第26号 結婚法は離婚法、別れるときにも大切よ ~「もしも」に備える 同性カップル編⑭

 

渋谷区のパートナーシップ条例が、あいかわらず話題ですね—-って、これ先週とおんなじ書き出し(笑)。でも実際、新聞報道(ニュースから特集記事まで多彩)にバラエティ番組、はては国会質問にまで飛び火し、収まるところを知らずの勢い。久しぶりにパンドラの箱が開いた感があります。
同時に、これに釣られてあーんな言説こーんな言説、まさに啓蟄よろしくいろんな虫がモゾモゾ這い出てきているよう。ここにはいちいち取り上げませんが、誰がどんなこと言ってるのか、よーーく覚えておきましょう(とはいえ、ネットで毒づいて溜飲を下げているだけでは、じつは向こうのほうが現実社会では強大なので、してやられるかもしれませんが……)。

ところで、つい冒頭でも「パートナーシップ条例」と言ってしまいましたが、本来は、「男女平等・多様性社会推進条例」ですよね。あくまで多様性の一つとして、性的マイノリティの存在や同性パートナーシップを規定しているわけで、これ、同性婚条例ではありません。
実際、性的マイノリティのなかでも、同性パートナーシップだけがそのあり方でも、政治的・社会的に目指すべきゴールでも、ましてや究極の幸せでもない—-しごく当たり前のことです。前のめりになりたい気持ちはわかりますが、ま、そこは冷静に……。

ということで、今回の「もしもに備える~同性カップル編」は、「別れる場合」。これも性的マイノリティ、そして同性パートナーシップの「多様」な一側面ということで。

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 アウティング、DV……被害が出始めるまえに相談機関へ

パートナーシップは、始まりもあれば終わりもある。別れには、死別もあればみずから終止符を打つ場合もある。おたがいのこれまでに感謝し、新たな出発を祝福しあって円満に別れられればいいけれど、そうもいかないのが人の世の常でしょうか。

当事者やアライ(理解者)の弁護士など、法律家による「LGBT支援法律家ネットワーク」。その弁護士さんへ実際に持ちこまれる性的マイノリティからの相談の一位。それは、同性婚でもマイノリティの人権確立でもなく、カップルや友人関係のこじれから、家族や学校、職場、ネットなどで「バラされる」—-アウティングにからむ問題だそう。おたがい周囲に秘密にしてカップル関係を続けていることが多いだけに、いったんこじれても、二人のあいだで内攻し、ついに一方が外へヘルプを求めたときには、その解決がなかなか困難な状態に至っている場合も少なくないとか。
アウティングによって相手の関係者がその人が同性愛者であることを知った事実は元には返せないでしょうし、ネットに晒された情報や画像なども、RTや転載された場合は、なかなか消去が困難です。

カップル間の暴力、DV問題も深刻です。たんに身体的な暴力だけでなく、精神的、性的なものから経済的に困窮させるものや社会的に隔離させるものなどまで、多様なDVが存在しています。
DV防止法は昨年1月からの改正で、「生活の本拠を共にする交際相手からの暴力」についても、法の保護対象(相談やシェルターの利用、裁判所による接近禁止などの保護命令の発令)とするよう改正されました。その「生活の本拠を共にする交際相手」には同性間での相手も含まれると言われています。
*法律家によっては見解がわかれるところであり、裁判実務上、どのような判断がくだされるかは、まだ不明です。ただ、こうした事例はありました。

アウティングやネットでの晒し、DVについて、二人のあいだでこじらせ、実被害が出てしまうまえに、適切な機関に相談することが大切です。
とくにDV被害への救済は、警察や自治体の相談機関に相談することがスタートですが、とはいえ同性間でのDVやトラブルとはなかなか言いにくいのも確か。相談機関がわの対応力も、まだ未知数です。
まずは性的マイノリティ向けまたは対応可を明言している電話相談などを利用してみましょう。従来からの当事者NGOによる電話相談のほか(「LGBT 電話相談」などで検索してみましょう)、弁護士会などの電話相談も増えてきました(恒常的に行なっているのは東京弁護士会の相談。4月からも継続。他の弁護士会でもイベント的に開催があります)。
また、すでに被害が出ているときは、「LGBT支援法律家ネットワーク 弁護士」などで検索し、すみやかに相談したほうがいいでしょう。

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 財産関係の清算は、同性二人でも大切

別れることにはおおむね両者とも合意して、あとはその条件が問題という場合もあります。財産分与や、別離の原因を作ったがわから相手へ(両者が納得のうえで)慰謝料を支払うなど、男女の離婚とおなじようなことが問われるでしょう(同性二人で子どもをつくるとか里親になるということは、まだ日本では無さそうなので、養育や親権問題は少ないと思います。ただ、二人で育てたペットちゃんの問題はあるかしら)。

