#27 体外受精の子どもは”化学合成”? IVF当事者から見る、D&G vs Eジョンの確執

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エルトンジョンが、ドルチェアンドガッバーナ(以下D&G)のボイコットを始めた。D&Gのステファノ・ガッバーナとドミニコ・ドルチェの二人がイタリアのファッション誌”パノラマ”で受けたインタビュー(原語はイタリア語)の発言を受けてのものだ。
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「家族とは伝統的なものだけだ。化学的な出産や借り物の子宮はありえない。命とは自然の流れ。変えてはいけないことがある。出産は愛の結晶であるべきで、子宮を借りたり精子カタログから選ばれた子どもは化学合成の子どもと私は呼ぶ」
“The only family is the traditional one. No chemical offspring and rented womb. Life has a natural flow. There are things that should not be changed.” Procreation “must be an act of love,” Dolce goes on to say. “I call children of chemistry synthetic children: wombs [for] rent, semen chosen from a catalog.” (引用元 Hint Fashion Magazine)

この発言をしたことにより、IVF(体外受精)で二人の子どもを授かったエルトンジョンはインスタグラムでハッシュタグ #BoycottDolceGabbanaと共に批判を展開している。

 

Elton Johnさん(@eltonjohn)が投稿した写真

 

 
「どうしたら私の美しい子どもたちを”合成”だなどと言えるのか。IVF(体外受精)と、それによって子どもを授かりたいという夢を実現させた、愛情に溢れたゲイとストレートのたくさんの人たちに対する奇跡に対して、その小さな指でおおげさな批判を振りかざすことの恥を知るべきだ。あなたの時代遅れの考え方は、あなたのファッションと同じようにこの時代からはみだしている。もう二度とドルチェアンドガッバーナを着ることはない」
 

How dare you refer to my beautiful children as “synthetic”. And shame on you for wagging your judgemental little fingers at IVF – a miracle that has allowed legions of loving people, both straight and gay, to fulfil their dream of having children. Your archaic thinking is out of step with the times, just like your fashions. I shall never wear Dolce and Gabbana ever again. #BoycottDolceGabbana (引用元 instagram
僕はプロの翻訳家ではないので、日本のネット上の記事を引用させてもらおうと思ったのだけれど、翻訳の仕方というか言葉の選び方にばらつきや疑問があったので、若干直訳ぎみだが自分で訳させてもらった。いろんな意訳があるのはいいことだけれど、一番気になったのはsyntheticという言葉の訳。多くの日本の記事で「人工的」と訳されていた。そこだけ訳せばそれも間違いではないが、その前にchemistry(化学)という言葉がついているとニュアンスが変わってくる。上に記したように”化学合成”と僕だったらとるだろう。
なんで、そこの訳し方にこだわるかっていうと、サロガシーは人為的な手の入る生殖補助医療だから、人工的だって言われたら「まあ、そう言えばそうですね」になるけど、化学合成だと言われたら「それは違うよ」って言い返したくなる。実際に僕らもサロガシーの準備をしているし、この件に関してはエルトンジョンの肩を大いに持ちたいと思う。
しかしこの”化学合成”とかつくりものという先入観は、サロガシーの知識が無ければわりとよくあることかもしれない。じゃあ、なにが違うかって説明し始めると、ものすごく長くなるのでまた別の機会にするが、サロガシーは妊娠・出産の確率を上げることができるだけで、あくまで補助をするだけだということ。そのほとんどのプロセスを人間のコントロールできない自然の力に委ねなければならないということだ。化学合成だとか、つくりものだとかいう発言は、ただそのプロセスを知らないまま、未知のものに対しての先入観からくる否定でしかないように見える。
その昔、僕自身もこのエルトンジョンがサロガシーで子どもを持ったとニュースで聞いたとき、「何もそこまでしなくても」という気持ちとともに、どこかしらの抵抗感があったことは否めない。もちろん宗教とか倫理とかで反対する人もいるけれど、その抵抗感はそういう理由じゃなく、未知のものに対する恐れのようなものだったと今振り返るとそう思う。もちろん、その頃はサロガシーどころか、自分が子どもを持つことすら想像だにできなかった。
しかしそれから年月が経ち、僕らにも子どもを持てる可能性があるということ、遺伝的にも僕らに近い子どもができる可能性があること、そしてサロガシーのプロセスを実際に知っていくことによって、その根拠のない抵抗感は少しずつ消えていった。そしてロンドンに来て、あるふた組の家族に出会ったのは一番大きかった。ひと組はレズビアンカップルとその息子、もうひと組はゲイカップルとその二人の子どもだった。
百聞は一見にしかずという言葉があるけれど、まさにそのとおり。ネットやメディアでその存在を知る機会は増えているけれど、実際に目の前に仲睦まじい家族が実在するのをみると、グウの音もでない。それぐらい力強いインパクトだった。
日本の場合、同性婚をしている人や、子どもを育てている同性カップルを実際に目にする機会は極端に少ない、というか皆無に近い。僕がこの2chopoで書きたかったことは、こういう生活もありますよー、って日本の人に知ってもらいたかった。子どものことはプライバシーや子どもの将来のことも考えると書けることに限界がある。それでもこういう可能性もあるよーこんな家族も実在するよーってのを、海の向こうから叫びたかった。
これを読んでくれている方の中にも、D&Gのようにゲイだけれど、同性婚や子どもを持つことに否定的だという人は意外に少なくないだろう。ただ他にも可能性があるのに、それを自ら見ようともせずに否定に回っているとしたら残念だと思うが、それはそれで彼らの考え方だし、それを否定するつもりもない。
今回D&Gも言論の自由を盾にエルトンジョンへの反論をしているが、それを言ったらエルトンジョンにだって自分の子どもを守るためにあの発言をする権利がある。どちらもゲイという同じ立場で違う意見を展開している様子が、わりと感情的に報道されている感があるけれど、どちらが是か非かではなく、そういう議論の場があること自体がいいことだなんだと思う。
日本でも最近は同性パートナーシップの件で、いろいろ議論が活発になってきていて反対意見もでてきているようだが、それはとてもいいことだと思ってる。反対意見が出てくると、それに抗うためにもっと強くなれるからだ。昔よく二丁目でお世話になった年上のお兄さんが教えてくれたことをふと思い出した。
「海外のゲイ差別はゲイの存在を認めた上で差別するけど、日本の場合はそんな人いないという思い込みで、存在すら認めてないという差別だから、議論さえ行われないのよねー」
エルトンジョンをフォローしてボイコットに賛同したいが、僕らには捨てるD&Gもなければ買いたいD&Gもない。非常に残念だ。ちなみに、ここ最近の「母性」をテーマにコレクションを展開しているD&Gからしたら結果的には炎上商法みたいなもので、騒げば騒ぐほど彼らの宣伝になるというものだ。人は人、自分は自分って思って、僕とリカはサロガシーの準備に励みたいと思う。ここ一週間で膨大な書類が無数のメールで届いている。ちょっと正直処理しきれないでてんてこまいだが、なんとかこの山を越えていきたいと思う。

 

 2015/03/19 15:00    Comment  連載   みっつんのLondon Days              
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