第98回 日本での“性の困りごと”、なんと259項目……LGBT差別禁止法で、社会はどう変わる?

 

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まきむらよ。

毎週金曜、世界のニュースから性を考える時事コラム「まきむぅの虹色NEWSサテライト」をお送りしております。

今回のテーマは「日本でのLGBT差別禁止法」です。

2015年5月19日、日本におけるLGBT差別禁止法の私案が発表されました(出典:毎日新聞)。この案はまだ現実のものとなっていませんが、これから制定に向けて、国会議員に提出される予定です。

今回はこのことについて、

★ 日本でのLGBT差別禁止法、どんな人が対象なの?
★ 「ロリコンとショタコンと獣姦も保護しないと差別だろうが」?
★ 法律私案の正式名称にある、「性的指向」「性自認」って結局何?
★ その数、なんと259項目……日本社会が抱える“性の困りごと”リスト

以上の流れでお送りいたします!


★ 日本でのLGBT差別禁止法、どんな人が対象なの?
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写真:PAKUTASO

「LGBT差別禁止法」。
そう聞くと、「またレズビアンとゲイとバイセクシュアルとトランスジェンダーしか守られないのか」って思う方がいらっしゃるかもしれませんが、そういうわけじゃないのよ。この案の正式名称はこうなっています。

性的指向および性自認等による差別の解消、ならびに差別を受けた者の支援のための法律

ちょっとおカタイわよね。つまり、やわらかく言えばこういうことです。

この法律で守られるのはいわゆるLGBTだけじゃない、日本の法律のもとにある全員だよ

だけど、よく性的指向や性自認のことで困らされているのは、今のところいわゆるLGBTが多いよね……ってことで「LGBT差別禁止法」というニックネームがついているわけです。長いしね、正式名称。

ということなんだけどニュースサイトなんか見てると、「性的嗜好!? ロリコンを法律で保護するなんてとんでもない!」みたいなズレた反応してる方もいらっしゃいますね。


★ 「ロリコンとショタコンと獣姦も保護しないと差別だろうが」?
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念のために言っておくと、人間が同性と寝ることと、年端もいかない子どもや物言えぬ動物に手を出すこととの最大の違いはこれです。

「お互いの自立した判断能力に基づく同意があるかないか」

「大人と大人の同意」と、「大人が子どもをだます」「人間が動物に言うことをきかせる」こととは違うってことですね。

もちろん、人間に何歳から自立した判断能力がつくのかということには個人差がありますが、法律っていうものは一律の基準を決めなければ不公平を生むので「満18歳」未満が法律で守られる対象とされているわけです。

また18歳未満を好きになった大人のほうにだって、誰にだって、国際法にもとづく人権があります。別に大人が16歳に恋愛感情を抱こうが、人外萌え同人誌が家にあふれてようが、すべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等」です(世界人権宣言第一条)。他者の自由を侵害する行為に出ない限り、その「好き」な気持ちを持つことは自由なのです。

……っていうのは基本だと思ってたんだけど、やっぱりまだまだ「性的指向」とか「性自認」っていう言葉が正確に伝わっていないみたいよね。ということでもう一度、ここであらためておさらいしてみましょうか。これからなんかズレたこと言われてもこの記事ひとつ渡して済むようにね。


★ 法律私案の正式名称にある「性的指向」「性自認」って何?

・「性的指向」とは?

「人の恋愛感情や性的な関心がいずれの性別に向かうか」のこと。

例として、自分にとっての異性を好きになる「異性愛」、他者を恋愛や性愛の対象としない「無性愛」、同性を好きになる「同性愛」、男女どちらも恋愛対象とする「両性愛」、男女に加えそのどちらでもない人も恋愛対象とする「汎性愛(全性愛)」などがある。

日本の厚生省(当時)は「いかなる性的指向も治療対象にならない」としており、診断基準も存在しない。よって、性的指向によって人間を分類しきれるとも限らない。また性的指向は誰かに名付けられるものではなく、自分で名乗るものであり、単に「私は私」ということもできる。何と名乗るかを自分で選ぶことはできるが、何に惹かれるかを自分で選ぶことはできない。性的指向は変えることも変えさせることもできないが、変わることはある。

・「性自認」とは?

