんは)同性間の関係に溺れてはいますが、いわゆるレズビアンという社会的グループには属しません。なぜなら彼女は、子どもを産んだことがあるからです。『昨日はノンケで今日はビアン』だなんて、そんなことありえないでしょう? 人種を変えることができないのと同じようにね」

言いやがったわよ

この発言は「時代遅れ」で「たいへん無礼」なものであると、イギリスの主要メディアは批判的に取り扱っています。

ですが残念ながら、こういう話ってアパタさんだけじゃないんですよね。同性愛を理由に迫害された人が他国へ逃れる際、「同性愛者である証拠」を求められるケースは珍しくないんです。


★ “同性愛者である証拠”って?
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写真:pakutaso.com

アパタさんは、裁判の際「同性愛者である証拠」を求められ、現在の恋人と手を取り合って出廷した上にこんなものを提出したといいます。

・ 元カノからの証言
・ 女性との性生活をおさめた写真
・ “たいへん個人的な内容”が記録されたDVD

辛かったが、命に関わるので仕方がなかった。アパタさんは後日、メディアに対してそう語っています。

またアパタさんの他にも、こんなケースがあるのだとか。

・ 「どんな映像作品を観ているか」といったプライベートな質問をされる
・ 同性愛を理由とした拷問や性暴力の被害者に、その経験を語らせる
・ 「入国審査をパスしたいならゲイらしく女装しろ」というような、色んな意味で間違ったアドバイスをされる

詳しくは過去の記事「世界の同性愛診断法~画像から医学テストまで~」でご紹介していますが、まったくもう、ホントに勘弁してほしいわ。

日本にだって、「証拠が無ければレズビアンだと信じない」みたいな風潮があるわよね。メディアに出るレズビアンが大抵カップル単位なのも、その表れね。私も以前、妻と取材を受ける時に「おふたりがカップルだという証拠は?」って聞かれたことがあります。

逆に、ちょっとカワイイものが好きだったりする男性はすぐ「オネエだ!」「女子力~(笑)」って言われたりね。そうやって本人の言葉を無視し、性のあり方を外側からジャッジするような態度が、ものすごく失礼なことだっていうのはいわゆるセクシュアルマジョリティでもマイノリティでも同じです。


★ 個人のセクシュアリティは、いったい誰が決めるものなのか
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写真:pakutaso.com

「○歳なのにまだ童貞なの? 女に興味がないんじゃないの?」
「心が女だっていうなら、もちろん男が好きなんだよね?」
「子どもを産んだことがあるなら、レズビアンじゃないよね?」

こんな失礼な質問がなくならないわけは、なにかしら「人間の性のあり方は分類できるものだ」という思い上がりがあってのことでしょう。「男/女」とか、「異性愛/同性愛」とかね。

だけれど、性のあり方とはとどのつまり、「どんな自分で生きているか」ということに他なりません。全く同じ人間がひとりとしていないように、全く同じセクシュアリティを持って生きる人も厳密に言えばいないのよ。

そんな中で、なんとなく似たあり方の人同士で集まったり社会制度を考えたりするために、目印の旗のようにして「ゲイ」「レズビアン」「アセクシュアル」「ヘテロセクシュアル」みたいな言葉が作られているわけ。どの旗の元に集まるかは本人が決めることであって、他人が指図することではありません

だから、同様に間違っていると私は思うの。
「あなたは同性愛者だから」とアパタさんを迫害したナイジェリアも、「あなたは同性愛者じゃないから」とアパタさんの難民申請を認めないイギリスも。

裁判は続き、最終的な結論は約3週間後に出る予定です。アパタさんがイギリスで暮らせるよう求める市民運動 #AsylumforAderonke は、今も諦めずにこんな言葉を掲げています。

「自分が自分であることの自由」

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写真:pakutaso.com

ということで、「まきむぅの虹色NEWSサテライト」今週も読んでくださってありがとうございました! また来週金曜日にね。まきむぅでした◎

追伸:過去記事「女性同士の恋愛コミックを訳した翻訳者、バッシングで国を追われる」について、ご本人へのメッセージをお寄せ頂いた方、ありがとうございました! 随時翻訳し、ご本人にお届けしています。またご報告いたします。

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