#26 納豆推しのスウェーデン人夫

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付き合って3年、結婚して3年半、食事を作るのは専ら僕の方が多い。そして、リカに今日は何が食べたいかと聞くと、大概「魚と野菜」と答えるに決まっている。彼はベジタリアンではないので肉も食べるのだが、あまり自分から肉を食べたいとリクエストすることはない。そして日本に10年以上住んでいたこともあり、とにかく和食推しだ。これは僕にとって本当にありがたい。これは国際カップル間だけの問題ではなく、同じ国出身同士だったとしても、食べ物の好みが合う合わないというのは非常に大事だと思う。そう思わない人もいるだろうが、同じものを食べて美味しいと言えるというのが、少なくとも僕にとっては最重要ポイントである。
ロンドンは大都市なだけあって、和食に使う食材は簡単に手に入る。中心地にある日系スーパーにいけばもちろんのこと、ラッキーなことに僕が住んでいるフラットから徒歩3分のところには日本を含むアジア系の食材が揃うスーパーもある。ちょっとお醤油が切れても、ふらっと買いに行けるのだ。割高ではあるが、たまに地元の普通のスーパーでキッコーマンのお醤油が売っていることもある。おかげでロンドンに住みながらも、うちの食卓のほぼ80%は和食だ。
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アジア系スーパーの冷凍食品売り場。3種類もあるし冷凍でも美味しいのだが、日本にある冷凍じゃないぷりぷりの豆の納豆には敵わない
ある日、前日の夜に飲みに出かけ遅く起きた日曜日の朝、僕もリカも若干の二日酔いが残っていた。何を食べようか考えている時、リカに何を食べたいかと聞いたら、
「何かしょっぱくてタンパク質のもの。うーん、納豆ある?」
と答えた。彼、無料のウェブコースとかで勉強するのが好きなのだが、あるとき栄養学を勉強していたことがあった。それ以降、食べたいものを栄養素で答えるようになった。
「二日酔いの時は、水分、塩分、タンパク質そして少しの糖分がいいね」
とか言うので、冷凍で常備してある納豆を解凍、醤油ベースの卵スープをちゃちゃっと作り、たまたまお土産にもらった明太子をちゃぶ台の上に並べた。ちなみにご飯も常に多めに炊いて冷凍しておいたものをチンしただけだ。食後、確かに二日酔いはすっきりしたし、リカもご満悦のようだった。こんな時、イギリスと言えばのサンデーローストを食べに行こうと言う人でなくて良かった。(それもおいしいのだが)
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わが家の二日酔いにいい献立
またある日、たまたまお互いに忙しく外で食べる日が続いていた時のこと、今日の夕食は家で食べようということになり、リカに何が食べたいかと聞くと、少し寂しげな表情で叶わぬ望みを吐露するように、
「大戸屋に行きたい」
と、ぼそっと言うのだ。そんな彼を「残念ながら大戸屋はロンドンにはないんだよ」と慰めつつ、スーパーに行き、適当な野菜を仕入れ、作ったのが、大戸屋風ネバネバ丼。これまた常備してある冷凍納豆を主軸に、オクラやほかの野菜と一緒にご飯に乗っけわさび醤油でいただく。さすがに欲しかった山芋は近所には売っておらず断念。しかしリカが目を輝かせて丼をほうばっているところを見ると、大戸屋への切望はいくらか和らいだかに見えた。
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わが家のネバネバ丼 – (時計回りで)納豆、アボカド、きゅうり、マッシュルームのバターソテー、白菜、キムチ、オクラに、温泉卵。最後にネギを散らして
もちろん毎日毎晩お互いの食べたいものが一致するとは限らない。しかし、それがそんなに大きく掛け離れる事もなく、同じものを食べて美味しいと言える人で良かったなと、心から思う。ま、大概はリカの方が折れて、僕の食べたいものに合わせてくれているというのが、実際のところだけれど。
ちなみに、リカも初めて来日した頃、そんなに納豆は好きではなかったらしい。「なんだこれ?」といった感じだったらしい。彼曰く「3回目で好きになった」らしい。また、在日外国人の中でよくある話だが、あまり外国人と接したことのない日本人の行動パターンとして、彼らにお箸が使えるかどうかと聞く人とともに納豆食べれるかを聞く人も多いという。それらの質問は、最初の1年はまあ流せるけれど、3年以上住んでると言っているのにその質問を投げかけてくる人がいると、何万回も聞かれて、答えるのが面倒くさくなり気分を害されるという人もいるらしいので、気をつけたほうがいい。

 

 2015/03/12 10:00    Comment  連載   みっつんのLondon Days              
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