第1回お呼びですか? 女装時代の虹の先

(幕が上がる)
♪Somewhere over the rainbow
Bluebirds fly~
(ジュディ・ガーランド気どりの古い女装オカマ登場)

おこんばんわー(夜前提)。2丁目ポータルサイトで、毎週エッセイを書かせていただくことになりました。女装のゲイおじさん、ブルボンヌでございます。

よく、本職は何かと聞かれるんですが、アタシにもよく分かりません。新宿2丁目のメインストリート、仲通りで毎週金曜の企画バー『Campy!BAR』の女装ママをしたり(宣伝から入る)、2丁目はじめ全国のクラブなどで詰めの甘いお笑い女装ショウを披露したり、雑誌やWEBで女装キャラとして連載をしたり、テレビ出演やイベントMCなどもちょこちょこさせていただいたり。

まあ、女装器用貧乏ってかんじでしょうか。とりあえず、ほとんどの仕事を女装でしている人生です。ベタすぎて言いたくないんですが、ゲイは身を助ける、とはよく言ったものよねー(言った!)。
あ、一応、こうした連載は女装キャラでやってますが、家でノートパソコンに向かって原稿を書く時に、いちいちヅラかぶったり紅塗ったりはしてませんよ。めんどくせーわ。そういう時は、気持ちだけ女装になるの!

パン!(北島マヤ風白目)
「私は‥女装‥!!」

って、そんな追い込まなきゃいけないほど違和感なかった。

さて、この連載の「OVER THE RAINBOW」ってタイトル、ちょっと気恥ずかしいほど直球ですが、2丁目初心者の方のためにご説明するわね。
新宿2丁目では年に一度、レインボー祭りという夏祭りがあったり、札幌で開催されているLGBT中心のパレードがレインボーマーチと名づけられていたり、レインボーというのは性的マイノリティのシンボルカラーなんです。

Wikipedia レインボーフラッグ (LGBT)

あんた水色? アタシどどめ色~、みたいな。いろんな色があっていいじゃない、という多様性の象徴。ホント、アタシもイロモノ仕事多いし、自他共に認める色キチ○イだし、いろんな色を許していただきたいわけ。

そんなレインボーを掲げ、10年以上お勤めさせていただいたのが、これまた新宿2丁目にあるゲイ雑誌『バディ』の編集部。余談ですが、当時の同僚エディターには、女装界の長老マーガレット大ババ様や、いまや国民的女装のマツコ・デラックスさんもいました。そこでアタシたちは毎月、ページのほとんどが肌色(一部赤褐色)のページから、割と社会的な記事まで、ゲイのゲイによるゲイのための雑誌をせっせと作っていたんです。

それまでのゲイ雑誌が、ゲイってのは秘密=クローゼット前提の論調だった(偽装結婚相手探しコーナーとかあったわ)のに対し、バディは誌面に編集者が顔をさらし、そのうち読者の皆さんがドヤ顔や勝負パンツ姿を見せ、ついに表紙もゲイの男の子の写真になっていった、オープン志向のゲイ雑誌でした。パレードや映画祭などの、エロ以外のムーブメントも紹介・協賛し、日本の(当時の)新世代ゲイに、昼間も好きな男と一緒にいられる人生を提案した、とも言えるかしら。なんたって、当時のキャッチフレーズは「僕らのハッピーゲイライフ」ですもの。まあかわいい!

時代の流れとも相まって、確かに、なうアラフォー世代を境目に、日本のゲイの生き様はずいぶん変わったと思います。2丁目の扉の奥でだけ繰り広げられていたオネエくっちゃべりは、完全に路上に飛び出し、いまや界隈のスタバやベローチェまで、ゲイバーのようになっているやや迷惑な時も笑。

よかったね! 子供の頃からオトコオンナとか水木しげる妖怪図鑑に載ってそうな呼び名で虐げられて、自分みたいなヘンなのは一人ぼっちだと思ってたみんなが、どんどん自由になって。mixiやチカマンアプリ、Twitterエロアカでどんどん友達作って(どんどんヤッて)、会社でも気の合う女友達にはさらっとカミングアウトして2丁目で一緒に呑んだりする、まさしくゲイライフを謳歌できる時代に。

フリー(自由)! ゲイ(陽気)!
そしてハッピー!

