第52回【番外編】街はパンツで溢れてる。 今回は、本じゃないよ。パンツだよ(笑)。

申し訳ない。今回は、ホモ本ではない。本ですらない。パンツである。今回は、パンツなのである。
先日、レギュラー出演している「UGLY」に、ゲストとしてレイチェル・ダムールがやって来た。彼(彼女?)とは、ずいぶんと長いつき合いだ。お互いに歳も取った。楽屋での会話も、親の面倒をどうするか、とか、墓はどうしたらいいのか、そんな話題ばかりである(笑)。切実ではあるが、面白おかしく語るやりとりの中、出し抜けに、「マーさん、最近、パンツ落ちてないの?」と言われたのである。
栄枯盛衰。かつて、mixiが全盛だった時代。街に落ちているパンツ(男物の)を写真に撮ったものを、日記にして公開していたのだ。題して『街はパンツで溢れてる』、通称『街パン』。どうやら、彼は、それを気に入ってくれていたらしい。そういえば……と思い出し、写真整理を兼ねて、再録してみることにした。お楽しみいただければ、幸いである。

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①写真の左上方に写っている赤い物体は、いったい何か?

さて、私が「街パン」に取り憑かれるきっかけとなったのが、この1枚である。これは、2009年4月29日の早朝、渋谷で撮影したものだ。前夜にクラブイベントに出演した、その帰り道。ラーメンでも食って帰ろうと、センター街に入った私の目に飛び込んできた。ギンガムチェックのパンツである。
注目して欲しいのは、写真の左上方に写っている赤い物体である。はたして、これは……

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②赤い物体の拡大写真と、パッケージに記載された情報。

なんと、パンツのパッケージであった! メーカーは「Levi’s」。詳しく見てみれば、ボクサーブリーフ(前開き)、迷彩柄で、サイズはM、1800円(税込み)であることが分かった。そして、この事件を解く鍵となるのが、パッケージの上に乗せられた脱いだままの靴下が片方、である。では、もう片方はといえば……

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③離ればなれとなった、もう片方の靴下。

現場から程なく、昆虫が脱皮した後のような、もう一方の靴下を発見!! 斯様な、尋常ではない事態を目撃し、私の灰色の脳みそ(前夜の仕事とアルコールで朦朧とした)は、フル回転を始めた。時系列を整理して推理するに、次の様なストーリーが組み上がる。

③で、靴下を片方、脱ぐ。

②で、もう片方の靴下を脱ぎ、買ったばかりの「Levi’s ボクサーブリーフ(前開き)、迷彩柄、Mサイズ、1800円(税込み)」をパッケージから取り出した。

①で、履いてきたグレーのギンガムチェックのトランクスと履き替えた。

なんということだ!! 渋谷センター街ど真ん中、堂々の生着替えである。しかし、何故、彼は、路上でパンツを履き替えなければならない事態に陥ったのであろう? 謎は深まる。
もしかしたら、合コンに向かう途中、くたびれたパンツを履いてきたことに気づき、新しい、オシャレなボクサーブリーフを買ったのかも知れない。円山町のホテル街にしけ込んでやる気満々で、想像と興奮で、思わず路上でパンツを履き替えてしまったのかもしれない。若さと恋は、いつも早急なものである(笑)。はたして、靴下も、ちゃんと新しいものに履き替えられたかどうかも気になるところではある。
そうなのだ、街に落ちているパンツには秘められた物語があり、それは、読み解かれることを待っているのだ。それゆえに、「街パン」は蠱惑的であり、私たちを魅了してやまないのである。

この日から、街に落ちているパンツ(男物の)を探すように、下を向いて歩き回るようになった。すると、思いの外、街はパンツで溢れていたのである。ここからは、私が撮り溜めた『街パン』コレクションの一部を紹介しよう。
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2009年6月26日 撮影。

上の一枚は、2009年の初夏。新宿・大久保駅近くの舗道にて撮影したものだ。時間は午前7時頃。会社へ、学校へと急ぐ人々が行き交っている。そこそこ賑やかな大久保のペイヴメントに、唐突にパンツ。しかし、誰も、目にも鮮やかなブルーのパンツが落ちていることなど、気にもとめていない。ほんの自分の足先に落ちているのに、である。この取り合わせのシュールさも、非日常性にも、誰も気づかない。日常に埋没する、そんなつまらない生活に追われる人々を冷笑するかのように、赤いゴムがキラリと輝いている。そんな光景だ。

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ゴム部分を拡大。

物語は、さまざまである。この一枚を、より詳細に検討すれば、また別のストーリーが浮かび上がってくる。まずは、そのゴム部分に着目。その鑑賞のポイントは、毛玉である。結構な毛玉である。本体生地自体は、さほど痛んではいないようだが、ゴムの毛玉感は不釣り合いなほどである。リブに織り出されたメーカー名は、「BOBSON」。有名なジーンズメーカーだ。どうした? ジーパンが売れなくなって困ったのか? コスト削減で、安いゴムを使ってしまったのか? まったく世知辛い。これは、企業倫理を問う、社会派の一枚ともなり得るのである。