財産分与も、二人がお金を出し合って購入したようなものをどうするか。アレは自分、コレは相手、と分けるとか、一方が取得して相手に相応の代価を払うとか、このさい売って代金を折半するとか、いくつかの方法があるでしょう。

不動産がある場合、たいてい一方の所有権になっていますが、双方がローンを折半したり、所有権者でないほうも相応の頭金を負担するなど、それなりな事情がある場合もあります。二人で協力して不動産を購入する場合は、そもそも購入前にあらかじめ話し合いをし、万一、別れることになった場合、こちらの記事の最後にあるような方法で清算するのもよいでしょう。

また、別れるときの話し合いの内容は、二人で合意書にまとめておくのも後日のためには必要かもしれません。私たち行政書士も、そうしたお話し合いに同席して、いろいろな事例や方法を紹介したり、話し合いの司会進行をしたり、その結果を合意書にまとめたりすることができます。一般でも「離婚カウンセラー」を得意業務としている書士さんなどもいますね。二人だけの話し合いではヒートアップしそうなどの場合は、行政書士など第三者の同席もよい効果をあげる場合もあります。
*ただ、話し合いがこじれて、一方が一方へ条件交渉するなどの段階では、弁護士しか交渉の代理人になれません。

 弱い立場に立たされるがわを守るのも、パートナーシップ保証の意義

上記のような話し合いが、二人間で行なわれているあいだはいいのですが、どうにもこじれた場合にはどうなるのでしょう。男女の夫婦間であれば、家庭裁判所で調停をしてもらったり、それでまとまらなければ離婚裁判ということになりますが、同性間の場合、そんなことがあるでしょうか? 事例を聞いたことがないのでなんともいえませんが、たぶん調停や裁判は受け付けられないのではないでしょうか。

話がこじれたとき、これまでは見ないですんでいた二人のあいだの関係性が露呈し、弱い立場のがわが不利益を強いられることもあります。弱い立場とは、年下だったり、経済力が低かったり、外国人だったり、身体やメンタル的に障がいがあったり、などです。
二人をあくまで対等に扱い、権利を考慮してくれるのが家事裁判ですが、なぜそこまで考慮してくれるかといえば、配偶者というれっきとした法的地位があるからでしょう。男女の婚姻であれば、同居・協力・扶助義務や貞操義務にはじまるさまざまな相互義務があり、相手方の家族にとっても姻族として親族の列に加わるからこそ、配偶者としての地位と権利が法的にも保証され、それが裏切られたときには損害賠償や慰謝料などの訴えも認められているわけです。

同性間に婚姻を規定する法規がないということは、別離のさいも、正当な補償や清算が期待しづらい、それを根拠づけるものがない、ということでもあります
渋谷のパートナーシップ証明には、もともと法的効力はないということになっていますが、証明まで受けたカップルが事情があってパートナーシップを解消するときには、どちらか一方が不利益を押しつけられたり泣き寝入りを余儀なくされるようなことがあってはなるまい、と思います。

結婚法は同時に離婚法である。「愛」を祝福することの一方で、別離のときの平等な権利を保証することも、将来、なんらかの同性パートナーシップ法制が整備されていく必要性の根拠と言えるでしょう。


【緊急開催】aktaチャリティー企画

LP研 番外編「公正証書って、なに?」

 渋谷区でのパートナーシップ証明では、公正証書(任意後見契約、パートナーシップ契約)が要件とされていますね。
「公正証書ってなに?」「なにを契約するの?」「どこへいけばできるの?」「お金かかるの?」「いざというときは契約解消できるの?」「一生拘束されるの?」「途中で内容変更できるの?」「作ってホントにトクになるの?」などの疑問に、公正証書の実物例を見ていただきながら行政書士としてわかりやすく解説します。
あわせて今回の条例やパートナーシップ証明書について、さらに同性カップルでのライフプランニングの考え方についても、お話します。
どうぞ、お気軽にお出かけください。

 *この企画は、パープル・ハンズ「ライフプランニング研究会」の番外編として開催します。参加費は、いつもLP研を開催させてもらっているコミュニティセンターaktaの応援のためのチャリティーとして全額寄付されます。

【日 時】:3月29日(日)17:00~19:00
【会 場】:コミュニティセンターakta
東京都新宿区新宿2-15-13 第二中江ビル301【MAP
【話し手】:永易至文(行政書士、NPO法人パープル・ハンズ事務局長)
【参加費】:500円以上(カンパ制)
 *申込み等、不要。お問合せはパープル・ハンズ

 

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