第99回 世田谷区要望書提出メンバー特別インタビュー!

 

渋谷区の「同性パートナー証明書発行へ」の報道の後、東京都世田谷区、神奈川県横浜市でも早い段階で首長が同性カップル支援の意向を示したことが報じられていました。そして先週、世田谷区で大きな動きがありました。上川あや区議の呼びかけの元に集まった世田谷区在住の同性カップル16名が、同性カップルを公的に認める「パートナーシップ制度」の導入などを求める要望書を区長に提出。大きな話題となりましたね。

同性カップル:認めて 世田谷区長に制度導入要望 /東京」(毎日新聞)

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毎日新聞 2015年3月6日

この要望に対して、保坂展人世田谷区長は早々に会見を開き、「同性カップルからパートナーとしての届け出を受け付ける考え」を表明して、今後の展開に注目が集まっています。今回は、要望書を提出した「世田谷 ドメスティック パートナーシップ-レジストリー」メンバーの1人で、要望書のとりまとめを行った、西川麻実さん(普段は主に【LGBTも「結婚式」したい】という会を開催)にお話をうかがいました。


ひろこ:要望書提出は大きなニュースでしたね。おつかれさまでした! 今回の経緯を教えてください。

西川さん:同性カップルが法的保障を求めている、という当事者の声を聞いていた区議の上川あやさんが、まずは昨年9月の議会で「同性パートナーシップの承認について、自治体でできることがあるのでは?」ということで質問をされました。その後、やはりこれを具体的に動かしていくためには当事者の姿が必要ということで、上川さんから要望書を提出する方法の提案と、当事者への呼びかけがあり、当事者が集まってきました。

今年1月から、上川さんの「自治体にできることがある」という点について、自治体に何を求めるのか、何を目的とするのか等をテーマに勉強会を開きつつ、要望の骨子を検討していきました。その後、具体的に要望書を作成し、上川さんが区長と関係課の幹部職員の方々にアポを取って下さって、いざ提出、という流れに。要望書に住所や名前を出す人、出さない人。マスコミに顔出しできる人、できない人。メンバーそれぞれのプライバシーに最大限の配慮をしつつ、役割分担をしながら進めました。結局、要望書は住所や名前が入った、区に提出する用と、それらが入っていないマスコミ配布用と、2種類作りました。

ひろこ:渋谷区の動きとの違いは?

西川さん:一番の違いは、渋谷区のように条例化を目指すのではなく、区長判断で証明書を出すということです。もし条例化を狙うとすると…世田谷区議会は保守勢力の人数が多いので、保守勢力に反対されてしまったら条例が流れてしまう可能性があります。であるならば、条例(立法)でやるより、行政として首長の権限で、同性パートナーの関係を証明する書面を出すことは可能だという考えです。

ちなみに、要望書のタイトルは「同性カップルを含む『パートナーシップの公的承認』に関する要望書」であり、異性カップルを排除するものではないんですね。あくまでも、異性カップルと同等に扱ってほしいという思いを形にする、第一歩としての位置づけです。

ひろこ:今回の要望について、何か参考にされた外国の制度などはありますか?

西川さん:ドイツのハンブルグ市が 1999 年から同性カップルの登録パートナーシップ制度を始めた、いわゆる「ハンブルク婚」を参考にしています。最近では、イタリアのローマ市を始めとする各自治体が国の決定に先駆けて、自治体独自でパートナーシップ認証を行っています。世田谷区のこの証明書もハンブルグ婚のように、何らかの権利義務が付帯するものではないのですが、公的機関が同性間のパートナーシップを認めることが、今後の権利回復につながっていく、という考えに基づいています。

ひろこ:世田谷区で実際に同性パートナー証明書が発行されるようになったら、どういう意味合いがあると考えますか?

西川さん:上川さんがおっしゃっていて「なるほど!」と思った言葉があるのでご紹介します。「今はまだ、レストランに入りたくても、同性同士は入店不可、と、扉が閉ざされている状態。その扉を開けることが認められていない。レストランに入れてもらってからこの料理は美味しいとか美味しくないとかいう話になる。まずはレストランへの入店を認めてもらうことが第一歩!」

ひろこ:なるほど。とてもわかりやすいですね。要望書を提出したときのお気持ちは?