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2010年1月6日 撮影。

この一枚は、謎に満ちている。まず、パンツ自体が、まだ新しい点である。捨てるには、もったいない。しかも、紙袋に入れたまま、無防備に置き去りにされている。紙袋には、カップ麺の空き容器も見える。場所は、新宿・小滝橋通り沿いであった。
そこから推理するに、これは、女の部屋に泊まった男が、帰りがけに捨てていったものである。おそらく、その女は、歌舞伎町あたりで働いているキャバ嬢では無かろうか。小滝橋通りは歌舞伎町に隣接しているからである。
ストーリーは、こんな感じだ。夜、女の仕事明けに転がり込んだ男は、カップ麺で腹ごしらえをした。で、エッチして、朝、起きて、来る途中にコンビニで買ったパンツに履き替えた。あわよくばこのまま継続的なセフレにおさまりたい男は、女の部屋にパンツを置いていきたかった。が、女は慌てた。つき合っている男がすでにいたからだ。別の男を引っ張り込んだ痕跡は、消し去ってしまいたい。「ねぇ、これ(パンツ)、持って帰ってよ」。しぶしぶパンツとカップ麺の空き容器を紙袋に入れて、女の部屋を出た。が、そんなものを会社に持っていくわけにも行かない。で、道端に、ポイ!……である。

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2010年3月19日 撮影。

これは、とある空き地に放置されていたものだ。よく見れば、Tシャツやら、靴下、サンダルなど、一切合切が捨てられている。黒、紺ばかりの地味な色合いばかりである。その中で、ひときわ目を引くのが、派手な柄のトランクスである。しかも、同じ柄のトランクスが2枚だ。よっぽど気に入っていたのであろうか?

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2009年6月10日 撮影。

2枚といえば、このようなバリエーションがある。トランクスの重ね履きである。バーバーリー風のチェックの上に、ストライプのトランクスである。はたして、ものぐさなのか? それとも、高度なオシャレなのだろうか? 撮影したのは6月であるから、防寒のためとは考えにくい。これまた、謎めいた1枚である。

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2011年11月25日 撮影。

謎めいた、といえば、これも謎である。とある集合住宅の郵便受けに、さりげなく置かれた、「B.V.D.」のパンツ。普通に考えるなら、落ちた洗濯物を、それを拾った人が親切にも届けてくれたと思うだろう。が、なぜ、そのパンツが関さんのものだと分かった? そもそも、こんなボロボロなパンツを、なぜ洗濯した?(笑)

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2013年12月8日 撮影。

目白の「マクドナルド」のトイレに置き忘れられたパンツ。これは、謎ではない。明快である。ここで新しいパンツに履き替え、履いてきたパンツをきちんと畳んで持ち帰ろうとしていたのだが、ついうっかり置き忘れてしまったのである。だが、やはり、そんなに街中でパンツを履き替えている人がいるという事実は、謎のままだ。

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撮影日、不明。

これまた、奇妙な1枚である。黒いショートパンツらしきものの上に、靴下とパンツが置かれている。順番として、ショートパンツを脱ぎ、パンツを脱ぎ、靴下を脱いだのである。これで下半身はスッポンポンである。そのままの状態で、いったいどこに行ってしまったのだろう? わいせつ物陳列罪で逮捕されていなければよいが……(笑)。

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2009年9月30日 撮影。

私のように、数多くの「街パン」を研究してきた人間にとって、この1枚は、とても興味深い。「街パン」のほとんどは、無造作に打ち捨てられているもので、クシャっと丸められているか、風雪に耐え、見る影もなくボロボロになったものがほとんである。それなのに、この1枚は、きちんと畳まれて捨てられていたことが、うかがい知れるからである。捨てられたパンツにも、その持ち主の几帳面な性格が反映していたのであろうか。

街はパンツで溢れてる、のである。私の長年の調査により、街中でパンツを履き替えている人が、意外にも多く存在していることが分かった。なぜ、街中でパンツを履き替えなければいけないのかは、依然、謎のままだが、その解明は、後の研究者たちの手に委ねることにしよう。私は、ただ、「街パン」を写真に撮り、数多く収集することに専念したい。
それは、「ホモ本」収集と、同じスタンスである。私が集め、ここで紹介している本は、これまであまり顧みられることの無かった本ばかりである。街中で打ち捨てられたパンツのようなものである。ホモの日雇い労務者や、部落出身のホモに恋した男、殺人者のホモ……などなど。どうしようもない本ばかりである。学術的にも価値があるとは評価されてこなかった本たちだ。しかし、価値がないとされているからといって、その存在が否定されてしまってはいけない。価値がないなら、誰かが与えてやれば良いのである。それは、のちの若き研究者に期待したい。
私は、彼らの一助となるべく、資料を蓄えておこう。街に落ちているパンツから、さまざまなストーリーを読み取ったように、私のホモ本から新たな物語を紡ぎ出して欲しいものである。

ということで、BEST5を紹介して終わることにする。

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2013年8月4日 撮影。

とある民家の植え込みに、ひっそりと落ちていたパンツ。奥ゆかしい、一枚である。

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2012年12月16日 撮影。

「ユニクロ」の袋の傍らに捨てられていた、迷彩柄のパンツ。ブランドは「VILLAND 」。「ファッションセンター シマムラ」のオリジナルブランドらしい。ファストファッション万歳、である(笑)。

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2009年6月11日 撮影。

こちらは「SAPPY」のパンツ。やはり、「TOOT」などの高価なパンツは、あまり街に落ちていない。パンツでさえ、値段によって捨てられ方も変わるのだろうか? なんだか、せつない。

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2009年3月9日 撮影。

せつないといえば、長年、誰からも見向きもされることもなく、ましてや、拾われることもなく、打ち捨てられていたパンツ。このまま朽ちていくのであろうか? 無常感さえ漂う。

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2009年3月26日 撮影。

最後に、一番のお気に入りの1枚。やっぱ、パンツは白だよねぇ!、ということで、今回は以上。次回は、ちゃんとホモ本を紹介する予定。てか、ちゃんとは紹介しない。できない(笑)。

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