「人が自分自身の性別をなんだと考えているか」のこと。

性自認は「男性」「女性」のふたつに限らない。たとえば「男と女のあいだ(中性)」「男でも女でもない(無性)」「男でも女でもある(両性)」「男か女かその時々で違う(不定性)」「男でも女でもなくて、自分だ」というような性自認も存在する。

英語のGender identityの訳語であり、「性自認」ではなく「心の性別」と訳す例も少なくない。しかし性自認とはあくまで「自分が自分の性別をなんだと思うか」であり、「心」というものになにかしらの性別判断基準が設けられているわけではない。

(詳しく知りたい人はぜひ、入門書「百合のリアル」を読んでね)
(関連コラム:「心の性別って何?」)

そして「具体的にどんな困りごとがあるのか?」ということは、この法律の私案を作ったLGBT法連合会がPDFのリストにまとめています。

その数

なんと

259項目

具体的にはたとえばこんなことです。以下にリストにしますが、人によってはトラウマで気分が悪くなるかもしれないので、読みたくない人は四角く囲まれた部分を読み飛ばしてね


★ その数、なんと259項目……日本社会が抱える“性の困りごと”リスト

暴言、暴力、いじめ、またそれらによる自死の誘発
・結婚していないことを理由に暴言を吐かれた。
・男性がレイプ被害を受けても、加害者に強姦罪が適用されない。
・レズビアンを治してやる、という口実でレイプされた。
・子どもがLGBTであることが職場に知られ、「育て方が悪い」「親の人間性を疑う」「親もLGBTなのでは」などという噂をたてられた。
・親兄弟に「ゲイの息子なんていらない」「お前なんか死んだ方がましだ」「生まれてくる子がゲイなら中絶する」と言われた。

雇用差別
・就職活動の際、面接で子どもを産む予定があるかどうか聞かれ、否定した途端、面接官の態度が否定的になった。
・教員採用試験の適性試験で「同性に惹かれるか」「女性に生まれたかったか」などの質問をされた。
・卒業証明書に性別欄があるため、「見た目の性別と違う」として、採用面接で落とされたり、不快な質問をされたりした。

医療現場での無理解
・性同一性障害であることを理由に「どう対応していいのかわからない」と言われ、救急車で搬送するまでに時間がかかってしまった。
・産婦人科で性的指向を打ち明けたら、「そんな不道徳な生き方はよくない」と説教された。

(※注:産婦人科では検査の際に性交経験について質問されることがあります。妊娠検査の場合は異性との性交について、病気の検査の場合は異性以外との性交も含めて行為の有無だけを答えればよく、「同性とした」「私はバイセクシュアル」などと答える必要は必ずしもありません)

教育現場での無理解
・LGBTについて授業を行ったところ、親や他の職員からクレームが来て、処分を受けた。
・スポーツ大会へのエントリーの際、遺伝子検査を要求され、インターセックスであることを理由に出場できなかった。

公共の場での差別
・セクシュアリティに関する講演会の会場として公共施設に申し込んだところ、断られた。
・選挙人名簿に性別欄があるため、本人かどうかの確認で不快な質問をされるなどした。
・性自認や性的指向による誤った知識をもとに、テレビや週刊誌が面白半分で報道している。

  LGBT法連合会によるリストPDFを筆者要約

以上はごく一部ですが、259項目すべてを読みたい方は、LGBT差別禁止法制定を求めるLGBT法連合会の公式サイトを見てみてね。

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上記のようなことが起こっている今の日本社会にも、差別禁止法ができることによって、訴え出るための根拠訴え出ることができる雰囲気がつくられるわけよね。

またモノを言えない社会になるのか」って不安に思っている方もいらっしゃるみたいだけど、むしろこれは「モノを言えなかった人々が言えるようになるための法律」だし、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーに限らず誰もが守られる対象です。

むしろ、ある発言が差別かどうかということが、「それを言った人物の偉さ」とか「好感度」じゃなくて「明確かつ公平な基準」で定められてこそ、自由に公平にモノが言える社会ってもんよね。

今はまだ、この法律はあくまで“案”の段階です。だけれど今のうちからひとりひとりが関心を持って考えることが、よりよい毎日につながるのではないかしら。

ということで、読んでくださってありがとうございました! また来週金曜日にね。まきむぅでした◎


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