第91回 バイセクシュアルを電気ショックで“治療”しようとした結果……!?

 

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まきむらよ。

毎週金曜、世界のニュースから性を考える時事コラム「まきむぅの虹色NEWSサテライト」をお送りしております。

今回のテーマは「バイセクシュアルを電気ショックで“治療”しようとした結果」です。

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同性に惹かれる気持ちは、頭部への電気ショックで消すことができる――そんなことが信じられている現実があるんです、信じられないことに。

今回は、実際に電気ショックを行った結果なにが起こったのか、実例からご紹介してまいります。


sad_smile 「本を読もうとしても、どこまで読んだのか覚えていられない」……

アメリカの伝説的ロックミュージシャン、ルー・リード。彼は生前、こんな歌詞を書いていました。

低スペックな医者どもが 電気ショックをぶちかます
奴らは言うんだ 精神病院から出て、ママとパパと暮らしなさいって

だけれど本を読もうとしても 17ページにすらたどりつけない
いったいどこまで行ったのか 忘れちまって読むことすらできない

わからねぇのか このまま奴らに殺される

All your two-bit psychiatrists are giving you electro shock
They say, they let you live at home, with mom and dad
Instead of mental hospital
But every time you tried to read a book
You couldn’t get to page 17
‘Cause you forgot, where you were
So you couldn’t even read
Don’t you know, they’re gonna kill your sons

――引用:”Kill Your Sons”より、和訳は筆者による

しかし、「17ページ」って……

なんか妙に具体的

って思いますよね。それもそのはず。電気ショックのせいで本すら読めなくなるという、この歌詞は実体験に基づいているんです。

バイセクシュアルであったと言われているルー・リードは、18歳の時、両親によって病院に連れて行かれてしまいました。暴れないように身体を押さえつけられ、舌を噛まないようにマウスピースを押し込まれる。そして、頭に電気器具がとりつけられ……強い電気を流される。そんなことを彼は、何度も何度も繰り返されたのです。

それでも彼は亡くなる前、日本円にして6000万円近いお金を、彼に電気ショックを受けさせた親のために使ってくれと言い残したそうです。悪いのは親ではなく、異性愛でないものを病気扱いする考え方だ……そう考えてのことだったのかもしれません。

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写真:PAKUTASO

そうよね。電気ショック治療って、「これで正常な異性愛者になれるなら良いことだ!」って思い込んで行われるのよね、タチの悪いことに。

そしてこのような「異性愛=正常、それ以外=異常」という考え方(異性愛規範/ヘテロノーマティヴィティ)がいまだに幅を利かせているせいで、こういったことが現代でもなくならないんです。

そうなの……なくなってないのよ! WHOも厚生労働省も「同性愛は病気じゃないよ」って宣言しているのに、いまだに“治療”しようとする考え自体は完全になくなってはいないんです。


cry_smile 後遺症にもかかわらず……世界でも、日本でも続く“治療”を求める声

最近だと、たとえばこんなことが実際に起きています。

同性愛治療と称して電気ショックを受けさせられた男性、トラウマを受けたとして裁判に(中国/2014)
国会議員が同性愛者に対して治療を受けるよう呼びかけ(クウェート/2014)
国家人権委員会の施設にて、民間団体が「同性愛は『性中毒』。予防と治療を」と呼びかけ(韓国/2015)

また日本でも、ここ数年にこんな記事が出ているんですよ。

「我が子に同性愛の治療を受けさせたい」という投書(読売新聞/2011)
「北海道の病院で1950年代に電気ショックを受けさせられた」という証言(朝日新聞/2010)

しかし、電気ショックを受けた結果は以下の通りです。

・一部の記憶がなくなる
・短期記憶が持てなくなる(読んだばかりの文章を忘れてしまうため、本が読めないなど)
・植物状態に陥る
・トラウマや気分の落ち込みに苦しむ

なお、こちらはあくまで、性的指向を変える為と称して行われた電気ショックの結果のまとめです。現在でも一部疾患に対しては電気ショック療法が行われていますが、その場合は専門家の指示に従ってください。恐がる必要はありません――「これで同性愛が治る」とか言ってこない限り。

他にも、「乗馬すれば治る」(2012年)「薄めたプラチナを飲めば治る」(2011年)など色んなことが“治療法”と称して提唱されています。人が異性愛者になるための“治療”と称して行われたことについては、書籍「百合のリアル」92ページ~98ページでもご紹介しています。

しかしながら、そもそもいかなる性的指向も病気とされておらず、よって治療法どころか治療する必要もありません。もし性的指向で苦しんでいる人がいたら、治すべきなのは本人の気持ちではなく、性のあり方で差別をする行為の方なのです。

ですから同性愛や両性愛など、性的指向を“治療”しようという話を耳にしても、ぜひ覚えていてくださいね。WHOや厚生労働省が「治療対象でない」と言っているということや、「本を読もうとしても 17ページにすらたどりつけない」と歌ったルー・リードのことを。

ということで、読んでくださってありがとうございました! また来週金曜日にね。まきむぅでした◎


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