と思いきや、そう単純に「幸せ」が待っているわけではなかったのでございます。

(暗転)

ゲイのハッピー祭りは、享楽と若さを主軸にしたものでした。例えば巨大クラブイベントの持つ、五感を刺激する圧倒的な興奮と「一人じゃないんだ」という安心は、今も続く重要なコミュニティですが、同時にやはりそれは「祭り」なのです。その後の静けさも人一倍、なのかもしれません。

男同士の関係は、性衝動もマッチして、すぐに始まりやすいですが、基本、親兄弟や同僚に紹介するものではないため、周囲の縛りがない分、覚悟も薄く別れも早くなりがち。うまくそこを超えて、何十年男と暮らしても、それは世間的には一緒に住んでる割と身綺麗なオッサン二人。正式な社会の単位になれるわけではありません。共に育てる子供を持ちそこに想いを託すなんて、特殊な事情を除けば夢のまた夢。

そんな所在なさは、加齢が進むほどに「じゃアタシって何のために生きてるんだろう」という存在意義の自問と、捨て鉢ぎみな行動を生み出すことにもつながります。事実、LGBTはメンタルヘルスを崩す割合が一般よりは高く、ゲイ男性はHIV感染のハイリスクグループでもある。

アタシたちは、好きなものは好きと言える勇気を出して、自由を求めたけれど、自由ってものすごく覚悟と責任のいるもの。

大海に飛び出したはいいけれど、とくに目的地もない船旅人生。思いもよらぬ雨や嵐の日を乗り越えられず、遭難してしまう船たちも数多くあったのです。

5年前、ゲイのゲイによるゲイのための商業誌で2丁目から発信をする中で、淀みといき詰まりを感じ始めていたアタシは、ゲイ地方の名産品「女装」を背負って、ストレートという都会へ、出稼ぎに行かせていただきました。悪い子はいねーがー! ってむしろ自分が気持ち悪いナマハゲとして。

うまくメディア女装時代の尻馬の尻毛につかまって飛び出したものの、ゲイ地方の奥地で守られていたアタシは、この5年の出稼ぎでずいぶん思うところもありました。多様性を認めてーとか言ってたけど、同じセクシュアルマイノリティのレズビアンやトランスの人たちと、どの程度つながれていたのか。ストレートに訴えようとしてたけど、そのストレートが負うものを分かっていたのか。

今のメディア業界は、「オネエ系」という便利単語で、「女装しているゲイ(マツコさん等)」と「オネエ言葉のゲイ(クリス松村さん等)」と「MTFなどのトランスセクシュアル・ジェンダー(はるな愛ちゃん等)」と「柔らか表現のストレート男性(尾木ママさん等)」をぜーんぶごった煮にしています。
その状況にイライラしている方もいると思いますが、アタシ自身はごった煮汁に漬けていただいたおかげで、ゲイゲイした目からウロコが落ちる快感を「はーん、また一つペロッといったー」と味わっています。

さらに、女性向けメディアでお悩み相談を受けたり、完全にカオスな客層となったバーで、ストレート男性のお客様(とくにイケメンに集中接客)と語らう中で、今の時代のストレート男女の中にも、同じように「目的地を見失っている感」が充満しているのが分かってきました。

アタシが痛感した、LGBTの自由を求めてきた「反動としての所在なさ」は、実は、権利を求めてきた女性や、経済ばかりを求めてきた日本全体にも通じるもののような気がしてきたのです。

マドンナ以前の圧倒的なゲイ・アイコン、ジュデュ・ガーランド姐さんが、知恵や心や勇気など、それぞれに何か足りない仲間たちと「エメラルドの都」を目指す物語、『オズの魔法使い』

Somewhere over the rainbow
Bluebirds fly

虹の向こうのどこかに
青い鳥は飛ぶ

ゲイ雑誌を作ってた頃は、ずっと「OVER」ってのが気になってた。え、虹を越えちゃうの?って。でも今なら実感できる。虹そのものが幸せなんじゃない。

まずは自分と向き合い、次に世界の多様性を認め、その先に、自分自身の力で幸せを見つけないと。

新宿2丁目は、居場所のなかったゲイが、ほかのゲイと会うために集って生まれた街。そこに今は、レズビアンも女装もトランスも、男社会に疲れた女子も、笑いと癒しを求めるノンケ男子も集まり始めてる。
それって、すごくステキなことなのかも。

大海の中、それぞれの事情でのっぴきならない人生を漕ぐアタシたち。
でも、海図や灯台の見極め方や、オールを動かす方向が似てる人たちは、近づいて自然に船団のようになるんじゃないかしら。
独裁的な命令による海軍ではなく、自然にできた船団ってなんかステキじゃない?

新大陸があるのかないのか、本当のところ、アタシにも分かんないの。だけど、あるって信じて航海してるうちはきっと全てのドラマを楽しめる気がする。

自由を求めて冒険に出た以上、笑って生き抜きたいのよね。

2丁目船団、楽しみましょ!
(虹色の光に包まれる)

なんちゃって。
ヨッ。大衆女装演劇!

初回につき自己紹介を兼ねてドラマ・クイーンでかましてみましたが、次回以降は、もっとユルい街のシモネタなどもやりつつ、まさしく色とりどりな2丁目視点エッセイが書ければと思っております。
よろしくお願いいたしますね~。

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