第16回 セックスを恥ずかしく思う自分を優しく受け入れよう

 

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セックスをした後、その最中にあったことを語り合うのはタブーだと思っていた。誰かにそう教わったわけではない。本で読んだわけでもない。初めてセックスした日からずっとそれがフツーだと思っていた。

まだ経験が浅かった頃、ネットで知り合った男性とカーセックスをした後、彼が運転する横で何も言えずにいた。凄く好みのタイプで、セックスも相性が良くて、性格も優しそうな人だった。もしかしたら、たまに会ってセックスするような関係になったり、恋人にだってなれるかもしれない。まだ自分がゲイだということを受け入れる覚悟もなかったのに、夢だけは溢れていた。しかし、頭の中で繰り広げられる妄想とは裏腹に、何も口から出てこなかった。向こうから何か聞かれても、そっけない返事しかできなかった。

さっきまで車の中でいやらしいことをしてたのが死ぬほど恥ずかしかったのだろう。そんな行為に及んだ自分をとても受け入れられなかった。セックスをしている最中の自分と、日常生活を送っている自分は別人だった。そのふたりは交わらない方が気が楽だった。だから、さっきまでセックスしていた人に何か言いたくても、口に出す勇気はなかった。結局、何も会話ができないまま彼の車から降りた。無言だった自分のせいだったかはわからないが、彼と会うのはそれが最初で最後となった。

経験を重ねて、自分のセクシュアリティやセックスをすることへの抵抗もしだいに減ったが、この習慣だけは残っていた。セックスした後は、相手の目を見て話ができなかった。相手がセックスの最中のことを話せば、顔を真っ赤にして急いで話題を変えた。ぎこちないにもほどがあった。そうやって自分から大事なコミュニケーションの機会を放棄した。セックスの最中に少しでも気に入らないことがあれば、話し合うよりも次の人を探した。その方が気が楽だった。きっと、セックスをしている自分が未だに恥ずかしかったのだろう。

そんな日々にも終わりが来た。いつものように、ネットで知り合った男性とカーセックスを楽しんでいると、予想外のものに遭遇した。口に含んだものに、味わい慣れないイボイボがある。そこで一時停止してそれを確認したくても、自分を恥じる感情に邪魔されて何も言えなかった。ヤケクソになって、さっさとセックスを終わらせて帰宅した。しかし、さっきの感触が忘れられない。あれは何だったんだろう?性感染症?まさか自分にも移ったのかもしれない?頭の中がぐちゃぐちゃになって、どん底に落ちたような気がした。

彼にこれを話せば、何かわかるかもしれない。もしかしたら、生まれ持ったイボイボなのかもしれない。もしも性感染症だった場合でも、もっと情報を得ることができるし、お互い治療を受けられる。今、彼に電話をすることはとても合理的だ。それなのに、携帯を握った手の震えが止まらない。このまますべて忘れて何も考えない方がきっと楽だろう。羞恥心だったり、罪悪感だったり、そんな感情たちが壁となって立ちはだかる。

「もしもし?」

次の瞬間、自分は彼に電話をしていた。もの凄く恥ずかしかったが、勇気を振り絞って質問をした。いつまでも自分の感情に流されるのは嫌だった。

「さっきフェラした時に亀頭にイボイボがあったんだけど、あれ何?」

そんな質問を急にされた彼は驚くどころか、気さくに答えてくれた。どうやら、生まれ持ったもので、今までもよくセックスする際に聞かれていたらしい。「気付いた瞬間に言ってくれればよかったのに!」と彼は笑った。そうやってオープンに会話ができて、一気に緊張が解れた。自分を邪魔をしていた壁は粉々に砕けた。

今でも、セックスの最中のことを語り合うのは苦手だ。昔と変わらず、恥ずかしいという気持ちはそこにある。しかし、昔とひとつ違うこともある。それに邪魔をされて、自分が言いたいことを言えないということはもうなくなった。

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