西川さん:普段、クローゼットで生活しているメンバーが、要望の場面では中心となって語り、区長や職員の方々の心を動かしていました。上川さんから、公務員は守秘義務があるからプライバシーは大丈夫と言われていたので、安心して話せたんだと思います。人によってカムアウトの度合いもあり、いざ動こうとすると色々心配になると思います。しかし、自分のプライバシーを守りながらもアクションを起こすことができるし、そこで重要な役割を果たすことができるということに感動しました。

ひろこ:新聞報道などでは語られていない、2CHOPOの読者へ伝えたいことはありますか?

西川さん:私も一昨年、小雪さん&ひろこさん、gossipさんと一緒に、同性間のパートナーシップ保障の法制化に興味ある人たちを集めてワークショップを行いました。その際に上川さんを招き、GID特例法成立の経緯をお話ししてもらって、道筋を探ろうとしました。その時もその後も上川さんは再三、「1人でできる政治的訴えの方法も国や地方自治体には沢山用意されているのに、LGBの人たちは自ら何か訴え出ることをしない」ということをおっしゃっていました。私もそのことには感じいって、なんで私は何か行政や司法に訴えないんだろうなぁ、とそのメンタリズムについて考えてきました。

1つ目は、政治というのが遠くて、庶民の政治参加というと、選挙しか知らないこと。

2つ目は、性的指向というのは、隠すのが容易なため、隠すことを選択する場面が多くなってしまい、表立つ方がリスクがあるように感じること。

3つ目は、養子縁組や公正証書作成、父母や職場にカムアウトして理解を得ることで、社会が変わらなくても、個別に2人の関係は保障されてしまうこと。

しかし、それでは根本的な解決とはならず、やはり私たちの生きづらさは「差別してもいい人間なんだ」と社会からその存在を無視されているところにあると思うんです。ここを変えるために、政治のシステムに乗っ取って働きかけることが必要ということで、今回の動きにつながっています。要望書を出して、地方行政にできることを求めていくのは、他の自治体でもやってみる価値があることだと思います。

ひろこ:まさに今、日本全国に、自分の住む自治体でも何かやりたい!と思っている当事者がたくさんいると思います。他の自治体で広げていくためのアドバイスをお願いします。

西川さん:要望書を書くことは1人でも出来ます。要望内容がたくさんあると通りにくいので、シンプルな内容がいいと思います。その際に、今回の世田谷区の要望書のPDFを最下部に共有しますので、ぜひ参考にしてみてください。

できれば首長に直接提出できると効果的なので、その場合には、議員さんの紹介があるとぐっと実現しやすくなります。協力してくれそうな議員さんを探すには、議会のホームページで「性的少数者」「LGBT」「障害者」「女性」「子どもの人権」などのキーワードで議事録を検索した上で、ヒットした議員さんが首長と対立していない立場かどうかを調べてみるといいでしょう。
もし議員さんがみつからなくても、ホームページから「首長への手紙」などのコーナーから、「要望書を届けたいから会ってください」と伝えることは可能です。
もちろん、要望書に名を連ねてくれる仲間が居た方が、訴えにリアリティが増すと思います。

公務員の方には守秘義務があるので、クローゼットの方たちも本来は安心してこのようなアクションを起こしていただいて大丈夫なのですが、それでもプライバシーが心配な場合には、国の行政相談や人権相談にぜひメールや電話をしてみてください。自分はカムアウトできないから何もできないと思わないでほしいです。
私も広くカムアウトして暮らしている訳ではありませんし、どの位置に立っていたとしても「みんな何かできるよ」と心から伝えたいです。

ひろこ:力強いメッセージをありがとうございます。私たちカップルは渋谷区民として、渋谷区の条例可決、パートナー証明書発行を心待ちにしているのですが、世田谷区の流れを見ていると、もしかしたら世田谷区の方が早く証明書発行になるのでは??と話しています。

西川さん:こうなったら渋谷区に負けないで日本で一番早く証明書が発行されてほしいですね(笑)

ひろこ:貴重なお話を本当にありがとうございました。たくさんの当事者の方が勇気づけられて、今すぐ何かしなければ!という気持ちになっていると思います。日本全国に広がってほしいですね。

《世田谷区長への要望書PDF》
*各画像をクリックするとPDFのダウンロードページへ遷移します。
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